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1話-前半
「TC小社 ユニオンリバー」
初めまして。
トラブルコンサルタント「ユニオンリバー社」のサポートを務めさせていただいております
私「ネクスト」と申します。
まず・・「ユニオン」は開業して三年のしがない小会社です・・(社員は数人しかおりません)
もとは簡単な運び屋だったのですが、諸事情によりTCへ転職となりました
・・私どもは、いままで引き受けた仕事は完璧にこなしてまいりました。
行方不明の猫探しに始まり、事件被疑者の追跡から暴走ロボットとの格闘・・
果てはテロリストと真っ向から戦ったり・・・
・・そんなのどうやって解決したか・・ですか?
・・・話せば長くなりますよ、それなりに・・(暗)
まぁ気にしないで・・ゆっくりお楽しみの程を・・
・・1 出発前
ロディは時々考える
はたして、TCは本当に自分に向いた仕事なのか・・
もっと向いた仕事も別に一つ二つあるのでは・・
しかしひとたび依頼を受ければ、そんな考えはいつも吹き飛んでしまった
・・何が何でも大暴れ。
オレンジの髪に眼鏡、ラフスタイルに少々目つきの悪い青年、ローディス=スタンフォード
TCを始めて一年の駆け出しである。
・・ロディが「ユニオンリバー社」の社長であることは、結構そこらで知られていた
公共被害は数知れずの「壊し屋」としてだったが・・。
彼が考え事をしている「ここ」は、海王星の衛星港(要するに宇宙船用の空港)
その発着ロビーである
「あいつら・・遅ぇな・・・」
・・ロディはふと「メイ」と「シュウ」の事を気にかけた
二人は彼にとって「仲間」であり「社員」という以上に「不安の種」であった
・・蛇足になるが、ロディは細かい手続きなどが苦手である
いつもの通りシュウに任せているが、ふと気がつけばメイの姿もない
「・・・・」
言いしれぬ不安がつのる
そこへ聞き慣れた声が聞こえてきた
「ロディさーん」
振り返ると夏だというのに青いロングコートの少年がいた
・・この少年がシュウである
「おいシュウ、メイ知らねーか・・・?」
ロディはさりげに聞いてみた
「へ?知りませんけど?」
「そーだよなぁ・・
・・ん?・・だとしたらどこにいったんだ?」
シュウにくっついていったわけではない。
つまり・・
「・・お客様のお呼び出しを申しあげます・・」
アナウンスが聞こえた
「おい、行くぞシュウ。」
「一体どこへ?」
ロディはシュウの方を振り返らず言った
「・・インフォメーションだ。
メイの奴「また」迷子になりやがったんだよ・・」
「あ、なーるほど。」
「わかったらとっとと行こーぜ・・
そろそろ時間になっちまう。」
数分後
「ったくよぉ・・・」
ぶつぶつぼやくロディの後ろに、シュウと大きなリボンをした長い髪の少女「メイ」の姿があった
少々(どころか思いっきり)世間ズレしていて、自分を一人称で「ボク」と呼ぶ変わり者である
シュウはジャンク屋の広告を読みふけっている
メイは意味もなく前髪をいじっていた。
「おいメイ、少しは反省してんのか?」
ロディはじろりとメイを睨む
もっとも見ただけで反省の色が無いことなど、わかっていたが。
「・・・へ?・・ロディ、何か言ったぁ?」
彼女は全然聞いていない。
「勝手にうろつくからこーいうことになんだよ!
いちいちめんどくせーんだから手間かけさせんな!!」
「・・だってぇ・・」
「だっても明後日もねぇっ!!!
・・毎回毎回毎回毎回・・!何百回俺に迎えやらせりゃ気が済むんだっ!!」
「むぅ~・・それひどいよ!!ボク百回も迷ってないもん!!」
「回数の問題じゃねぇっつーのっ!!」
「ボク好きで迷ってんじゃないもん!!」
「だ・か・らぁ・・・!!
勝手にうろつかなきゃいーんじゃねぇかよぉっ!!!!」
ぎゃーぎゃーと二人の言い合いは続く
「・・あの、出発時刻ですよ?
ネス君達が待っているんですから・・」
五分くらい経ってやっとシュウが突っ込みを入れた
「お・・?もうそんな時間か?
