路傍に咲く華

路傍に咲く華

白く消えた僕等の世界


こんな世の中

規則に縛られる世界
一部の人間だけが創り上げて行く世界―――。


みんな 壊れちまえ

「・・・アナタの願い、叶えてあげましょうか」

普通の日常が
    反転する様に

変わって行く
    何かの拍子に。

俺等が迎えたモノ
       世界の終焉―――



――――白く消えた僕等の世界



何度も
何度も

願った

こんな世界消えてしまえと


何が悪いのか
それはこんな世界を創り上げた

人間。


「蓮、何よこの成績!!!」

バン、と音をたて、
机の上に置かれたもの。

それは成績表だった。

「最近遊んでばっか居て・・・
 そんなだから成績が下がるのよ

 蓮は将来、うちの病院を継がなければいけないんだから」


そうでなければ『いけない』?
そんなの誰が決めたんだよ
くだらない。

「・・・・・ちょっと、聞いてるの!?」

俺は御袋の言葉を無視して、
自分の部屋がある2階へと向かう。


天宮 蓮 18歳
親父は医師で、
俺はその病院を継がなければいけないらしい

自分達の都合で、
俺まで巻き込むなよ

何故か分からないが、苛立った。
こんな世界・・・・


「こんな世界滅びちまえ」

ベットに横になって、
そう呟いた。

本当に、そう思った。
自分達の都合だけで、人が動く

どうせ自分の事しか考えてないんだろ?
どうせ自分の為になる事しか考えてないんだろ?

「こんな世界消えちまえ」

二度目にはそう呟いた

目を瞑ると、ナニカ、の気配を感じた。





「アナタの願い、叶えてあげましょうか」





幻聴?
いや、でもはっきり聞こえた。

俺はベットから体を起こす。
横を向くと、―――ナニカが居た


「初めまして」

ナニカがそう言った。
・・・人?

そうだ、人だ。
それも・・まだ13歳くらいの、少女。
紫色の長い髪を靡かせて、
眼は・・両目、色が違う。
右目は血の様な紅い瞳
左目は暗闇の様な黒い瞳―――
足の所まであろうかと言う長い黒のコートの様なものを羽織っている。

そして、背中には―――

黒く広がる羽・・・・・・・

「・・っお前・・誰だよ」
「んーと・・アナタはアマミヤ・・レン君かな?」

そいつは笑顔で俺に問いかけた。
・・何で・・俺の・・名前?

「・・くすっ・・・イマ、『何で俺の名前を知ってるんだー』って思ったでしょ?」

何だコイツは・・

「お前、誰だよ」
「さぁー?誰でしょうか?」

「質問に・・答えろ」

俺はそいつを睨みつける。
何故。
どうやってここに入ってきた?
どうやって俺の考えている事が分かった?


「・・・・・アタシの名前は、カンナって言うんだ」
「お前、何者だよ」

少女は俺の言葉を聞くなり、
また不吉な笑みを浮かべ、こう答えた。


「・・・・死神かな?」

――――シニガミ・・?

「お前・・大人を舐めてんのか?」
「あらー?アタシの方が十分大人ですっ
 これでも・・100年は生きてるんだから♪」

そいつはVサインをして、俺の方に向ける。
こいつの態度からして、話が本当には思えない。

第一、死神何てこの世に居るはずは無い。

「だから、お前お前って呼ばないでよね~
 ちゃんとカンナって言う可愛い名前があるんだから。
 これからはカンナ様って呼んでよねっ」

「・・・死神何て、居るはず・・ないだろ。
 冗談は辞めろ。どうやってここに入ってきた」

ドアもちゃんと閉めた。
だけど開けた様な音は聞こえなかった

窓だって閉まってる
だから入口何てどこにも無いのに

「・・さっき、願ったでしょ?」

・・・カンナは、ニコ、と笑みを向け、続ける。

「アタシは死神。
 誰かがナニカを願う時、その願いに呼び寄せられて、
 その場所へ辿り着くの。
 アタシもそう。さっきレンが願ったからアタシはここに来た。」

・・・さっきから死神って・・

「・・信じられないな」
「そっかぁ~・・・そこまで信じられないなら、試してみる?」

「・・・・は・・?」

試す?
試すって何を―――

「試しに、だけどアナタの願い、叶えてあげる。
 ただ、デメリット・・って感じだけど、
 願いの代償が必要なんだ。
 願いを叶える為に、アナタはナニカを失わなきゃいけない」

