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2005年05月07日
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カテゴリ: BL
 それから丸二日の間、啓太は部屋に閉じこもって過ごした。
 七条は悲しそうな目で笑いながら、啓太から数歩下がって歩き続けたが、啓太に自分からは話しかけようとしなかった。
 啓太は七条のそんな態度に腹が立って、あからさまに七条を避けるようになった。
 啓太は自分だけ山をおりることも考えたが、郁の手前それもできなかった。
 七条は自分から啓太と別室にした。
 郁はあからさまに心配そうな様子で、啓太に「臣と何かあったのか」と何度も尋ねたが、
そのうちあきらめたのか啓太を放っておくようになった。
 別荘にははりつめた静寂が訪れた。
 だが、それはその集団によって破られた。

 ブランドもので全身を武装したその中年女性は、二人の娘と執事、そして使用人たちをひきつれて別荘を訪れた。
「お、おひさしぶりです、おばさま」
「郁がいつもお世話になっております」
 たじろぐ郁をフォローするかのように、七条はその軍団に向かって丁重に頭を下げた。
 何事かと玄関先に出てきた啓太に、郁が気づいた。
「啓太。この方たちは西園寺家の親戚の方々だ」
「まあ、いやですわ、郁様。未来の妻に向かってそんなつれない言葉を」
 沙織と呼ばれた少女が身をくねらせる。郁は青ざめた顔を懸命に隠しながら、沙織たちに啓太を紹介した。
「彼は私と七条の学友、伊藤啓太くんだ」
「よ、よろしくお願いします」
 啓太は丁重に頭を下げた。が、沙織たちは鼻を鳴らしただけだった。


 啓太はぼんやりと一人、別荘の庭を歩いていた。
 暮れなずむ景色に、洋風の庭園は瀟洒な美しさをただよわせていた。
 けれど、啓太の心は晴れなかった。
 今日一日、沙織たちに露骨な無視を決め込まれたのだ。
 沙織と香織とその母親は、郁と七条に媚びを売っていた。郁の生家である西園寺家は名家だし、郁と幼なじみだった

 彼女たちとしては、今のうちに未来の伴侶として二人を青田買いしておきたいのだろう。
 そして啓太は聞こえよがしにひどい言葉を、郁と七条のいないところで投げつけられた。
「どうしてこんな平凡な子が郁さまと臣さまのご学友なのかしら?」
「どうせお二人に媚びて、おいしい汁のおこぼれに預かろうとしているに違いないわ」
「本当、下々のものの考えることはせせこましくて嫌ね」
 啓太は彼女たちの意地悪に黙って耐えた。
 石ころを蹴りながら、啓太は思う。
(いいんだ、べつに。女王様はともかく、七条さんは俺に無理矢理あんなひどいことしたし)
(もしかして、七条さんにとって俺なんてただの遊びなのかもしれない)
(それはそうだよな。俺なんて、何の特技もないし、家柄も普通だし……)
 啓太の目に涙がにじんで、夕焼けがぼやけて見えた。
 その時だった。
 啓太は頭に鈍い衝撃を受けた。振り返ると、拳を振り上げた男がそこに立っていた。
 沙織たちの使用人だった。
 うずくまる啓太に、男はにやにやと笑った。
「すまねえなあ。お嬢様たちのご命令なんだ。この別荘であのぼっちゃまたちと水いらずになりたいから、あんたが邪魔なんだとさ。
だからとっとと怪我して、町の病院にでも行ってくれよ!」
 啓太は先ほどの攻撃の衝撃がまだ去っておらず、起きあがることもできなかった。
 もうダメだと目を閉じる。
 だが、衝撃はいくら待っても訪れなかった。
 それなのに鈍い音はして、啓太はおそるおそる目を開ける。
 そこには、額から血を流した七条の姿があった。
「し、七条さんっ」
「大丈夫ですか、伊藤くん」
 七条は微笑んで尋ねた。それでも声が苦しげなのが痛々しい。
「君にどうしても謝りたくて、後をつけていたらこんなところに出くわしてしまいました。君は本当に悪運が強いですね。
今度ぜひ研究させてもらえると嬉しいです」
「七条さん、そんな冗談言ってる場合じゃ……」
「いいえ、本気です」
 七条は泣いている啓太の頬を優しく両手でつつみこんでから、震えている男に静かに言った。
「殴りたいならいくらでも僕を殴ってください。ですが」
 七条は目を見開いた。
「あなたが伊藤くんを殴ったら、僕は何をしでかすかわかりません」
「ひ、ひえええ~っ!」
 男はおびえながら去っていった。
 七条はそのままゆっくりと目を閉じた。
「七条さん、七条さんっ!」
 啓太は七条の体をゆさぶって、泣きじゃくった。
「大丈夫ですかっ? 目を開けてくださいっ」
 返答はない。七条の体はぐったりとして微動だにしない。啓太は七条に取りすがって叫び続ける。
「やだっ、やだっ! 七条さん、起きて! いつもみたいに俺を見て!」
 七条の返答はない。冷たい風が吹き抜け、七条も体温を失っていく。
「いやだっ! 俺を守るために、七条さんが死んじゃうなんてっ。七条さんが生き返ってくれるなら、俺なんだってするのにっ!」
「本当に?」
「本当に! えっ……?」
 啓太の願い通りに七条は目を開けて、にっこりと笑っていた。
「ありがとう、伊藤くん」

