記憶の淵に沈みゆくもの

記憶の淵に沈みゆくもの

第一夜




周りは見渡す限り荒涼としている。
あちらこちらには折れた矢。
同じように折れたり地面に突き刺さったりしている刀。
あちらこちらに、無残な死体が転がる。

ここはどこだろう。
半ば呆然と見回してみても、見覚えがないように思われる。
……否、しって、いるような。
奇妙な感覚に襲われて、ふと視線を落として気が付いた。
返り血にまみれた自分と、手にしている大ぶりの刀。
刀身が水晶のように輝く。
そうだ。
自分は今までここで戦っていたのだ。
戦いに勝ち、軍を引き上げようとしていたのだ。

そう思い至ったとき、誰かに声をかけられた。
振り返ると、片腕とまで言われる男。
腕を信頼し、人柄を信頼し、側近として傍に置いている男。
しかし、なぜ彼はその刃をかざしているのか?
わからなかった。
彼が叫ぶ声が耳に届く。
「あなたさえ、いなければ…!!」

血を吐くような言葉が胸に突き刺さった。
振り下ろされた兇刃は、とっさに翻した背中に。
傷の痛みより、心の痛みのほうが強かった。
振り返り、彼に向かう。
滂沱の涙を流しながら、彼が言葉をつむぐ。
「あなたが、いなければ、わたしは…」
何かが心の奥底にことりと音を立てて落ちた。
そこまで憎むなら仕方がない。そう思った。

両腕を広げて自らの武器を落とす。
見開かれた彼の瞳がまっすぐにむかってくる。
口元に笑みが浮かんだのを自覚した。
「よかろう。おまえの覚悟がそこまでなら」
その刃で貫くがいい。

しばしの静寂。
何の音もしない。
時間も止まったかのような空白の中、
彼の頬に新たな涙が滑り落ちた。
その瞬間を忘れない。
そう心に刻んで、目を閉じた。

一瞬の衝撃。
痛みもなにも、感じなかった。


そこで私は目を覚ます。
そんな夢を、見た。

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