灰色猫のはいねの生活

灰色猫のはいねの生活

第一話


一息ついたあたしは、最近の派遣傾向なんかを調べるために募集要領を見ていた。
何気に、本当に何気なく見ていたそれが、何となくおもしろかったと言うだけのこと。
仕事内容は今時ちょっと珍しい『ねずみ取り』。
『経験者優遇、高給、ボーナス有り』ね。
でもこの百戦錬磨のあたしは少々の高級やボーナスじゃあ動かなくってよ。
『2食、おやつ、昼寝付き。
住み込み場所は犬小屋(単身・カップル・夫婦用)か、納屋(子供のいる夫婦用)か、古い家(3世代・4世代向き)か、D型ハウス(一族郎党用)等自由ですが、車庫には住まないで下さい。まだ新しいんです(涙)
車の上には絶対に上がらないで下さい!
これについては雇用時に誓約書にサイン(猫判)をいただきます。
車の上に上がった猫は即刻解雇致します。』
あら、ちょっと厳しいわね。
車は猫のロマンなのに。
『敷地内は行動自由ですが、ショベル・トラクター・フォークリフト・大型トラック・軽トラック・RV車・自転車・子供等走行しておりますので、注意願います。
トラクターの座席を縄張りにしたり、トラックの荷台に入って出れなくなったり、野菜と一緒に出荷されたりはしないで下さい。
野菜の箱にも入らないで下さい。
又、敷地内には危険物が多く存在しておりますので、釣り針に引っかかったり、オイルの中に落ちたりしないで下さい。』
いろんなものがあるから、ちょっとした危険地帯ね。
くわばら、くわばら。
『捕ったねずみは自分で処分して下さい。
見せにはこないで下さい。
玄関先に置いたり、エサ箱に入れるようなマネはしないで下さい。
又、捕ったねずみや鳥を隠したまま忘れるようなマネもしないで下さい。』
そんなおバカ猫がいたのかしら?
あたしならそんなことはしないわ。
『私になつくのは嬉しいですが、帰宅する私の車に飛び込むようなマネはお願いですからやめて下さい。
私の上にものらないで下さい(爆)
私になつかないのも自由ですが、私を発見した途端逃げるのもやめて下さい。』
そこまで読んだあたしは1番下に注意書きで「至急!」と書かれていることに気が付いた。
なんとなくおもしろそうな募集だけれど、その裏に何かとても哀しい気持ちが隠されているようで。
派遣を必要としている本当の理由は『ねずみ捕り』だけじゃあないような気がして。
なんだか胸の奥がうずくよう。
あたしは募集要領に添付されてる派遣履歴を元に履歴猫にあたってみることにした。

だから何なのよ.jpg

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