少女はそう言うなり、いきなり俺の机を漁りだした。
「そうだなぁ」とかブツブツ言いながら、ナニカを探している

「あ、じゃあコレ貰うね♪」

そう言って取り出したのは、
数年前に受験の合格を願って御袋が買ってきたお守りだった。

「・・・そんなのなら、別に構わないけど」
「じゃ、もーらいっ♪で、願いは何かな?
 試すだけだから、小さいのでお願いね」

いきなりそう言われると、迷う。
何にするべきか。

「・・・・むぅ~・・決めるの遅いぃぃ!!!!
 いいもん、アタシが決めるっ良いでしょ?

 じゃ、アナタのお母さんの記憶を消す・・で良いかな」

カンナは人の返事も聞かずに、下の階へと降りていく。

「・・あ、アタシの姿は、依頼主とアタシに触れた人だけしか見えないんだ」

そんな事を話しながら、
御袋の所へと向かった。

「・・あ、蓮!?今まで何して―――」

そう言い掛けた時、
カンナが指を鳴らした。

――パチンッ

音が部屋に鳴り響く、
すると御袋の様子が・・・変わった。

「・・・・ぇ・・・」

御袋は途端に床に座り込む。
何が起こったのだろうか

「・・やだ・・貴方達、誰・・?
 ・・私は・・・・・?」

どこか挙動不審だ。
いつもと様子が違う。

御袋は、こんな事ふざけてやる訳が無いし

「え?忘れちゃったんですか?この人は蓮君です。
 アナタのお子さんですよ・・?」
「・・え・・?」

本当に、覚えて・・無い?
分からない。
何もかも

「ね、信じてくれたー?」

カンナは笑顔でこちらを向いた。
これだけじゃ、信じられない

「・・いや・・・・・」
「死神は何だって出来るのよ?
 例えば――・・・・・・・


 そうね、人殺し。とか?」

カンナは笑みを浮かべて言った。
なんだこいつ。
さっきとは・・様子が違う

カンナは窓の外を見て、
ふわり、と外へ飛んでいく

「じゃ、あの人、殺して良い?」

そして、道を歩いている男を指差した。

あまりにも笑顔で言うものだから、
寒気がするほど恐ろしく感じる。

「・・・・・分かった、信じる」

勝手に、無害な奴にまで危害を加えるつもりも無い。

「・・そっか!!!なら良いや♪」

カンナはそう言ってこちらへ戻ってきた。

「本当に、アタシが死神だって信じてくれる!?」
「あー・・分かったから」

もうこれは納得するしかない。
これを否定すれば、何をやらかすのか。

「じゃーさぁ・・・」

そして、また階段を上って行く。
そして部屋に入り、カンナの話を聞く事になった。

「アナタにはまだ願いがあるでしょ?
 それを叶えてあげる。
 その為には、『契約』をしなければならない」
「・・契約・・・・?」

「そう、願いを叶えるには必ず。
 契約をすれば、いつでもアタシがレンに付いていてあげる。
 だからいくらでも願いを叶えてあげる。
 まぁ代償は払ってもらわなきゃだけどw」

