青い空と蒼い月

青い空と蒼い月

3話



レオナルドとマルクが‘地下競技場’に入った直後、辺りの闇に溶け込むような黒装束を頭から爪先まで身を包
んだ男が今まで二人が通ってきた裏路地から出てきた。そして建物を見上げると、うなずき確認した様子で踵を
返し、今来た道に戻っていった。
その時、振り返った際に、街灯の灯りが男の着ている黒装束の左上腕部に付けられた蝶の紋章を照らし出した。
その蝶は鈍く光をはね返していた。まるで、微かにでも自分の存在を示すように・・・。

建物の中に入ったレオナルドとマルクは、黒装束の男に後を付けられていたことなど知る由もなく、マルクを
先頭に歩いていた。しかし、目の前にあった入り口からではなく、建物の横に回り込んで労働者用の入り口で
あろうか、マルクの背より一回り小さい扉から入ったのだ。
中に入ると、天井に薄暗い裸電球が2、3個ほど付いているだけの通路を3メートルほど進むとT字路になって
いて、マルクは迷わず左に曲がった。その突き当たりに扉があり、扉には少し色褪せ、表面が黄色がかった白い
表示板で「事務所兼従業員室」と書かれてあった。

「これから、同じ仕事仲間となる野郎共を紹介する。ここに来る前に俺なりに考えてみたが、とりあえずレオ
には、雑用係としてしばらく働いてもらうことになると思う。ここのほかの野郎共とある程度、仕事をさせて
からレオに合った仕事についてもらうことになるがそれで良いな?」

扉を前に、マルクはレオナルドに今後の仕事の予定を話した。

「はい!それで構いません。宜しくお願いします。」

レオナルドは働かせてもらうだけでも嬉しくて、深々と頭を下げた。

「よし。良い心がけだ。それじゃ、今からほかの野郎共を紹介するから一緒について来な。」

そういうと、マルクは「事務所兼従業員室」の扉を開けて、中に入っていった。レオナルドは、一つ深呼吸を
してマルクのあとについていった。

部屋の中は意外に広く、先程訪れたユリギータの酒場の倍以上の広さがありそうだった。仮に言うならば、
‘タタミ20帖以上’と言ったところであろうか。この広さならば、扉に書かれていた「事務所兼従業員室」の
言葉が納得できる。
その部屋の半分くらいの場所に、今は半分くらい開いているが、アコーディオンカーテンが付けてあった。どう
やら、向こう側が‘従業員室’の様である。さらにその‘従業員室’の半分は高台になっていて、大人二人くら
いは寝られるほどの広さがあった。

マルクは、レオナルドを伴って、‘事務所’を通り過ぎ、カーテンを全開にして‘従業員室’へ足を踏み入れた
中には数人の男女が談笑していたが、マルクがカーテンを開けた音に気付いて全員マルクに注目した。

「みんな!聞いてくれ、今度新しくここで働いてくれる少年を紹介する。レオ、こっちに来て自己紹介を頼む。」

「はい。」

レオナルドは、マルクに自己紹介を頼まれて、恐る恐る3人いる従業員の前に立った。

「僕の名前は、レオナルドと申します。歳は15歳です。先程、ある酒場で行き場所に困っていたところをマルク
さんに声を掛けていただいて、お願いして雇ってもらうことになりました。まだ、何もわかりませんが、どうぞ、
宜しくお願いします。」

「坊主、生まれはどこだ?」

深々と礼をしているレオナルドに、早速の質問がやってきた。レオナルドは、急いで頭を上げたが、質問には
困ったようにしばらく黙っていた。

「ちょっと、アッシュ、よしなさいよ!自分の紹介もまだなのにそんな質問はないでしょう?相手はまだ子供なん
だからね!少しは相手のことも考えなさいよね。まったく・・・。」

「ちっ。わかったよ・・・。悪かったな。坊主。俺の名前は、アッシュ。アッシュ=コールだ。マルクのじいさん
には、俺がガキの頃から、よくしてもらっているからな、そのじいさんに声を掛けてもらったんだ、お前は幸せ
者だぜ。なぁ?リーナ。」

「そうね。あ、自己紹介するわね。私は、リーナ=アイナリーゼン。リーナで良いわ。宜しく、小さな迷い子さん。」

「今度は俺の番だな!」

そう言って、高台から降りてきてレオナルドの前に出たのは、アッシュより頭一つ分背が高く、しかも大柄な人物
だった。

「俺の名前は、ニコル=アップショー。人呼んで‘怪力ニコル’だ!覚えておきな、レオナルドとやら。」

そう言うとニコルは、自分の二の腕に力を入れてレオナルドに見せ付けた。 その筋肉隆々の腕を見せ付けられた
レオナルドは少々驚いた。ニコルはレオナルドの驚いた表情を見ると、満足げに口元だけ笑ってみせた。

「わっはっは!ニコルの挨拶は相変わらず変わってねぇなぁ!初めての奴にはいつも、あぁやるんだ。だから、
レオも大目に見てくれよなぁ!ニコルも悪気はねぇはずだからな。」

ニコルの紹介を見届けて、マルクがレオナルドに救いの手を差し延べた。

「はい。少し驚きましたが、大丈夫ですよ。」

「ほほう。見上げた根性だな?レオ。俺は、お前が気に入った!どうだ、俺と組まないか?」

「え?僕とですか・・・?」

「嫌なのか?」

「いえ、別にそういう訳ではないですから。僕の方からお願いしたいくらいです。ニコルさんみたいな兄さんが
欲しかったくらいですから。」

ニコルのいきなりの誘いに面食らったように驚いたレオナルドだったが、まんざら嫌でもなかった。

「そうか。それならいいがな。」

ニコルも少し微笑んだように見えた

「それじゃ、レオはニコルと一緒に仕事をするとして・・・。え~とぉ、あとの3人はどうしたかのぉ?」

辺りを見渡し、この場にいない人物がいることをマルクは気になっていた。

「リンレイなら、まだ買い物から帰ってこないけど、イルゥとクラマはどこにいるか知らないわね・・・。」

「イルゥのヤツは、また飲み歩いてるんじゃないのか?!クラマはどこにいるのかわからねぇけどな・・・。」

アッシュとリーナが口々に知っている状況を話した。二人とも‘クラマ’という人物の行方は知らないらしい。

「そうか。それじゃ・・・、ニコルはレオを連れてイルゥとリンレイを捜してくれんかのう?クラマは俺が捜して
おく。」

「了解した。レオ、早速の初仕事だ。やれるな?」

「はい!少し緊張していますが、頑張ります!!」

「わっはっは!こいつは頼もしいヤツが入ってきたなぁ~~!これからも宜しく頼むぞ?我が相棒よ。」

ニコルもすっかりレオナルドのことを気に入ったらしい。
早速ニコルは、レオナルドを伴って
イルゥとリンレイ捜しに出掛ける為、事務所兼従業員室を出て行った。

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