第15話

CHAPTER-15「」


前回のあらすじ・・

僕は最後の難関にかかっていた、これこそ最大の境地と言っても過言じゃない


「・・俺に勝つってのは何十年か後に言うべきだったんだ!・・戯言ほざいてるんじゃねぇ!!」

「くっ・・!僕にだって・・この機体の力があればあんたを超える事だって!!」



地球から遙かアンドロメダまでの航路・・暗黒星団との決戦、僕が歩んできた道は果てしなく長い・・

しかし今、僕がこのダーツを命中させる事ができればこの無駄な宇宙戦争を止める事ができるんだ!


(できる!・・僕はこれでもシミュレーションゲームの鬼と呼ばれた男なんだ・・!)


そして僕は・・神の一手・・・最後の石を手に取った・・

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・・早朝・・鈴宮家。


「久しぶりに変な夢見たな・・・・」


僕の枕の傍らには、昨日大介からもらった昔のマンガが十数冊・・

・・結構混ざったなぁ、今日の夢・・


苦笑いしながら起きると、僕は私服に着替え始めた

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9月末日・・


僕は今日、世界の・・いや、色々な意味で歴史の移り変わりを目にする事になる

・・そもそもの始まりは、ガンマ・・いや、緋色ちゃんが現れてからの二週間・・

それすら発端に過ぎなかったと、今では言える


・・色々な事を知った今だからこそ・・

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あの日・・ガンマくんが緋色ちゃんとして復活した、その翌日


あたしは気分転換にと思って、ルイン&奏先輩と渋谷の街に買い物に来ていた

・・もちろんあたしがファッションだのなんだのの街を選ぶワケがない、お二人さんに偶然誘われて行ったまでの事で・・


「ん~・・今年は速くに寒くなるそうだから、ちょっと長袖くらいの選んでおいた方がいいんじゃない?」

「・・・そうですねぇ・・」

「あれれ?・・景ちゃん、もしかしてお疲れ?」

「い、いやいや、そーいう事ではないんですが・・」


奏先輩がいきなり顔をのぞき込んできたのでドキっとした

・・あたしの頭の中には服装うんぬんの事などもとよりない

ひたすら、ぽっかり穴の空いたアリスの設計図だけが浮かんでいる・・・


(・・一体どうすれば、あの大出力をまかなうエネルギーが得られるのか・・)


「景ちゃん?」

「あ、ああいえいえ、なんでもないですよホントに(汗)」

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お昼になって、あたし達三人は近くのカフェで昼食をとる事になった

ルイン先輩はアル先輩の事を話していて、奏先輩が合いの手を入れるという漫才のような会話が続いている・・

あたしは一人、心ここにあらずという目でマルのディスプレイに表示されたアリスの設計図を眺めていた


・・・ダメだ、どう考えてもどこかで式がつながらない・・・

万が一エネルギーが足りなければ、アリスはまた破壊されておしまい・・

・・それだけは絶対にイヤ


あたしは次に、緋色ちゃんから得たエネルギーのデータを表示した

これはあたしはおろか、父様にも母様にも、お偉い科学者様でも解けなかったという難しい虫食い算・・

これが解読されれば、アリスはおろかエリアルホームが空を飛ぶくらいの芸当すらできるのに・・


「・・重力方向の数式?・・かぁ」


ぼそっと背後でつぶやきが漏れたのは、その瞬間だった

あたしはがばっと振り返り、その席についていた・・小さな女の子の両肩を掴んだ


「今、なんて言ったの!?」

「ひっ・・・!?・・・じゅ、重力の数式を・・・・」



ベレー帽に眼鏡、地味なブルーのワンピース

・・どう見ても、そこらにいそうな小学生の女の子・・・

しかし今口走った事は確かに、間違いなく、的確に、まさに、あたしの探し求めている答えの一端だった!!


「ど・・どうしたの景ちゃん?」

「その娘が何かしたんですかぁ・・?」

「すいません先輩方、あたしちょっと用事を思い出したんで失礼します!!」


女の子を半ば引きずるようにして・・ばびゅん、とその場を後にした

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「・・結局残されてしまいましたね・・・」

「・・ルイン、とりあえず飲んでから買い物してこ?」

「そうですね・・景ちゃんは何か考え込んでいたようだし・・答えが見つかったのかもしれないし」


・・二人とも、景がたった今拉致していった女の子の事は触れる事がなかった(汗)

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あたしは女の子を連れたままとある数字の書かれた地面に立っていた

・・天導寺重工が設置した貨物輸送用ゲート・・


しばらく待っているとそれが開いて、中からは咲妃ちゃんが出迎えた



「お姉様~、お迎えにあがりました~」

「ありがとう、じゃあどうぞ♪」

「へ?・・あのぉ・・私は・・・」


おずおずとしている女の子をまたまた引きずるように、あたしはゲート下の輸送車両に乗り込んだ

地下鉄を滑るようにして、車両はまっすぐエリアルホームへと帰還する

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「さて、あなたはどうしてあの数式の答えが解けたの?」

「そ、それは・・違うんです、ただ単に覚えていただけで・・・」


眼鏡の女の子はあたしの目をじっと見つめながら、それが真相である事を無言で語った

差し出された計算式・・あたしが半分だけ組み上げていた数式を、この娘はさらさらと書き足していく


「これで重力と反重力、相反する二つの力が一つになって・・いわゆる重力制御の式ですよね?これ?」

「な・・なんでそんな事がわかるわけ・・?」

「いえ、だから・・私は 覚えている だけなんです・・昔どこかで見た事があって・・」


・・「覚えている」「どこかで見た」?・・


どういう事かはわからなかったけど、この数式を元にユニットを設計すれば、アリスは惑星最強の弐式として復活する!

あたしは女の子に思わず抱きついていた


「あっりがと~♪おかげであたしの夢が叶うわ、ホントに感謝する~♪」

「えっ・・あっ・・あのっ・・!?」



・・あらためて顔を合わす

・・眼鏡がない

・・ベレー帽も落ちている


・・そして、この顔に見覚えがある


「・・・・・・・・・・・」


・・ 「白銀」

そんな熱血ロボットモノの主人公みたいな名字のアイドル、あたしが忘れるワケがない


「白銀・・すばる・・・・さん?」

「はい・・そうですけど・・・・」


あたしは卒倒しかけた(汗)

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・・景が休み始めた頃・・僕はあれから少しだけ変わった事があった


ブルーナイトの力が、次の段階へ進んでいる事に気がついたんだ

今この戦闘の真っ最中にも、僕はその事を実感している

・・最近は戦闘しても疲れるような事が少なくなった

それは僕が、この状態に慣れてしまったからだろうか?

・・僕本来の性からすれば、正直うれしい事じゃない・・


「裕司!上から来るよ!」


明の声ではっと我に返って、僕は右手を振るう

瞬時に右手が発光し、光の剣を作り出す

レーザーブレード、その剣先が異形を突き刺しその腕を切り裂く

左手で殴りとばし距離をとる・・

その時、僕の身体・・ブルーナイトの鎧は、第二形態へと移行し・・鎧の形が、さらに変わった

背中には薄緑に輝く三枚の光の翼が生え、僕の両腕は巨大な盾に守られる

・・霧の晴れた中から異形が飛び出してくる


盾は真っ二つに開き、中からレーザーブレードが二本現れる


・・まっすぐ突っ込んでレーザーブレードを両方とも異形の腹に突き刺した!

間髪入れず、レーザーを放とうとした頭部めがけて、こちらの頭部・・巨大な剣付きの頭部を振り下ろす!


・・異形が消滅したのを確認して・・僕は元の姿に戻った


「裕司、今一瞬だけ形変わったよね?」

「・・うん、一瞬だけ・・数秒なっていられれば良い方なんだけど・・」

「・・(メモ:そろそろパワーアップとか?)」

「わかんないけど・・数秒じゃ意味ないよね・・」


僕はさっきの感覚を思い出しながら、つぶやいた

・・盾と剣と羽、さらに戦闘力の高まったスタイル・・しかし、あの形態は長く維持できない。

何故だろう、しかし・・僕の主義からすれば、強くなるのは嬉しいことばかりではなかった。




僕は変身を解くと、明、小麦ちゃんと一緒にまた下校の道へ戻った

そして、懐にしまってある白銀すばるのコンサートチケットの事を気にかけた


・・どうしよう?景はこんなの行くつもりないだろうし・・僕も大して興味あるワケじゃないし・・・


戦いが終わって、ふっとどうでもいい事が気になってくる

僕はどうせなら・・と思い、2枚あるチケットを誰かに渡そうかとも考えていた

・・でも、もう少し迷っておこう

たまに当たったモノを粗末にあげてしまうというのも何だし・・・・

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「なぁ武ィ」

「何?呼んだか~・・アルぅ?」


教室・・部活も終わり、残っているのはアルと武を含めて運動部が数名のみ

アルはワイシャツのボタンをしめながら彼に問いかけた


「お前、コンサートとか行くか?」

「え?・・別に・・好きこのんで行くような事はないけど・・それがどうかしたのか?」

「実はここにルインが当てたチケットが2枚ある。」


※説明しよう、ルインは自分のドジを棚に上げて果てしなく運の良い少女である!

福引きで一等特賞を当てるなど日常茶飯事なのだっ!!(というワケでなくさないようにアルに預けてあるのだっ)


「・・・・それ、お前と行くって言ってるんだろ?行かないときっと殴られるぜ?」

「・・それ以上にイヤなんだよ・・俺はあいつのドジに巻き込まれて死にかけた事があるんだから・・・」


時としてドジの域を超えるルインのドジ、それはかつてアルの命をも脅かしたという・・

武も並々ならぬ物言いに、圧倒されそうになる


「・・そこで、だ・・・頼むからコレ、受け取ってくれないか・・」

「・・・・なおさら受け取れるか(汗)」

「二人ともどうかしたんですか?」


会話に数騎が横から入ってきた

アルと武の目がキラリと輝く!

ぱしっ!


「れ?」


瞬時に数騎の手にチケット2枚を握らせて、アルと武は書き置きを残して走り去った


・・「とりあえずもらっておけ、コレはお前のモンだからな」・・


(・・・すばる?・・・谷村新司?(違う)・・・・・コンサート?)


とりあえずバカ正直にもらってきてしまう数騎だったが、よくよく考えれば自分はこういうモノに全く興味がない


・・僕以外の誰かにあげた方が、有効活用してくれそうですね・・


というワケで、次に会った人にでもあげようと決めた数騎が会ったのは・・

ちょこんとした、メイド服の少女だった

・・ここ(学校)にそういう服装の人間がいる事自体が異様な光景だが、数騎は特に気にしなかった

・・ただ・・その少女が腰に刀を差してさえいなければ、少しはまともな光景だったろうに(汗)


「あの・・いきなりですみませんが・・」

「む、私にご用でしょうか?」

「コレ、よろしければもらってくれませんか?・・僕には縁のないものですし」

「はて・・・チケット?・・・・すばる?」


文面を眺めている間に数騎はすたすたと歩き去っていった

少女・・咲妃を迎えに来た緋色は顔を上げてきょとんとしている


「・・?・・・・・・なんだかよくわかりませんが・・とりあえず景様に報告しましょう」


・・こうして、裕司がチケットを渡す事もなく、景も会場へ向かう事になった

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「あ・・忍?」

「お、裕司ィ」


辺りもすっかり暗くなった頃・・ちょっとお使いで出てきた僕は、商店街の隅で忍と出会った


「ちょうどよかった・・・・寒いし、コレ飲めよ」

「くれるの?・・ありがと~♪」


僕は忍から缶コーヒーを受け取った

・・あれ?コレって確か忍の好きな銘柄じゃないハズだけど・・?


「・・さっきチェスがいたんだがな、渡す前に行っちまったから・・飲んで帰ろうかと思ってたんだよ」

「ふ~ん・・ま、いいよ。オゴリなら頂いておく」


僕は早速缶コーヒーを一口飲んだ

始業式の後くらいから、いきなり寒い日が続く毎日・・芯からあったまるような思いがした


「はぁ~・・・・」

「・・なんでこんなに寒いんだろうなぁ・・まだ9月半ばだぜ?この前まで猛暑がどうの言ってたのに」

「うん・・」


僕はぼそぼそ会話しながら、例のチケットの事を思い出した

・・忍なら、もらってくれるかも?


「忍、コレ・・お礼と言ったら何だけどさ・・」


さりげなく差し出してみると、忍はそのチケットを受け取った


「・・・・ありがとう、裕司」

「この前DVDもらってたからさ、ちょっとは好きな歌くらいあるんでしょ?」

「べ、別に俺は・・ 「幸運のトライブ」「青い風」「はっぴぃ?」「サーカステント」「その時まで」 ・・ま、そのくらいさ(汗)」

「・・・・ずいぶん知ってるね・・しのぶぅ・・・(汗)」


・・忍・・やっぱり好きじゃないの?・・

もンのすごくうれしそうな忍の横顔・・

・・はっとして僕の顔を見る


「・・ま、暇つぶしにはなるだろうな(汗)」

「・・・・はは・・・(汗)」


だけど忍はその後、何かをつぶやいていた


(・・感謝するぜ裕司、おかげですばるちゃんを近くで守る事ができる・・)


忍は真剣な顔をして、サングラスをかけるとにっこり笑い去っていった

・・何にせよ、喜んでくれたんだよね?

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「忍さん・・」

「ああ、チェス・・悪いな、さっきのコーヒーは裕司に」


・・言いかけた所でチェスが懐からコーヒー(ブルーマウンテン)を取り出したので、俺は言葉を切った


「好都合でしたね、テロリストは手段を選ばず襲ってくるでしょう・・コンサート会場だろうとお構いなしに・・」


チェスが言う言葉には重みがあった

・・会場でテロが起きたら大惨事になるのはよくわかる


「私は引き続き組織の監視を続けます・・」

「しかし、どうして居場所がわかりながら総攻撃を仕掛けないんだ?」

「ン・・夏休みの一件、覚えていますか?」

「あの「オーディン」強奪事件だろ?」

「オーディン・・その最後に残った一つがMI-6の内通者によって持ち出されてしまったんです」

「・・・!?」


俺は驚愕した

オーディンというのはイギリスの軍事組織から強奪された超強力なロボット

・・夏休みに俺と明、改都はチェスに協力してそれの撃破を行った


・・そして最後の一機はMI-6が回収し、解体される予定だった

それが・・


「アレはテロリストの手に渡ってしまっています・・所在がつかめない内はうかつに手を出せません」

「・・すると、オーディンが会場を襲撃してくるんだな?」

「・・・・ええ・・」


この事はMI-6の極秘情報だ・・明や改都にだって話す事ができない

俺はチェスに特別視されているおかげで、例外的に聞かされているが・・・


「・・景に協力を要請できれば楽だろうになぁ・・」

「大丈夫、当日はMI-6から援軍が到着する予定ですから・・忍さんはすばるさんの近くにいた方がいいんじゃないですか?」

「・・お気遣い、ありがとよ」




・・運命の日まで、あと一週間・・



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