カンナは笑って言った。

「大丈夫、契約って言っても大した事じゃないんだっ
 んー・・・と、そうそうっこれ~」

そう言って、ナニカを取り出し、
俺の前に掲げた。

それは、クロスがモチーフらしき
ブレスだった。

「これが契約の証。
 これを身に付けるだけで契約完了って訳よ」
「そんな易いものなのか・・」

「それを身に付けていれば、
 いつだってアタシがレンの元へ行けるって訳。」

「これを、付ければ良いんだな?」
「そうそう♪」

カンナは微笑みを浮かべている。
俺はその『契約の証』ってやつを左手首に付けた。

「じゃ、契約完了だねっ」

くすり、とまた笑って、
「今日は寝とくよ」とか呟いてカンナは押入れの中に潜り込んだ。
俺も今日は何だか疲れたし、夜も遅いし
眠りに付くことにした。


「蓮ー?早くしないと遅刻するわよー?」

下から聞こえてくる御袋の声。
カンナは、「記憶が無いとこれから困るだろうから」って
記憶を戻したらしい。

そして、今日も一日が始まる。


「待ってよレンッ!!!」

俺がすたすたと先に家を出ると、
後ろからでかい声がした。

「・・お前、学校まで着いてくる気か」
「当ったり前じゃない!!!レンが何か願い事出来た時、アタシが傍に居てあげなきゃ♪」

あまりに楽しそうに笑うものだから、
何も言う事が出来なかった。


「・・・・っあー―――!!!!!」

いきなり、後ろの方から声が聞こえた。

「蓮じゃんっ久しぶりだねーっ!!!!」

・・この無駄に高いテンション。
俺に絡んでくる奴は―――

「・・須藤・・・・」
「はろーっ♪元気無いねぇ蓮ったら☆」

「・・な、何・・?この煩い女・・・」

カンナがこっそりと耳打ちをする。
・・十分お前も煩いと思ったのは、・・とりあえず黙って置こう。

「うちの学校の奴。須藤」
「ふーん・・」

カンナは何故か、機嫌が悪い様だ。

「なぁーに一人でブツブツ言ってんのよ?
 疲れてるんじゃない?
 たまには休憩って感じで、私とどっか遊びに行こうよ♪」
「に”ゃっ!?!?」

カンナの眉間に、シワが出来る。
何がそんなに不機嫌なんだろう(←鈍感男

「・・考えとく」
「嘘ぉっ本当にー!?」
「・・・・ッ蓮・・・・!!!!」

カンナは何故か俺の腕を引っ張る。

「・・どうしたんだよ、カンナ」
「どうしたってぇ・・・・」

どんどんカンナが涙目になっていく。
カンナの事は、他の奴等には見えないとは言え、
泣かせたら大変な事になる。
・・・てか何で・・泣いてんの・・・?(←超鈍感

「・・さっきから蓮変だよー?もっとしっかりしなきゃ」

そう言って須藤は俺の腕を叩いた。
その時、飛んでいたカンナの腕に 触れた

「・・・・っ痛ぁー!!!!」

カンナがそう叫ぶと、
須藤の視線はカンナへと映る。

「・・・・・っえ・・ぇ!?」

当然、須藤は驚くのだが。

「ひ・・人が・・飛んでる・・っ!?」
「・・あーあ。レン、アタシに関しての記憶、消しちゃって良い?」

「・・おー・・」
「了解っ」

そう言って、カンナは指を鳴らした。
すると須藤は「何してたんだっけ?」と俺に聞いた。
記憶は無事に消されたらしい。

結構便利なものだな。

そんな事を思いながら、俺はすたすたと足を進めた。
後ろの方で、「待ってよ!!」と2人の声が聞こえた。


「ところで、死神ってさ」
「ん?」

今は昼休み。
人目につかない様な校庭の裏庭。
・・のでかい木の木陰で、昼食をとっていた。
カンナがさっき記憶を消した代償は、購買のパンで払った。
腹が減る訳じゃないけど、やはり何か食べたいらしい。

「鎌とか、そーゆーので人殺すとか・・じゃないのか?」

いつもそうだ。
「死神」って言うと、黒い服着て、馬鹿でかい鎌を持っているイメージがあるのだが。

「あははっレンったら常識に囚われ過ぎなんだよーっ
 今の時代、死神だって何でも出来るのよ?
 人だって殺せるし、人の記憶も消せる。
 物体を変化させる事だって出来るの。

 死神だって人間と同じ様に進歩してるのよ」

10個目のパンを口に頬張り、そう俺に説明した。
可愛い顔して「殺す」と言う言葉は
妙に似合わない(お前が可愛いとか言う方が似合わない

「ふーん・・・・」

俺は適当に納得して、その場から立ち上がった。

「あれ、もう行くの?」
「あぁ・・授業だしな」

「そっか、やっぱり死神の方が楽だわ
 人間だった頃はロクな事無かったしね」

―――人間・・・・?