・・・・そんじゃ、とっとと行くか。
こんなトコでヒマ食ってるわけにもいかねーしな。」
ロディはそう言うと行ってしまった
「あ・・・待ってよぉーっ!」
しばし拍子抜けしていたメイだったが、すぐにロディの後を追いかけていった
「はぁ・・」
・・やっぱり単純な人達だなぁ・・・・
広告をしまいながら、シュウは小さくため息をついた。
・・2 発進
基本的に経営状況は「良くない」。
資金面はかなりきついのだがその点ユニオンは変わっていて、備品はやたらと充実していた
衛星港のドックに止めてある300メートル級機動戦艦「剣持つイルカ」
三百メートル級の高性能艦がユニオンの専用艦である
ロディ達はその「ブリッジ」に向かっていた。
・・ブリッジに入った三人に声がかかる
「お帰りなさいませ。」
メンバーシートの一つに、小さなロボット・・「ネス」が座っていた。
「早速出発だ、ネス」
「了解、マスター。」
ネスは小さく敬礼し、コンソールのキーを回した
「メインリアクター・・・臨界値確認
通信、攻撃、航行システム異常なし・・」
ロディ達もシートに着く
「・・準備完了っ!」
「ブレードバッシャー、発進っ!!」
ロディが叫ぶ
・・本来叫ぶ必要性など全くないのだが・・
「速度1、出港します」
シュウがシート両脇のレバーを操作する
双胴船の機体が、ゆっくりと前進していく
ドックの巨大なゲートが開くのと同時に、シュウの操作で機体は急加速した
青い光を引きながら、ブレードバッシャーは暗い宇宙の闇へと消えていった
「おい、シードの奴ぁどうした?」
出発から数分後・・
ロディが思い出したように呟いた
「マスター。聞くのが野暮ってモンでしょう
彼なら・・」
ネスの手の上に小さなディスプレイが現れた
どこでも画像を投影することが出来るのも、ロボットならではの芸当である
・・ディスプレイにはサブブリッジの映像が映った・・
「・・かぁ~・・・・くぅ~・・・」
その中でいびきをかいて居眠りしている、水色の生物・・
一応恐竜の「シード」である。(遺伝子操作による特殊生命体)
「・・てめぇはまた寝てんのかぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
「のわっ!?」
キレたロディが怒鳴るのとほぼ同時に、シードがイスからずり落ちた
「・・あたたたたたたぁぁ・・
・・あ、おはようさんな、皆はん。」
「のんきですねぇ、シード君・・」
「は・・?なにがぁ・・?」
シードは画面に映ったロディを見て、やっと気づいた
「・・あ・・ははは・・いや、ワイは別にさぼっとったんとちゃうんや。
ほら・・悪気があったワケやのーてぇ・・」
「・・減給処分な、お前。」
「そ・・そないせっしょーなぁっっ!!
・・お仕事きっちりやっとるやん・・なぁ?」
「勤務中に居眠りたぁ不謹慎じゃねぇかっ!?ええっ!!?」
すっかり脅し口調のロディ
・・どこかの取り立て屋のようだ
「ロディさん。
シードはそうでなくてもいっつも寝てるじゃないですか。」
「あ~シュウっ!ヘタなことゆーんやないっ!!」
「じゃ、いっそ給料ナシで・・」
「・・・静かにしてよぉ・・眠いんだからぁ・・・・」
「メイ、おめーも寝るんじゃない!」
「だって・・」
「だっても明後日もねぇと言ったハズだっ!!
今日という今日はてめえら減給処分にしてやる!!!」
「・・というよりも、ここ二ヶ月くらいまとまった給料とゆーモノを見かけていない気が・・」
シュウの突っ込みに、思わずロディが固まる
「はは・・・・・はははははははは」
「・・おもいっきしごまかしとんなぁ・・」
「ぐう・・・・」
「とにかくお前は居眠りこくんじゃない・・!」
ロディがメイの頭をこづいた(ごまかしの意味もあって)
「い・・いったぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!!」
悲鳴がブリッジに響いた
「なにすんのぉ・・・ボク何もしてないじゃない・・・」
「これで目も覚めただろ」
「・・・ふぇぇぇ・・・・」
彼女は半泣きで、じっとロディを睨みつけた
「あ。」
「どーかしたのか・・?」
メイを睨み返していたロディは、ネスの驚いたような声に振り返る
「レーダーに反応多数・・
・・・小惑星帯です・・!」
「なんでぇ、回避すりゃすむじゃねーか」
「そ・・それがレーダーの誤作動がありましてぇ・・
すでに・・回避不可能領域ですぅ・・」
「亜空間航法は?」
「範囲外です。」
「電磁力場展開して突っこみゃ済むことだ。」
「電磁力場より小惑星の質量が大きすぎますよぅ・・」
「内部に高エネルギー感知・・機雷設置の跡を多数捕捉」
「機雷っつーと・・まだ戦争やってた頃のヤツなんかぁ・・!?」
「なんとか回避は出来るか?」
「リアクターの出力が全然足りませんね。」
「・・って、どーしよーもないのかよぉ!?」
「ご心配なく、回避する方法は二つ存在します・・。
一つは、相転移弾(高額)を惜しまず砲撃で小惑星、電磁機雷を確実に撃破して突っ切る。
もう一つは・・」
「もう一つは・・・なんやの?」
「あきらめて潔く宇宙のチリとなる。」
「方法じゃねーよそりゃぁっ!!」
「ま、可能性です。」
「・・確かにこの速度で突っ込んだら、塵とばらばらでございますねぇ・・」
「落ち着いて評論してらんねーよ!
