Bond

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野球ボール直撃


校庭でバレー部の練習をしていた。
ペアの子にボールを渡した瞬間、側頭部に何かが直撃した。
あまりの衝撃に座り込んでしまった。
ぶつかった「それ」は、硬式の野球ボールだった。

同じ校庭の数メートル離れた場所で、
野球部がバッティング練習をはじめていたのだ。

あたった場所は左耳。
衝撃のためか、左耳は何も聞こえない。
部員に引きづられて保健室へ。
先生はあわてて病院と家に連絡をしていた。

その様子を見ていて、
「ボールの持ち主はどうしたんだろう・・・。」
と思った。
と、その人が保健室に入ってきた。
「ごめんね。大丈夫?」
心配そうな面持ちだ。
その人がいなくなって、
私は保健の先生にいった。

「私がよけられれば、
あの人は謝らなくて済んだのに。
申し訳ないことしちゃった。」

保健の先生はびっくりした顔をして私を見た。
でも、私は心底そう思っていた。

病院に行くと、
左耳は腫れ上がっていたが、
そのほかには異常は見られないとのこと。
その日は、病院からそのまま家に帰った。

夜。
ボールの持ち主が母親と一緒に誤りにきた。
びっくりした。
とんでもないことになってしまったと思った。
私の母が
「うちの娘の不注意ですから、お気になさらないでください。」
といっているのが聞こえた。

その人たちが帰って、
私は軽率にも、父のいるところで、
「私がよけられたら、
誤りにくることなかったのに・・・。」
と口走ってしまった。

父は、怒り狂った。
「よけられなかったお前が悪い!!
なんで、よけられなかった!
言ってみろ!!!」

恐怖に身がすくんでしまった。
確かに、あたってしまったことに申し訳なさを感じていた。
でも、あの位置で、
まして野球ボールが飛んでくるとは予想外だったのだ。
それが、ノーバウンドで直撃することも。

何も答えられない私に、
父は怒り狂った、
たたかれたかもしれない。
よく思い出せない。
でも、父が罵声を浴びせて私を叱ったのは憶えている。
家の中で、
私の怪我を心配する人はいなかった。

次の日、
学校で授業を受けていると、
部活の顧問兼担任が私のところへきた。
授業中の巡回だったので、
どうしたのかと思っていると、
「○○。耳を見せてみろ。」
といわれた。
そして、耳が赤く腫れているのを見て、
「大丈夫か?」
と声をかけてくれた。

父に怒られてから、
自分でさえも自分の心配を忘れていたことに、
そのときに気が付いた。

その部活の顧問は、
とても厳しい人だった。
よく、部員に手を上げることもあった。
県大会にも出たほど強いチームだったのだ。

でも、私には一度も手を上げなかった。
「きっと、期待されていないから」
と思っていた。
でも、違った。
先生は
「○○はいつも、親にたたかれているから。
俺がたたくことはない。」といった。

そういえば、親にたたかれて泣いた翌日、
目も頬も腫れていた。
そういうときに限って、
「調子はどうだ?」とか、
たわいもない話をしてくれた。

目は腫れていても、何とかごまかせる。
頬もあざにはならないから、
冷やせばそこそこ腫れも引く。
きっと、誰も気づかない、と思っていた。
その先生は、きっと気づいていた。

中学3年生になるとき、
その先生は転出してしまった。
最後のお別れは、涙がとまらなかった。

今日、(20040514)急に、そのことを思い出した。

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