「お前・・人間、だったのか・・?」
「うん!!
 ・・・死神ってのは、自殺や罪を犯した人間が強制的にやらされる仕事。」

自殺・・・・?

「まぁロクな事無いって言ったけど、
 生きていた時の記憶はさっぱりよー」

あはは、と軽く笑うカンナ。
辛い話をしながら笑う彼女は、何故か痛々しく思えた。


ずっと一人で抱えてきたのか
ずっと一人で悩んできたのか

自分から動こうとしなかった
誰かが助けてくれるのをひたすら待ってた



「オイ、天宮ー」

廊下を歩いていると、
生活指導の先生に呼び止められた。

「はい・・?」
「それ、校則違反だぞ、取れ」

そう言って指したのは、
『契約の証』だった。
はたから見れば普通のブレスだ。
仕様がない。

「レン、それ・・取っちゃ駄目
 一度契約を交わして、それを無断で取ろうとすると、

 ・・・・・レンの命は消えるわ――――」

・・・っはぁ・・!?
これ取ったら死ぬのかよ・・オイオイ。

「そーゆー事は先に言えよな。
 大体説明不足なんだよ、お前はいつもいつも・・」

「・・・天宮・・・教師に向かってそう言う口の聞き方は良くないなぁ?」
「へ?」

「放課後、生活指導室に来いよ」

・・・・ぇ、

・・誤解、された・・?
一言で放課後の時間削られるなんて・・最悪だ。

「・・ったく、消えちまえば良いのに」

冗談で、言ったつもりだった。
へらへら笑ってカンナの方を見た。

「・・・了解」

そう、カンナが呟く。
すると先生の行った方から、悲鳴が聞こえた。

「・・きゃぁあああ!!!!先生・・・っ!!!!」

急いで声の方へ向かう。
広がっていたのは、紅い世界だった。


―無残、だった。

窓ガラスが割れている。
窓の外には――

下を見れば、人の『抜け殻』が転がってた

「・・・う・・わぁああああ!!!!」

叫んでた
誰のせいでこうなった?
何で 何でだよ

「・・・お前・・・・・」

俺は、カンナを睨み付けた。
そうだ、『こいつ』がやった。

「・・これは・・アナタが望んだ事」
「・・っ違う!!!!!」

こんな事望んでない
望んでない
違う 違う
俺じゃない
俺はやってない・・・!!!!

「これは紛れも無い現実だよ」

カンナは涼しい顔をして、
そう言った。

俺はカンナの胸倉を掴んで、
叫んだ。

「・・人の命の重さを知れ!!!!
 何故そう普通で居られる!?何故!!!!!」

「望んだじゃない消えれば良いって
 アタシはアナタの望みを叶えただけの事よ?
 何れ人の命は途絶える。それが少し早まったからって何?
 何年か早まって何が変わるのよ
 未来は人何かの力じゃ変えられないわ!!!!」

カンナの口から発せられる言葉。
何だ・・コレ。

こんなのカンナじゃない。
いつものカンナじゃ――――

「人ひとり死んだからって・・何?」
「・・・・は・・?」

「普通に世界は回転してるじゃない。
 だから人ひとり死んでも、何も変わり無いのよ

 幾千もの星から、一つ星が無くなったら、人はどう思う?
 何も思わないわよねぇ!?
 山ほど居るのよ人何てっ!!!!
 大切に思えても、世界から見たら人ひとり何て
 何でも無いのよ・・・・!!!!!」


―――何も、言い返せなかった。

・・お前は誰なんだよ・・・
お前は、今のお前は―――

カンナじゃ・・無かった・・・・・

続く

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