「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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灰色猫のはいねの生活
最終話
「終わったねえ。」
「うん。」
桜の花びらがそよそよと舞う中、たまちゃんの言葉に、まるちゃんが頷きました。
「まるちゃんのお姉ちゃん、泣いてたねえ。」
卒業生を送り出した後、戻った教室で、2人は窓辺に佇んでいました。
「…なんか、お姉ちゃんが卒業したって、別に何も変わらないって思ってたけど、うるさいこと言う人がいなくなるからいいやなんて思ってたけど、なんか、寂しいよ。」
ぽろぽろと涙をこぼすまるちゃんに、たまちゃんは何も言えませんでした。
たまちゃんは1人っ子です。
お姉さんかお兄さんか、或いは妹か弟でもいれば、まるちゃんの気持ちが解ったのかもしれません。
でも、そんなまるちゃんを、たまちゃんはうらやましく思いました。
「まだ、いたんですか。あなた達。」
「丸尾くんこそ。」
たまちゃんが言いました。
「私は、学級委員として先生に最後の挨拶をしてきたところです。」
「さすが丸尾くんだねえ。えらいねえ。」
顔を上げたまるちゃんが言いました。
丸尾くんは少しはにかんだように笑って、まるちゃんとたまちゃんのそばまでやって来ました。
「何か、ヘンだと思いませんか?」
しばらく窓の外を見つめて、いきなり丸尾くんが言いました。
「えっ?」
「何か、具体的に何がこうとはっきり言えるわけじゃありませんが、何となく、今日と言う日を、1度やったことがあるような気がするのです。」
「はぁ?」
まるちゃんが言いました。
たまちゃんもびっくりして丸尾くんを見つめます。
なんて事をいいだすんだろう。
そう思うと同時に、心のどこかで同じ事を考えていた自分を発見したのです。
家に帰ると、セーラー服姿のお姉ちゃんを、おじいちゃんとおばあちゃんが囲んでいます。
「本当に大きくなったねえ。」
と、涙を目にためたおばあちゃんは言うのです。
制服がシワになるから、もう脱ぎなさいとお母さんが苦笑いしています。
そして、夕食はお寿司の出前をとるのです。
その光景は想像が付くから思い浮かんだ事なのでしょうか。
それとも、1度経験した事があるからなのでしょうか。
「既視感、という言葉があるそうです。ある瞬間が、1度経験したことがあると思う事だそうです。大抵は脳の伝達間違いだそうですが、前世の記憶だなんて言う人もいるそうです。」
「既視感?」
たまちゃんが聞きました。
たしかに、新しいマンガを観ていた時に、このページを以前にどこかで観た事があると、強く思ったことがあります。
とても不思議な感じでした。
「小説の中の話しですが、1年を繰り返す町が載っていました。地球の最期の日がやってくる。それを避ける事は出来ない。その町には超能力者がいて、最期の日から丁度1年、時間をさかのぼることが出来るんだそうです。そうして、もう何度も、もしかしたらこれから永遠に、その1年を繰り返すんだそうです。」
丸尾くんの話しは、とてつもないお話の中のお話に感じました。
でも、それをどこかで、納得している自分たちがいます。
「私は、ちょっと思ったんです。誰も彼も成長して卒業して行く。でも、それを許されない人達もいるんじゃないかって。今日の卒業式が終わって、6年生が卒業して、当然私達が4年生に進級するはずです。でも、去年もそう思ったことがあるような気がするんです。春が来て夏が来て秋が来る。その次に冬が当然のように来るように、私達はまた小学3年生を繰り返すような気がするんです。」
「それって、どう言うこと?」
まるちゃんが言いました。
丸尾くんの言うことは、感覚でわかる感じはするものの、難しくて理解は出来ないのです。
「私にも、はっきりとは解りません。地球の最後の日が来て、どこかにいる超能力者がなんとかしているのかもしれません。」
少し笑って言いました。
「それって、私達は小学3年生のまま、成長出来ないって事?」
たまちゃんが震える声で言いました。
早く大人になりたいとか、ずっと子供のままでいたいとか、みんな口々に言います。
確かに、早く大きくなりたいとたまちゃんは思います。
ただ、クリスマスのプレゼントやお年玉はまだ貰っていたいとも思います。
それは、必ず大きくなれるから、望むと望まないに係わらず、誰でもいつかは大人になれるから、そう思っているだけなのです。
時間は、誰にでも平等に流れていくものだと、信じていたのです。
「…そしたら、私はまんが家にはなれないのかなぁ?」
まるちゃんも言いました。
丸尾くんはじっと窓の外を見つめています。
「私にはわかりません。ただ、許されないのか、選ばれたのかはわかりませんが、私達はずっとこの時を生きて行く事を義務付けられているんじゃないかって思うんですよ。それは寂しい事なのかもしれませんが、この時を生きて伝えるべき使命が、あるような気がするのです。」
「使命?」
「って?」
まるちゃんとたまちゃんが言いました。
「私には本当にわからないんですよ。でも、」
丸尾くんが一つため息を吐きました。
「まるっきり同じことを繰り返しているようでも、少しづつ成長していると私は信じています。…まるで私達は永遠の夢の中で生きているようなものですね。」
真っ赤な夕焼けが、教室の中を照らし始めました。
「永遠の夢の中…」
まるちゃんが、呟く様に言いました。
【あとがき】~由記&羽衣音~
幼い頃…「死」が恐くて、自分は現実の人間ではないと想像したコトがありました。
例えば、テレビドラマの中の人なら死ぬことはないだろうって。
子供ならではの考えでしたが、実際にお話の登場人物はどう思っているのだろうって思った時に出来た作品です。
このお話で「丸尾くんがゆく!!!」は最終話となりましたが、気が向いた時にお話は増えていくかも。
「永遠の夢」は永遠に続くのかもね(笑)
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