 その後。
 七条からすべてを聞いた郁は「それは使用人が勝手にやったこと」とシラを切ろうとする沙織たちにきっぱりと宣言した。
「お前たちとつきあうくらいなら、カエルの花婿になった方がマシだ」
「僕はミミズと結婚しますーーーーあ、でも。僕の恋人に怒られてしまいますね」
 七条はそう言って、そばで縮こまっていた啓太にキスした。
 あっけに取られる沙織たちを尻目に、七条は啓太を狼狽する啓太を横抱きにして、寝室へ向かった。
「うまくやるんだな、臣!」
 郁は七条にウィンクしながら手を振った。
 そしてすぐに厳しい表情に戻って、沙織たちに言った。
「私に殺されたくなければ今すぐこの別荘から出て行け。臣と啓太の邪魔はお前たちには二度とさせない」
 彼女たちが血相を変えて去っていったのは言うまでもない。

 月明かりが青白く照らす寝室に、七条は明かりもつけずに啓太を抱いて入った。
 そのまま啓太をそっとベッドの上におろす。
 啓太は横になりながら、静かに七条を見上げた。
「抵抗しないのですか?」
「……はい」
 啓太は震えるおのれの体に両手を巻き付けて答える。
「俺、やっぱり七条さんのことが好きだから」
 七条は青い瞳をゆらがせて答えた。
「僕も君が大好きですよ、伊藤くんーーーーそれじゃ、いいんですね」
 啓太は静かにうなずいた。七条は啓太の衣服に手をかける。
 宝物でもあつかうかのうような手つきで、一枚一枚啓太の衣服を脱がしていく。
 啓太は七条の指先が震えているのに気づいた。
(やっぱり怖いーーーーでも)
 七条のやさしい、そしてさみしい瞳を見つめながら決意する。
(この人が俺を必要としているように、俺にも七条さんが必要なんだーーーーだから)
 そして、啓太は生まれたままの姿になった。
 外気に身を震わしながら、啓太は背を向けて脱衣する七条を待つ。
 そして七条は白い体を啓太の傍らにすべりこませた。
 啓太の体にシーツをかけながら訊く。
「寒くないですか?」
「はい……七条さんの体、あったかいから」
 七条はくすっと笑った。
「伊藤くんの体もあたたかいですよ」
「……じゃあ、もっと俺をあっためてください」
「はい、いくらでも」
 七条は啓太に覆い被さるようにして抱きしめた。
 キスが啓太の上に落ちてくる。額に、頬に、鼻先に、そしてくちびるに。
 深くくちづけられながら、啓太は次にくる衝撃を思って、全身をこわばらせた。
 けれど、いつまでたってもそれは訪れなかった。
 代わりに、おだやかで静かな抱擁が啓太をつつむ。
「……七条さん?」
「なんでしょう?」
 啓太に腕枕した七条が答えた。空いている手はやさしく啓太の髪を撫でている。
「何って……えっと……」
「はっきり言ってくれないと、僕には何のことだかわかりません」
 七条のそらとぼけた物言いに啓太は真っ赤になった。
「からかわないでくださいっ」
「ごめんなさい、君があまりにかわいいのでつい悪のりしてしまいました」
 七条は肩を揺らして笑った。食えない人だ。啓太は頬をふくらませる。七条はそれをちょんと指先でつついた。
「むくれた顔もかわいいですよ、伊藤くん」
「もうっ」
「はいはい、ごめんなさい」
 七条は啓太の体をぎゅっと抱きしめた。七条の腕はすっぽりと啓太をつつんだ。
 その途方もない安堵感に、思わず啓太は深呼吸する。
「やはり人肌がいちばんあたたかいですね」
 七条は啓太の頬にキスしながら言った。
「少しずつでいいから、僕に慣れていただこうと思いまして。伊藤くん、君が嫌でなければ、このままで少しだけいてください。
これ以上のことはしません。約束します。僕は君に触れている時だけ、素直になれる気がするのです。
この世に愛だとか、信頼だとか、夢みたいなそんなものがある気がするのですーーーー君がいる場所が、僕の天国なのですよ、伊藤くん」
 七条は啓太に静かに語り続けた。啓太は黙って七条を見つめる。
 啓太を抱きしめる七条は、母にすがりつく子供のようだった。
 そんな七条を啓太は守ってあげたい、と思った。
 啓太は七条に自分からキスをした。ふれあうだけの浅いくちづけだったが、それは初めての啓太からの接吻だった。
 七条は彼にしてはめずらしく驚いて瞠目する。
 そしてすぐに自分から深く啓太にくちづけた。
「もっともっとキスして、今夜はいっしょに寝ましょう、七条さん」
「はい、伊藤くん」
「で、でもっ。あくまで一緒に眠るだけですからねっ」
「はいはい」
 七条は少しあきれたように笑いながら、啓太をかきいだいた。
 啓太はくすぐったそうに身をよじってから、そっと七条の背中に手をまわす。
 天国は今、七条の腕の中にある。


                              END






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最終更新日  2005年05月07日 01時07分02秒
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