シード、レールガンスタンバイ!
シュウ、操作を俺にまわせ!
ネスはレーダーよく見ておけ!!
メイ・・・!」
そこまで言って彼は台詞に詰まった
「・・おめーは寝るなっつーのがわかんねぇかっ!!!」
「痛っ!!!」
・・そんなこんなで大ボケかましている間に、巨大な岩塊が流れてくるのが確認され始めた
「おいおいおいおいおいおいっ!!
どこが「小」惑星だ!!
でけぇのばっかじゃねぇか!!」
さながら、「要塞」が点在しているかのようだ
「小惑星なんてただの名称です。
実際は二十メートルから一キロを超える大きさの岩塊がかなり高密度の集団で・・・」
「・・そんなこたぁどーでもいーっての!!!
・・シードぉっ!砲撃許可!」
「いよぅしっ!思いっきりぶっ放すでぇぇっ!!!」
機体の前部が上下に解放された
シードのコンソール操作で、弾丸が装填される
「ぱーっと砕けたれ!!」
そう叫んでトリガーを引く・・
同時に黒い弾丸が前部の電磁化されたレール上を滑り、飛び立った
着弾と同時に爆発し、小惑星に大穴を穿つ
「・・一発約三十万と換算して・・
一発・・二発・・・三発目・・・」
「数えんなシュウ!!」
ロディは大振りに繰艦をしつつ突っ込みを入れる
「ああああ・・・・
どんどん経費が消えてゆくぅぅぅ・・・・・(泣)」
「嘆くのはあとだ!レーダーしっかり見てるんだろうな・・!?」
「わかってますよ・・・・ん・・・!?
ぜ・・!前方に・・・!!」
「前方に何だ!?」
「前方に大型岩塊、直径四十キロ四方・・・・・!!」
「よんじゅ・・・・う!?」
「すまんロディはん、弾丸使い切ってしもたぁ!」
「最悪だぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」
視界にどんどん迫ってくる巨大な小惑星・・
ロディの無茶な操舵で小惑星をかわし真っ向からつき進むブレードバッシャー
「・・・こうなったら・・」
「何かいい策でも・・!?」
ネスが期待して声を上げる
「ロディさん・・まさか・・」
シュウはその考えをすぐに読んだ
「電磁力場最大出力、さらにリアクター最大出力であの岩塊に突撃!
そのままつっきる!!」
「む・・無茶ですよマスターっ!!」
「やってみなけりゃわかんねーっての!!」
「・・・やってみて砕け散るか、避けきれなくて砕け散るか・・・」
「物騒なことぬかすなっ!!」
「ワイ・・まだ死にとうない・・・・!!」
「どいつもこいつも・・・!
・・もういい俺が決めた!このまま突っ切るぜぇぇぇぇ!!」
そう言うとロディは、操作スロットルをまっすぐ高速前進させる
ブースターを最大出力でふかしながら、ブレードバッシャーは真っ向から岩塊へ突っ込んでいった。
・・3 証拠
「・・・・なぁ、ネスはん」
「・・・・なんですか?」
「・・・・よう生きとると思わんか、ワイら・・」
「・・ええ、奇跡に近かったですもんね・・」
「僕の改造がいきなり役に立つとは思わなかったなぁ。」
シュウが二人の横で得意げにしている
「ああ。確かに助かったよ・・
だけどなぁぁぁぁぁ!!!
誰が俺の船を改造していいと言った!!!
