第一部外路-01


・・・・それと、私が率いる愉快な仲間達・・・もとい個性豊かな小隊の面々。

天然ちゃんの副隊長は何の疑問も持っていない
自称エースもおそらく疑問を持っていない
個性豊かな小隊の面々もきっと疑問を持っていない


実験小隊である私たちの任務が、今回だけ何故「VIPの護衛」なのか・・
そもそも「実験」小隊である事すら忘れているんじゃないかと、部下を疑わずにはいられない私であった。



私の名前はリィズ、「リィズ=トリーシア」・・花も恥じらう19歳の乙女である。
天然ボケの副隊長「レオネ」と自称エースの飛行機バカ「ラルフ」、そして先ほども言った個性豊かな面々のリーダーを務めている
そう、私は特A級の空間把握能力と指揮能力を持ち、誰からも好かれる有能な人材♪(だと思う、切に)

そんな私も活躍した「あれ」・・こと「空白の10日間」事件から早くも一ヶ月・・
・・宇宙は、とりあえず平穏だった。




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・・・1・・・


テラフォーミングを受けて誕生したごくありふれたリゾート惑星の一つ、「ラスヴァイユ」
今回赴任したのはこの星で、先述の通り私個人ではなく、「S.G第八実験小隊」がまるごとである。

西安からここまでワームドライブを重ねる事数回、太陽系からはそう遠くなっていないが・・


・・今はすごく、西安の自室が懐かしい。


VIPの護衛を任された私たちではあるが、所詮組織の末端である
その待遇はすこぶる酷く、護衛対象をカバーする数名を除いて野営陣地(ブロックハウス)泊まりという有様だった

さすがに男女に分かれての宿営だったが、個人のプライバシーは著しく制限される
一人窓際で西安の街並みを眺めながら飲んでいたワインも、しばらくお預けという事だ
・・未成年の私ではあるが。


「ラルフ、首尾はどう?」
『はひ、もうこれが美味いとしか表現のしようが・・・・あ、問題ないス』


・・食事をしながらの部下の応答に、レーション(携帯食)3日目のお腹が、減ったのか羨ましいのか小さな音を立てた。
モニターに映る彼は明らかに食事に重点を置いている


「ホテル勤務を任せたのは食事のためじゃない、仮にもあんたの能力を買っての事よ!?忘れてんじゃないでしょうね!?」
『ええ、万事ぬかりなく・・』


ラルフ=オルドー一尉はそう言いながら至福の笑みでローストビーフをほおばっていた
・・任務が終わったら笑顔で殴ろっと。


通信を切って少し・・天然ちゃん・・・いや、副隊長のレオネ=M=長瀬三佐が外回りから帰ってきた。

「たいちょー、異常はないようですぅ。」
「ご苦労、一佐。」


口調と同じく、敬礼する手もやや遅い。


「しかし何なんでしょうねぇ、私たちが護衛任されるなんてぇ・・」
「そうなのよねー・・ふつう兵器実験小隊に任せる?実働してる機動隊がいるじゃないのよ」


人類発祥の地とはいえ、地球はすでに辺境の星である
ついでに、「空白の10日間」事件で静かに有名になったとはいえ、私たちも大して取り上げられたワケではない。
そんな私たちがどうしてこんな任務に?ここにだって優秀なS.G機動隊と民間警備会社があるのに・・


「ま、やるならやるっきゃないでしょね・・下っ端のつらいとこよ。」


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・・数時間後・・

周辺は暗がりに包まれ、パーティーまがいの事をやっていたVIP達も部屋に戻ったようだ。
・・そもそも何のVIPなのか、それは誰にも知らされていない


「・・気になるわね」
『と言われても俺だって知らされちゃいないスよ?』
「・・・・・・・」


納得がいかない点が多すぎる気がする。
私はヤな予感をちょっと・・ほんの少しだけ覚えた


・・その時、野外ライトが点灯し、周囲の動きがややあわただしくなる
ラスヴァイユ側のS.G機動隊が到着したらしい
やがてノックの音がしてドアが開き、数名の男が入ってきた

一斉に敬礼をし、私・・と、居眠りをしていたレオネも寝たまま敬礼をする。


「ラスヴァイユ駐留隊隊長、シスレー=デューイ二佐です」
「どうも、第八機動実験小隊隊長、リィズ=トリーシア一佐です」


・・生真面目そうな青年隊長・・ああ、なんとなーくいい男に見えなくもない感じの男だった。
手を下ろし、レオネを引きずりつつ彼らを仮設ブリーフィングルームへ招待する
全員が腰掛けた所で、現状の説明を行った
・・いや、説明というよりは・・状況を述べただけだが。


「なるほど・・我々も不思議でなりません、何故あなた方がここに呼ばれたのか・・」
「ラスヴァイユ駐留隊の戦力はSG-8が19機にSG-10が3機・・最新鋭機もあるワケだし、実績もあるし・・」
「とてもわたしたちが・・・呼ばれるような・・・むにゃ・・・」
「呼ばれるような穴はないハズなんだけど・・」


レオネをこづきつつ、私が続ける
・・やはりその目的に関しては、彼らもまた小首をかしげるばかりだった。


「まぁ、無事任務を終えれば良いだけでしょう・・それから上に聞くなりなんなりすれば。」
「そうですね・・・」


下っ端同士で議論しても仕方がない。
私は話を切ると、またレオネを引きずって部屋に戻った


「・・・・・」


シスレー二佐達は、目的云々よりもレオネの存在が気になってしょうがないようだった。


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