記憶の淵に沈みゆくもの

記憶の淵に沈みゆくもの

第二夜



こんな夢を見た。

どこまでもどこまでも
何の風景も見えない暗闇を落ちていく。
否、もしかしたら昇っているのかもしれない。
天地の感覚すらないのに、
落ちているのか昇っているのか。
その感覚だけはしっかりと体が認識している。

何の音もしない。
何の風景も見えない。
ただ、漆黒の闇を突き進んでいく。
ああ、とため息が漏れた。
いずれの世でも、
人は生まれいずる時と死に至るときは一人なのだと、不意に理解した。
自分にとって最大の試練のとき。
そのときはいつでも人は一人なのだと。
だからこそ、人と過ごす時間は愛しいのだ。
人に出会う瞬間は、あんなにも嬉しいのだ。
そんなことがすとんと心に落ちてきて、
ころころと転がり、ぴたりと収まった。
そういうことだ。
そういうこと、なのだ。

これから自分は死に至るのか。
それとも生まれいずるのか。
いずれにせよ、一人で始めなければならない。
それはとても勇気がいること。
それはとても痛みを伴うこと。

くじけてはならない。
くじけては、ならない。
人がいることで頑張れることなら
一人でも頑張ることができるはず。
漆黒の闇が今は続いていようとも
いつかは明るい光が見えるはずである。
自分はそれを知っている。
だから、怖れずにこの闇を走りぬけよう。

そう決意したところで、ぽかりと目がさめた。


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: