番外-1


毎日、部活をスルーして自宅に直行する
毎日、どこで誰を相手にしようとも自分のスタンスを貫く



俺は自由に生きている。




「スオウ殿、なにとぞこの世界をッ!!」
「スオウ殿ぉぉぉ!!!」
「離せ村人AB!俺はさっさと帰って寝るんだよッ!!つぅか死ね!散れ!」


・・自由に・・



「スオウどのぉぉぉぉぉ!!!」
「暑苦しいィィィィィんだよォォォォォォ!!!!!」


###############################

・・帰りがけに中古ショップでゲームを買った、安い奴だ
今時ROMカセットなんぞ遊んでる俺は相当マニアックな奴かもしれん、自覚している。

数々のゲーム雑誌をかじっても見たことがないソフト・・俗に言う改造ROMか、それとも誰かの作った同人か
何でもいいから電源を入れてみる


###############################


結果、一瞬にして俺は異世界にいた
ゲーム過ぎるだろ、この展開。

俺が生きている西暦2025年、街では怪物騒ぎがどうのと言っているご時世だが・・こんな現象の事例はない
東京23区の街並みは消え、代わりに中世ヨーロッパ的な風景が広がっている
・・とりあえず街の中だったのは救いか。

俺が降ってくる一部始終を見ていた村人ABとその他大勢曰く

「あなたこそ救世主に違いない」
「世界を救う勇者ー!」

だとか


ふざけんな。


「勇者に頼りすぎなんだよ有象無象の村人共が、雑魚でも束になりゃ魔王くらい討ち取れるだろ、突っ込め鉄砲玉。」
「いや、魔王とかそういうのとはちょっと違・・・っていうか鉄砲玉は酷くないですか!?」
「そーいうのも散りざまは結構立派だぞ?、花火でも可だ。さぁ突っ込め七尺玉。」
「だから突っ込む前提ではなくて・・この世界は今・・ってスオウ殿ォォォォーゥ!?」


・・言い忘れてた。

俺の名前は周防要(すおう・かなめ)だ。血液型とかのプロフィールは面倒なんで後で設定でも見てくれ。あんだろ、そのくらい。



自己紹介も済んだし、俺は帰るぞ。



「だから待ってくだされスオウ殿ぉぉぉぉぉ~!!!!!」
「しつこい!待たない!アホか三尺玉!!」
「ですから花火ではありませんっ!!」



・・いや、マジ帰せよ。





・・つづく・・

##########################################################


02

「機甲界~ジィ・グランデ~」
大地と金属と大空と、自然に様々なものが存在する世界
神々の戦いが終わりし日に、その一人が使っていた巨大な「盾」を大地に変え・・その土壌に作られた世界
・・テーブル状の大地故に、世界の「端」が存在する世界

人々は国家を作り、手を取り合い、何事もなく平和に暮らしていたが・・やがて諍いは生まれる
戦争に明け暮れる国、崩壊する国、中立を貫き通す国・・
様々な国家の思惑が交錯する中で、世界は突如として終わりを迎えた


文字通り「終わり」なのだ。何もない「無」の状態が訪れたのだ。
人々は「無」の何もない空間に閉じこめられ、死んだように眠った


・・次に目が覚めた時、彼らは以前と変わらぬ場所に立っていた


そう、この世界は確かに一度消滅し・・・・・何らかの要因で再び、形を取り戻したのだ。

だが、それは本当に一時的・・不安定なもので、世界そのものがまたもや「無」へ還ろうとしている
それに気づいたのはほんの一握り・・・



「というワケで召喚術を使い異世界より勇者様をお呼びしたわけです。・・おわかりいただけましたか?」
「わかんねぇ、さっさと帰せ」
「・・・いやあの、せめて聞くだけ聞いて・・・」
「小学生じゃねーんだ、聞いたし理解くらいすらぁ。・・・だからさっさと帰せ」
「こ、この世界を救ってはもらえぬのですかぁ!?」
「だから召喚したら何でもつえェとかすげー能力があるとか期待すんな!少しは見た目で判断しろ!疑え!制服を怪しめ!」


しょぼくれる村人AB(と、その他大勢)


「で、ですが召喚術は確かに成功していまして・・」
「失敗だろ、俺はただの学生だ。」
「・・目的に応じた「その筋のプロ」が現れるハズなのですが・・」
「・・・世界を救うプロ、ねぇ?・・・壮大なファンタジーRPGは好きだけどさー、俺現実嫌いなんだよね。ウザいのばっか。」


微妙にヒッキー気味な生活実態をさらしつつ、俺は答える


「つまり現実の世界を救うってのは無理無理、あきらめなって。で、ウチに帰せ。」
「そぉんなぁ・・・・」


まぁ、こういう場合って元に戻れるのは魔王倒したりゲームの目的を達成しなきゃならんのが定石・・
正直俺はやる気でいるワケだが、反応がいちいち面白いんで楽しんでいる。



・・が、いい加減飽きた。


「さて、武器屋はどこだ?防具屋は?王様ンとこ行ってマップもらってくりゃ良いのか?旅の準備さっさとしろィ」
「へ?」



全員が面食らったような顔をしていた。






・・つづく・・

##########################################################

03

バルダール王国・・辺境の名も無き村
その名も無き村の名も無き宿に俺はいる。

昨日の晩に一通りの国名は覚えたし村やら町の場所も把握した
自慢じゃないがカンは動物並、冒険には向いていると自負する


「よーく寝たー・・・さて、メールチェックをs・・・」


・・パソコンは2025年に置いてきている
・・唯一持っていたポータブルデバイスは圏外、どことつながるワケもない。


「ちぇ、二度寝すっか」


・・また、布団にこもって数時間。

###############################

「スオウ殿ぉ!!いつまで寝てるんですかぁ!?」
「うっせーな・・・まだ朝だろー・・・」
「いやもう日も上がって・・!!っていうかお昼ですぞ!?」
「黙れ村人Bふぜーが、勇者に舐めた口聞くと魔王と共に世界滅ぼすぞタコ」
「・・・・・・・・」


しょうがないから起きてやった。


###############################


「とりあえず訂正しとくぞ、俺の事スオウって呼ぶな、名前の方が気に入ってんだわかったか大ボケ村の大ボケ共はーっはっはっ。」
「・・・は、はぁ・・・・・・カナメ殿・・」
「さて、装備屋はどこだ、さっさと案内しろ村人A」
「・・いい加減村人ABとその他大勢という呼称は改めていただけませぬか?一応ジョンとかシーザーとか名前もありますしー・・」
「却下、最初の村で重要なのはせいぜい宿屋の親父と最初に持ってない装備(主に防具)を売ってる店とセーブ屋と決まってんだよ」


・・そうやってスルーし、さっさと装備品を選ぶ。


「ふーん、RPGRPGした世界観の割にゃ近代的なデザインだな?」

・・なんつーか、SFとかそこら辺に出そうなイメージのものもある。
銃とかもあるんだな、弓よりゃマシか。

・・まずは防具を。


「コレにすらぁ」
「・・・・・・は?」


俺が持った服を見て何やら首をかしげる村人A。


「なんだよ、防御力低いのか?それともセンス悪いのか?前者なら変えるが後者ならお前を盾にして冒険すんぞ雑魚。」
「いえ・・それは女性ものの装備品ですぞ・・?」


俺が持っているのはヒラヒラしたいかにもっぽい給仕服だ。


「男性が着るなら装甲付のベストかレザー系の方 がぶらふぁっ!?


村人Aの顎を俺のアッパーが華麗に砕いた


「お前・・・っつーか外のも含めてお前ら・・・まさか・・・」
「ひ、ひぃぃ!?」
「俺が男だと思ってたんじゃなかろうなァァァ・・・・!?」



・・改めて俺は周防要、♀。中学サボりがちな14才。




「口調で判断すんな!フィールド画面のドットじゃねーんだぞ!?ステータス画面で全身見て確認しろボケ!俺は女だッ!!」



・・というワケで結局装備はこれで良いんだ、うん。
武器は・・ま、いいや。持てるだけ持ってく事にする。



やるからには楽しもう、とことんな。




・・つづく・・

##########################################################

04



名も無き村を一人発ち、やってきたのは城下町
途中でスライムの一匹にもあたらなかった所をみるとファンタジーなのは世界観だけらしい。


「つまんねー」


経験値稼ぎをちょっとだけ楽しみにしてたんだがなー。

#############################


「おお、お待ちしておりましたぞカナメ殿」
「なんでてめーがここにいる、村人A。」


周囲がにわかにざわついている
・・どうやら俺が着くまでにあっちこっちでしゃべったようだな、こいつ。


「人の話を聞かずに行かれるからです・・せっかく車でお送りしようとるぶぇっ!?」
「そんな事ァどーでもいい、さっさと城でも何でも案内しろ雑魚A。」
「ひどい、雑魚はあんまりだぁ!」
「やかましい、往来でわめくな弾避けA」


黙らせて、王城へとたどり着く

#############################

「・・貴方がこの世界を救ってくださる勇者様ですか?」
「会うなりベタな台詞吐いてんじゃねェよ、出すモン出して目的教えろイベントキャラが。」
「・・・・・・・・・」


フラつく王様


「・・し、失礼・・ちょっと立ちくらみが・・」
「ゆ、勇者様・・・少々お待ちください」

あからさまに白髪の大臣が王様に耳打ちしている

(王様、こんな柄の悪いハウスキーパーだかメイドだかわからん衣装の男が勇者であるはずがッ・・)
(何を言う、あの村は代々伝わる救世主の現れたらしい土地・・それに夢のお告げに間違いがあるはずが・・)
「こそこそ喋ってねーでさっさと決めろよ。」

いささか納得のいかない様子だが、二人は無理のある笑顔のまま俺を地下へ招待した


#############################

「世界は確かに一度消滅しました、それがよみがえったのは・・何か理由があるはずなのです。」
「ふーん」
「その理由が明らかになれば、きっと再び消滅・・という事態は免れるでしょう」
「へー」
「だから勇者様にはそれまでに世界のどこかにある「理由」を見つけ、危機からお救いいただきたいのです!」
「あいあい。」
「・・・・・聞いてますか、勇者様?」
「要するに世界中あっちこっち行って色々調べてこいってんだろ?戦争なんかしてる暇ねーだろ暇人の極み共が。」

王様、大臣はがくっとうなだれた。


#############################

「・・・SFじゃん。」

地下には巨大な空間があった
整備デッキのような建造物がいくつも建ち並び、一つ一つに100メートル以上はあろう巨大ロボットが立っている

「騎士、これこそ機甲界(このせかい)における最大の戦力・・」
「国を守るも潰すも、全てはこれらの鎧が頼りなのです」
「・・・鎧、ねぇ」


でけーなぁ。

・・で、ロボットみたいに見えるけど中身は空、コアにある魔導機関とかゆーので全身を動かしてるらしい
搭乗者の動きに合わせるようで、どうやら本当に鎧のようだ。


「そして勇者様にはこの騎士こそ相応しいかと。」
「・・・・・・」

ちっせー。

いや、他のと比べたら・・っつー話で、それでも50メートルくらいありそうな奴だが。


「小さいから戦力低下してんじゃねーだろうな?」
「いえ・・どうなのかはさっぱりなのです、何せ一度も動いた事のない騎 士でぴゅらっ!?


手にしたハリセンで大臣をどつく


「な、何をなさいます!?」
「不良品つかませてOKだってかえーこら、いい度胸だなヘタレ共・・」
「違います違います!これは乗り手を選ぶのです!!」
「選ぶ?・・ふーん」


・・そういう設定か。


「どっこらしょ」
「・・って、え?」
「搭乗口が開いた・・」
「どうやら選ばれてるみたいだな、ちゃーんと。」


赤い騎士・・主役メカというよりはライバルで三倍っぽいカラーリングのそれは、自分の意志を持つかのように動いた


「じゃ、もらってくんで。」
「ええ!?あ、いや、待って!まだ出撃準備がッ・・・・・」





この日、バルダール城は修理に向こう3ヶ月はかかろうダメージを受けたという。





・・つづく・・

##########################################################

05

赤い騎士はとんでもなく強かった
・・っつーかチート使ったみてーに頑丈で勝手に動く時もあって、なんかビームみたいなのも撃つし。

コクピットには「DESTROY」とか物騒な事が描いてあった。
・・そのDがやけに強調されてたんで、フィーリングでディーバインと名付けてみた。

「連戦連勝、さすが俺。」
「・・・・・・グゥゥ・・・」


時折唸るんだよな、こいつ。
明らかに意志持ってるよな、こいつ。


まーいいや、そういう方が主人公の相棒っぽいしな


「さて、次はどこで誰と戦うかー・・」

#############################

アーデンバラム帝国
世界の国々を侵略して回っている、まさに悪の帝国という奴らだ。


俺はどこに行っても勇者扱いで、なんか追っかけみたいな集団もできていた。
・・パーティなんて呼ぶのはおこがましい、こんな雑魚共戦力になんぞならん。

「カナメ殿~!がんばってくだごふぁっ!?」

増援の攻撃、すかさず盾にしたデカイ騎士の搭乗者はあの村人Aだ。
しつけーんだよな、こいつも
騎士なんかどこでパクって来たんだか。


「宣言通り盾には使わせてもらうぞ雑魚A・・あれ、弾避けAだっけ」
「・・・・・」
「ちっ、気絶したか」


まぁ遠慮無く盾にさせてもらおう。幸いこいつの騎士、頑丈だしな。

・・と。
その他大勢が、にわかにざわめいた



「・・・!あれは近衛閃団!?」
「このえせんだん?・・・なんだ、そのいかにもっぽいのは」


俺に群がってきていた敵の援軍、その騎士共を次々に薙ぎ払っている青い装甲の騎士。
・・何者だか知らねーが、強ェ。


「ライバルって奴か!」


即・斬りかかってみる。

・・盾一つで受け止める、青い重装甲の騎士。


「貴公も帝国の騎士か、国境付近での戦闘は行わぬという我らセルムラントとの約束、破る気なら容赦なく討たせてもらうぞ?」
「女・・・・・?」
「・・女?」


互いの搭乗者が女性である事が、声で分かった


「嬉しいねぇ、ようやく俺が女だと理解できる奴が現れたか!」
「それは賛辞と受け取って良いのかな?」
「お好きにッ!」


弾く、離れる、また交錯・・
50メートルと600メートル、サイズの差はあれど力の差はそうない。
俺もこいつも、間違いなくどちらの騎士も強い。


「我が名は重蒼・・・グラムレット!貴公は!」
「周防要、あと騎士・ディーバイン!」



日が暮れるのも周囲の状況も気にせず、俺と青い騎士は一対一の決闘を楽しんだ。









・・つづく・・


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: