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第00話
CHAPTER-00
「始まりの青い色」
「じゃあな、裕司!」
「じゃあね、ユウちゃん♪」
僕はいつものように友達・・忍と景に手を振って別れた
景はいつもここの交差点で別れるんだけど、忍は用事があるって言ってたからこっちまで来てる
・・疲れたなぁ・・
今日は体育でジャージ忘れて、グランド5周もさせられちゃったもん・・(汗)
いつもの事だからなぁ・・なんて情けない事を思いながら、僕は近道を通って帰る
近道にしているのは路地の裏側・・暗くてじめじめした、普通なら通りたがらない所
でも僕の家までは近いんだから、通らない手はないよね・・?
・・僕の名前は鈴宮裕司(すずみや ゆうじ)
六澄の街の外れで、普通に生活してる普通の中学2年生!
・・ごくごく普通だと、僕は言ってるんだけど・・みんなから見るとどこか変わってるらしい
・・強いて言うなら・・僕はいつもお気に入りの帽子を逆さ被りで被っている。
・・ちょっとこだわりがあるんだよね。
さっきの友達は天導寺景(てんどうじ ひかり)と高杉忍(たかすぎ しのぶ)
景は幼なじみの女の子で、忍は中学入ってからの大の仲良しなんだ♪
僕たちはいつも帰る時は一緒に帰って、学校でもどこでもほとんど一緒に行動している
おかげで楽しい事には欠かないで済んでるから、ありがたいよ・・
##########################################
「・・あれ?」
それから、僕は近道を通っていた・・
ところが様子がいつもと違う事に気付いて、思わず立ち止まる
・・なんで霧が立ちこめているんだろう?
こんなトコで霧が出るなんて、こんな事そうそう起きる事じゃない
・・異常気象がどうのこうの言ってたって、昼間にこんな濃い霧なんて出るわけ・・
・・ずる・・
何かを引きずるような音がして、僕は後ろを振り返る
霧に包まれてしまったその中から、ゆっくりと黒い影が・・僕の前に姿を現す
「!」
言葉を失う、とはよく言うなぁ・・と思った
なんてったって僕の前に出てきたのは・・一つ目で、両腕が長くて、異様に肩が張り上がっている・・「怪物」だったんだから
誰しも怖くて固まってしまうだろう
しゅ・・・と静かな音がした
僕は逃げようとしたが、一瞬動作が遅れて・・・
ざぐっ・・
鈍い音がして、僕の左胸に激痛が走った
でも僕は、もうそれが「痛い」という事さえ分からない
頭の中が真っ白になっていくのを感じながら・・
ついてない、なんでいきなりこんな事に?・・・と思っていた
##########################################
「・・・・」
・・ハズなのに・・
僕は死んだハズなのに・・・
それから倒れていたのは、僕ではなく「怪物」の方だった
なぜか僕は立ってそれを見下ろしていて、怪物が粉のように崩れて消え去っていくのを見ていた
「僕は・・?」
少なくとも今は夢の中じゃない、なぜかそう確信している
・・でも・・僕は夢だと思いたくなってしまった。
・・霧が晴れて、薄暗い建物のガラスに映った僕の姿が・・変貌していたからだ
僕は・・青い鎧を身に纏っていた
正しく言うならば、僕は変身してしまっていた
青い騎士・・とでも呼ぶべき、まるでロボットのような姿に・・・・
##########################################
翌日・・
「おはよう、ユウちゃん」
「おはよう!」
僕はいつもみたいに景に返事をして、一緒に学校へ向かう
・・でも、どこか引っかかる事があって、挨拶だけで会話が無くなってしまった
「あんの~・・どうかしたの?ユウちゃん?」
頬に汗をたらしながら、景が聞いてくる
「いや、ちょっと眠くてね」
僕は自分でも誉めたくなるほど普通に、寝不足であると嘘をついた
景も納得したようでうんうん、と頷いた
「ダメよ、新しいゲーム買ったからって遅くまで遊んでちゃぁ~?」
「え?・・ああ、アレのこと・・」
二日前に買った最新版のバーチャロンか。
このバージョンだと確か、テムジンも隠し機体増えてたっけ・・
「やっぱりライデン最高よね♪」
「え?・・僕はテムジンが一番いいんだけどなぁ・・」
「嘘よぉ~・・だって攻撃力特化が一番じゃない!」
景は一応女の子のハズだが、ゲームやプラモデルにやたら詳しい
・・昔からずーっと、
ロボット大好きっ娘
だったけどね(汗)
眼鏡をかけていて長いポニーテール、中学生にしては異様に発達したスタイル・・
その上で頭がよくてそこそこ運動神経があるんだから、コレを才色兼備と呼ばない手はないだろうね~・・
・・「フツー」なら。
・・残念ながら、僕が物心ついた頃からずーっと彼女は「変わり者」である
普通に接する分には問題ないんだけど、ちょっとアニメとかロボットとかに踏み込んだ話になるともう・・
俗に言うには「オタク」と分類できるんだろう。
かく言う僕も少々ロボオタクな所はあるけど・・流石に景には負ける
・・「歴代ガンダムの型式番号と武装、登場作品をソラで言える」と言えば分かるかも・・
「ところでユウちゃん、昨日の話知ってる?」
「え・・?」
昨日、それはあまりにもとんでもない出来事があった日・・・
背筋に寒いものを感じながら、僕はその話を聞いてみる
「それがね、一時的にユウちゃんち近くの区で「霧」が立ちこめてたらしいのよ、異常気象とかなんとかで・・」
「やっぱり」
「ユウちゃん、見てきたの?」
「う、うん」
思わせぶりな事を口にしてしまった僕は急いで言い繕う
「ふ~ん・・ユウちゃん、そんな暇あるんならゲームやってるんじゃないかと思ってたわ。」
「・・あのね」
右手でびし、と突っ込みを入れる
「・・僕は・・」
あの霧を見たどころか、霧の中で何か、別の世界を体験してきた
・・以前忍から聞いた事があったっけ・・
・・霧の中に怪物の・・人ではない者の影を見た・・
そんな噂、僕は信じてもいなかったのに
多分僕は・・初めて本当に怪物と出逢った人間じゃないかと思う
変身してしまった。
僕はあの怪物を倒してしまった
だから・・僕はこれから、普通じゃない中学生活を送っていく事になってしまった
もうすでに普通じゃないのだけれど、さらに磨きがかかってしまう・・
・・そんな気がしてた。
「景ィ」
「なに?」
「いきなり訳の分からない危なそーな「怪物」に遭っちゃったらどうする?」
「そうね・・あたしそんな速くないけど・・・多分逃げるわ」
「・・・それがもし、自分が
「ヒーローに変身して戦える」
状態ならどうする?」
景は少しも考えずに、むしろ目をキラキラさせながら
「変身して戦っちゃうわよ、そりゃ。」
「・・・言うと思った」
・・さて、ホントにどーしよう・・?
僕は戦えるのかな・・・今度また、あんなのに遭ったりしたら・・
不思議なことへの考えを胸にとどめ・・僕は景に笑って見せた
「普通に・・・ね」
普通じゃない普通の日常
僕の生活はここで、狂いはじめてしまったのかもしれない・・
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