第一部外路-03




夜空に浮遊する20m前後のギア・・・
外で警戒していたS.Gが投光器を投げかける
ロストテクノロジィである「エンジン」を奪ったそれは、ドーム状の変わった頭部を持ち、真っ黒で、まさに見たこともないギアだった。

「くっ・・・」



「あら・・ゲイルさん?」
「げ、ゲイル!!」
「ゲイル一尉!!」


レオネだけは周囲を見回していたが、私達は上を見上げていた
ゲイルは「エンジン」にくっついたまま、はるか上空にぶら下がっている・・


「ラルフ!グラスバード出して!!さっさと奪還してついでにゲイル救出してきなさいッ!!」
「りょ・・了解ッ!」


突っ走るラルフに続き、私とレオネも走る・・


###########################


外に出たのと、「エンジン」にしがみついていたゲイルが落ちるのはほぼ同時だった


・・あいつ!


「あ・・」


レオネが呆けたような声でうめいた瞬間・・
・・ライトがよく映える「白い影」が滑り込むようにして、彼を受け止めた


「隊長!!り、り・・リベリオンがっ!?」
「まぁた誰も乗ってないのに動きやがったぞ!?」


整備班の連中が慌てて走ってくる
・・ゲイルもろともどさくさ紛れにウチへ配備した機体だけど、アレも何かの実験機だったらしい。
こうして、時折「意識」を持ったかのような「行動」をする事がある
・・AIも制御系のマスターCPUも積んでいないというのに・・


「ゲイル!」
『俺は無事だ・・しかし、またこいつは勝手に・・』


しかして、ゲイルと共にあるという事だけは確かであり、彼のために動いているらしい事は理解できた


『このまま「エンジン」を奪還する!』


ゲイルが乗り込んだリベリオンは水を得た魚のように活き活きとしている・・そう見えた
数本の爪を展開する特殊なクロー・アームを飛ばし、機動力を武器に空中戦を挑む


「リィズ一佐!!」
「シスレー二佐、SG-8を2機VIPの護衛に回して!あとは「エンジン」奪還を最優先!」
「了解!」


・・さすが、策の組み立てが手早い・・!


シスレーは小さくリィズを賞賛し、彼女が言うその通りに指示を自分の隊に伝えた


「では一佐!自分も出撃します!」
「了解、速攻ケリつけましょう!」


SG-8部隊がマシンガンの砲火を放つ・・
リベリオンはその合間をかいくぐり、「エンジン」を持った敵の腕を狙う!
ワイヤーでつながれたクロー・アームが飛び交うが、もう少しの所でかわされてしまう
・・・やがて、逸れた一発が頭部に命中した・・
機体が動きを止める・・


『警察も情けねェなぁ・・・』
『貴様ッ!?』
『殴るってのは・・・』


ゲイルがそこから後を聞く事もなく、リベリオンの機体は天地を逆転させるようなすさまじい衝撃と共に大きく吹き飛んでいた
敵機体は「エンジン」を腹部に格納し、何かをしたらしい。


『一尉!!』


一足遅れて発進したラルフのグラス・バードがそれを受け止め、もろとも落下した


『痛ッ・・・・・てェ~・・・・・』
『不覚をとった・・』


「エンジン」を取り込んだ機体は周囲に「歪み」を纏っていた
・・見たところ、元々あの「エンジン」を取り込む前提で作られていたようだ・・
そして空間の「歪み」はあの機体が重力制御を行っているという意味であり・・
SG-8、10の対空射撃が、突如として奇妙な軌道を描き始めた


「隊長!アレは電磁フィールドですか!?」
『違う・・「空間が歪んで」いるんだ』
『ぐあっ!?』


軌道を反らされたマシンガンの30mm弾は、今度は撃った側であるS.G-8らに襲いかかった
敵は空中を漂う弾丸を加速させ、滅茶苦茶に降り注がせている


『防御態勢とりつつ後退!避難はどうなっているんだ!?』
『安全圏への避難は完了しました!』
「安全圏ってのは何kmよ」
『は・・?・・・に、2kmでありますが・・』


リィズはにやり、と笑って言った


「20kmは離れてなさい、安全に余生を送りたいならね・・・」


空を飛び交う弾丸の雨と、それをかいくぐり攻撃しようとするグラス・バード&リベリオン・・
・・リィズはなんとなしに、今回の目的が理解できたらしい


・・実験小隊は実験小隊って事ね・・!誰だか知らないけど了解したわよっ!・・

腕時計型の通信モニターに叫ぶ


「バート、グランデ・スパイラルをカタパルト射出付きで最速投下して。」
『は!・・・え?投下・・・??』
「そうよ、手順云々は省略していいからさっさとする!さぁ!」
『はっ!!りょ、了解でありますっ!!』


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『ラルフ君、無駄弾を撃つな!・・・機銃は味方の被害を増やすだけだ!』
『くそっ!エネルギー切れがないのかこいつはっ!!』


空中戦を行う二機・・
敵は攻撃を跳ね返しはするものの、自分から攻撃してくる事はない
しかし・・バリアだの何だのを使っているとすれば・・これだけの事をしているのだ、とっくにエネルギー切れが来て良いハズだ。


『っ?!』


嫌な予感を感じて、その場を避けるラルフ
・・その数秒前までいた位置を、大型の大気圏突入カプセルが超高速で通り過ぎていった


『あれは・・・』
『リィズ、まさか・・』

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G-H/SGX-02「グランデ・スパイラル」・・のコクピットに座って、私は一呼吸ついた
大気圏突入カプセルごと地表に数十メートルめりこんだが、全長20mの巨体は何の問題もなく稼働した


『ラルフ!』
『はい!?』
『相手が何でもありの時にはどうする!?』
『ええ!?』
『時間切れ!・・・答えは・・・』


背部ブースターを用いてスパイラルを飛び立たせつつ、私は手元のコンソールを操作していた
・・・そして、正面に出てきた大型のボタンを・・・


『こっちも「何でもあり」よッ!!』


勢いよく、「ぶん殴った」



・・思えば、本来これを使うべき状況だったのはあの「空白の10日間」だったのだと思う
SGX-01「グラス・バード」とSGX-02「グランデ・スパイラル」・・お互いの動力を補填して動く究極の切り札
・・聞こえはいいが、要するに不確定要素の集合体・・


・・・G-H/SGXX「ガン・ゲリュオン」・・・


全長40メートルの巨体が、燦然と輝いた


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