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2006/08/04
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カテゴリ: 恋愛小説(連載)
【「きっと、二人なら…」を最初から読む】 【目次を見る】

 貴子は今、自分の部屋に居る。
6畳和室の畳の上にペタリと座り込み、いまだ止まることのない涙を手で拭おうとする。
すると、向かいに座っていた亜紀が、その長い指で貴子の涙を拭ってくれた。
--もう何度目になるだろう…こうやって亜紀が涙を拭ってくれたのは…?
 あのとき貴子は結局自分の力では階段を上がることができず、亜紀に抱きかかえられて自分の部屋まで戻ってきたのだった。
 静かな室内には、雨音だけが聞こえていた。
亜紀は何も聞いてこない。先ほどから貴子が零す涙を、ただ何度も優しく拭ってくれている。
そんな彼の優しさに、涙は更に助長されて止めどなく流れ落ちた。

そして真直ぐに亜紀を見つめる。
「ごめんね」
言った彼女の言葉は、まだ大分鼻にかかっていて…
1つ心の糸が切れれば、またすぐにでも泣き出してしまいそうに思えた。
「ほんとごめんね。こんな痛い思いしたの久しぶりだったから、なぁんか涙溢れて止まんなかった」
あははと無理して笑う貴子は、いっそ抱きしめてしまいたいほどに脆く儚げだった。
それでも亜紀は何も聞かない。彼女が自分から涙の理由(わけ)を話してくれるまでは、何も聞くまいと心に決めていたから--。
ただ「そう…そんなに痛かったんだね」といつもどおりに言葉を返し、それから「…ごめんね」と呟くように付け加えた。
貴子にこんな痛い思いをさせてしまったのは他ならぬ自分の不注意からなのだ--そう思うと、亜紀は謝らずにはいられなかった。
けれど、そんな彼の言葉に貴子はすぐさま首を振って「あっちゃんのせいじゃないから気にしないで」と返す。
貴子の泣いた理由が足の痛みだけではないことくらい、亜紀にだってすぐに分かっていた。けれど今の彼には、彼女の涙を拭ってやる他には何もしてやることはできないのだ。

単なる幼馴染でしかないこの自分に--。
「たかちゃん…夕食まだだよね?」
 もやもやした想いを吹き払うように、亜紀は少し明るい口調で貴子へと話しかけた。
貴子もそれに答えるように小さく笑みを浮かべた。
「コップと皿、借りてもいいかな?」

貴子から了承を得ると、亜紀はその場から立ち上がり、壁際の食器棚へと歩んで行った。ガラス戸を開けて、グラスを2つと大皿を1枚取り出してから戻ってくる。
そしてそれらをテーブルに並べると、亜紀は手際よくジュースをグラスへと注ぎ沸け、パン屋の赤い袋から いくつかのパンを取り出して皿へと並べた。
「さてと」
準備は整ったとばかりに亜紀が言う。
「さぁ、たかちゃんはどれ食べる?」
ニコニコと問うてくる亜紀に、「じゃぁ…私はこれで」と貴子は中でも小ぶりのブルーベリーマフィンを手に取った。
「そ? ブルーベリーは目にもいいもんね。泣いて赤くなっちゃった目もすぐに治るかもよ」
言って、ははっと笑った後で「さすがにそんなことはないかな?」と言葉を継ぎながら亜紀はカレーパンを手に取る。
いつも場を和ませてくれる亜紀の気配りが、今日ほどありがたいと思えたことはなかった。
もしも今この部屋にたった1人で居たならば、きっと貴子は悲しみに押しつぶされて食事なんて取る気にもなれなかっただろう。
心の中で亜紀へと感謝しつつ、貴子はマフィンのカップを剥いて口元へと運ぶ。そして貴子が一口食べるのを見て ほっと安心したように亜紀もまたカレーパンを一口かじる。
「うん、ここのパン 美味しいね」
ホンワリした笑顔で亜紀が言う。その柔らかな微笑みに釣られるように貴子も「うん、とっても美味しい!」と答えて笑みを浮かべた。
~To be continued~




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最終更新日  2006/08/04 10:43:59 PM コメントを書く


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