“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2016.04.30
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 私は“飲食店の勉強代行帳”という肩書きで仕事をしております。

基本的に、会員様からある程度の質問に聞かれたら答えられるように日々精進しています。
だから、産地も開発しますし、ワークショップにも参加しますし、食の歴史の研究、「Modanist Cuisine」や、人口動態や行動心理学や脳科学など学術書も読みますし、いろいろな料理を作ったり、もちろん、飲食店で定期的な勉強会もしています。
 その成果や自分のレベルを公開し、悪いことも、わかっていないことも含めて評価していただきたく、ほぼ実名の「ジェームズオオクボ」でレビューも書いています。

 今日は、なぜ、このようなコンテンツに至ったのかをお話ししたいと思います。

 私は、もともと『新宿さぼてん』の惣菜店の店舗展開の礎を作ったということで、チェーン店、物販店をスタートにコンサルティングをしました。ちょうど20年前です。

 そのころは、多店舗化をはかる企業も多い時代でした。
とんかつチェーン各社はもちろん、大手スーパー、JAなどいろいろなところにご縁をいただきました。


その中でも、福岡のランチェスター経営の竹田陽一先生のオープンセミナーに二年ほど毎月行ったことと、古田基先生と海外を回り始めたことがとても大きかったと思います。

 竹田先生にはピアノバーなどで、「量稽古がものを言う」「得意技で勝負するな」など、古田先生には「外食産業はアメリカに学べ」ということがとても勉強になりました。
 ということで、指導したこともない、焼肉店、ラーメン店、その他飲食店のお手伝いを勉強方々するようになりました。
そんな前向きな姿勢が良かったのか、とんかつチェーン各社はもちろん、マイカルの惣菜、イオンの惣菜、東和フードサービス、ハイディ日高などいろいろな会社とご縁をいただくようになりました。

 ある時、海外の店舗を回ることがとても将来の糧になるのではないかと思い、竹田先生にそんな話をしたところ、「大久保さん同業者は年何回回るのかね?」と質問されました。「1~2回だと思います」と答えたところ、「では、年6回以上、回りなさい」とおっしゃいました。
私は、この言葉を聞いて年6回~10回の海外視察を10年はやってみようと、思い切った動きを始めました。
素直ですね。稼いだお金のほとんどをつぎ込みましたね(笑)
 でも、これが今につながっていると思います。

 海外を回ってしばらくして、サービスは高級店に学んだほうがいいということに気づき、客単価1万円を超える店を回り始めました。そのころはあまりに店舗を回っていたので、必要があればまた来ればいいと、写真を基本的にとっていなかったです。今考えるととても残念です。(食べログもアメリカ200件はレビュー書けたのに・・)

 ちょうど、10年くらい前に、日本のコンサルタントを見渡して客単価1万円以上のコンサルティングをしている人はいないことに気づきました。
 PRやプロデュースなどはおりますが、コンサルタントはいなかったのです。


 もちろん、「おれは大衆の行く店しか行かない」という同業者や経営者もいますし、「安い店も、高い店も基本的な経営手法は同じ」という人もいます。
そうなのかなという疑問を持ちながら、答えはそのうち出るということを信じて、今度はフランスやヨーロッパを主に回ってみました。
そんな中で、いろいろな料理人やサービスマンとも知り合えましたし、フランソワ・クープランのような偉大な友達もできました。彼らがまたヒントをたくさんくれました。

 そして、高いもの売るために必要なメソッドが徐々にわかりはじめ検証できるようになりました。
その気づきの根っこにとんかつチェーン『新宿さぼてん』の時に気づいた、「お客様は、豚肉を食べていない、ソースを飲んでいる」という気づきがありまして、その発展型、「味のわかるお客さまはほとんどいない」という気づきにいたり、メソッドがいろいろ見えはじめた。


つまり、味というかおいしさの受容性は鍛えられることに気づきました。

 先ほどの「味のわかる人はいない」という表現、正確には「最初からわかる人はほとんどいない」とい意味になります。
「高い店は接待だから行く、自腹じゃいかない」という人がおりますが、確かに接待とい利用動機もあります。
しかし、反復して勉強するうちに、微差がわかるという自分自身の経験を踏まえれば、高級飲食店は接待以外にも、高い店にわざわざ行く利用動機はあることに気づきます。
つまり、わかるようになれば高いお金を払って、回数を減らしても来店するようになる。
 そのために重要なことが、店側の顧客教育だということに気づいたのです。
そして、このお客様をわかるようにすることが飲食店の使命だとも気づきます。
さらには、生産者にも陶芸家のような芸術家にとってもよく、文化継承になります。

 この気づきがあってから、そのために必要なことは何かを検証しています。
よく私に「何でそんなに質問するのか」と言う人がおります。
しかし、“勉強代行業”の仕事として、そして、“おいしさという感情”の数値化が背景にあるからに他なりません。

 顧客教育をする前に重要なこともあります。
新規客の高確率再来店させることです。
そのためには、来店した新規客に事前期待を上回る評価されるメソッドを身に着けないといけません。
そうすると提供する事前情報が実際のサービスレベルを超えるように伝えすぎない、できればふいうちをかける方法が重要だと気づきます。でも、その仕掛けにひっかからないといけません。
そのためには・・・
金沢の『いたる』という繁盛店のオーナー、石黒格さんが教えてくれました。
「自分のためにこだわっていけない、お客様のためにこだわらなくてはいけない」でした。

 もちろん、明確な未来像は重要。
しかし、わかる人だけを相手にしていてはパイは広がらないということに気づいたのです。

 「わかるお客さんはほとんどいない、でも、わかるようになったら、離れない」

 暗記ではありません。おいしさの反復学習です。
そのカリキュラム編成ができないと高級店は成立しないのです。






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Last updated  2016.05.04 20:45:36


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