灰色猫のはいねの生活

灰色猫のはいねの生活

第十話


現に今までにも会話をした猫がいたらしい。
それは、会話と言えるほどではないかもしれなかったけれど。
そんなある日のこと。
朝ご飯は相変わらず羽衣音がくれていたけれど、晩ご飯は仕事もヒマになった羽衣音ままがくれるようになったの。
お腹をすかせたあたしたちが羽衣音の車に飛び込んで危ないからって。
でも車に飛び込んで度胸だめしするのは人間で言えばバンジージャンプみたいなもので、ちょっとスリルがあってやめられないのよね。
羽衣音ままがご飯をくれても、あたしだけはついつい羽衣音の車に突っ込でたの。
猫族の特攻隊長とでも呼んでちょうだい。
車庫入れした羽衣音の運転席側ドアの下で待ちかまえるあたしに
「そんなことしたら危ないでしょう」
って羽衣音は毎日注意したけど、その後であたしの小さな額を撫でるのが、羽衣音は大好きなのよ。
この日はいつになく羽衣音はあたしをなで続けた。
あたしにはきちんと判っているの。
会社から帰る羽衣音はとても疲れていて。
元気のいい朝と違ってよろってるのよ。
だからあたしを撫で続けるの。
それが羽衣音のストレス解消なのよ。
いつになく撫でる羽衣音に、お腹のすいていたあたしはついつい喉ゴロゴロを忘れてしまっていたの。
そんなあたしに気付いて首を傾げる羽衣音に照れ隠しで
「もう、ご飯食べに行って良い?」
って言ってみた。
その時、不思議な顔をした羽衣音は、すぐに何もかも理解出来た様子で
「さあ、ご飯食べに行きなさい。はいね親分に全部食べられちゃうよ」
って言ったのよ。
声には出さなかったけど「ありがとう」の言葉があたしには伝わってきた。
焦ってご飯を食べに向かうあたしの後ろ姿に、
「でも車には突っ込んで来ないでね」
って羽衣音が言った。
それだけはちょっとやめられないかな。
でも、羽衣音はきちんとあたしをよけてくれるでしょう。
あたしと羽衣音のあうんの呼吸で。
はいね親分とちゃとらん子分に食べられて、だいぶ少なくなったご飯を急いで食べながら、あたしは考えたの。
羽衣音とは会話が出来るかもしれない。



謝ったのに….jpg

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