ゆくあさ堂~価値主義的見識~

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第八章『私。』





 それからというもの、私はAと会っていない。あの時からもう二年半になる。私は大学三年で、Aは留年していなければ高校三年生である。私は大学で新しい趣味を見付け、それについて研究している。研究はそれなりに楽しい。試験の点数は十位以内だ。それに私は人付き合いが上手かった。私は、自分のペースを守りつつ相手に合わせることができた。そのためか私は異性からそこそこ人気があった。学校は楽しかった。毎日のように起きるトラブルを、私は楽しんでいた。なのに、問題が一段落する度にAの顔が頭に浮かぶ。私とAはそれぞれ違う道に進んだ。私は現実に生き、Aは夢に生きた。あの時私が「まだ絵が好きか?」とAに聞いたときから、私とAは引き裂かれたのだ。私はAのことを、まるで双子のように感じる。――以前からそう感じてきた。Aはいつも私と同じ問題に衝突する。そして私と同じことで悩み、同じことを考え、そして、同じ間違いを犯さぬように、私がAを導いた。基本は同じなのにも関わらず、私とはまったく別の道に進んだA。そのAの顔。今Aは何をしているのだろうか。

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