しかも相転移力場(高出力バリア)なんて高価なモン、どうやって手に入れたんだよっ!!」
「ああ。あれなら僕が作ったんですよ。」
「・・・作ったぁ・・?」
「ジャンクパーツとか拾ってきて、正規の部品と組み合わせて・・」
「・・・・それじゃぁ・・かまわねぇけどよぉ・・」
「・・って、えーのかいな・・?」
知らないうちに納得しているロディ
「しかしまぁ、なんだかぱっとしない衛星港だな・・」
ブレードバッシャーが到着したのは工業衛星「アルト」
観光地とはかけ離れた場所であり、衛星港も堅苦しい雰囲気がどことなくあった
「今回の依頼、復唱します。
EXAF社の管理下にある衛星、「アルト」の「裏取引調査、及びその証拠確保」・・
なおその際、被害は最小限に・・とのことですね。」
「おい・・被害・・?
俺達ゃそこまで信用されてねーのかぁ・・?」
「みたいですね。
いまだに「壊し屋」なんて呼ばれてるくらいですし・・」
しかしその腕は確かで、遂行率だけならどこよりも高い
・・リスクもそれ相応に高いのだが・・
一発賭けのつもりで依頼してくる依頼主も多い
「調査なんて細い仕事、なんで引き受けちまったんだよ・・・」
「む・・!」
ネスがくるりとこちらを向き、そして怒鳴りだした
「・・いーですかねぇマスタァ!?
ユニオン・リバーはこの上ない経営難なんですよ?・・つまり、「お金がない」。
稼げればこのさい何でもいいんです!とりあえず稼いでおかないと後がないんですぅっ!!」
「・・了解了解。」
ロディは仕方なしに納得した
「で、ボク達何するの?」
「とにもかくにも取引の証拠を探し出そう。
そのためには衛星の中心部へ侵入する。」
社長であるハズのロディは何もせずシュウが指揮をとっている
「どないやって行くのん・・?」
「ロディさんと僕が内部へ排気口から侵入(定番)
シードが後方援護、ネス君はセキュリティの解除、メイちゃんは待機。」
「え~・・ボクまた待ってるのぉ~・・・・」
「いざとなったらギアが必要になるからね。」
・・「ギア」は十メートル程度の汎用人型ロボット
ブレードバッシャーの内部には二体搭載されている(ロディ用「ゼファー」とメイ用「ドーマ」)
メイはほとんどそれで待機しているのが任務だった
「あぁぁぁ~ん!そんなのヒマだよぉぉぉ~っ!!」
「ガタガタぬかすなっ!!すぐ終わらせてくるから待ってろ!!」
「・・・・むぅう~っ・・・!!」
彼女はすっかりふてくされてしまった
「そんじゃ・・始めっか!!」
・・が、そんなことはお構いなしである。
・・一時間後
ロディとシュウは順調に(というかあっさりと)侵入を終え、薄暗い通路を進んでいた
「こっちでいいんだな・・?」
「いいえ、そっち行くと警備室です
右の赤い看板へ・・」
「・・ったく疲れんなぁ・・」
ロディは銃を構えて進む
後ろからシュウがゆっくりついていく
・・と、
「おい、このドア・・どうやって開けるんだ・・?」
「あれ?・・開かないですか?
・・セキュリティが外されているはずなのに・・
・・ドアが錆びついてる・・?
・・ということはしばらくの間ここは使われていなかった・・?
いや・・そんなわけ・・」
「・・・・・ええーいっ!・・面倒だぁぁっ!!」
どがんっ
ロディは一歩後ずさると同時に、蹴りを思いっきり扉にかました
「なぁっ・・・・・!!??」
がらんがらん・・
でかい音を立ててドアが倒れる
「へっ・・思ったとーり楽勝だぜっ!」
「楽勝だぜっ!じゃないですよマスタァーっ!!
そんなコトしたら見つかっちゃうでしょう!!」
「・・・あ・・」
ロディの悪い癖が出た
キレると何をしでかすか知れたものではない性格
しかも細かいことでよくキレるからたちが悪い(要するに短気)
「しまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
赤いランプが点灯する
けたたましい警報機の音とともに、何人かの声が響いてくる
近づいてくる足音・・
「どうしますか!?」
「・・しゃーねえ!野郎ども全員ぶっ倒す!!」
「本気なんですかマスター!?」
「ったりめぇよっ!事の始末くらい自分でつけらぁっ!!」
「周辺被害の話をしてるんですよ!わたくしはぁっ!!!!」
「・・俺の心配は・・?」
「・・いーえ。
あなたのような頑強な人ならこんなの全然どうして大丈夫でしょう?」
「・・へいへい。」
ロディはそう言うと眼鏡をつい、と上げた
「・・じゃ、そろそろ真面目にやりますか。」
・・ロディの目が走ってきた警備員を捉える
無言で銃を向け、素早くトリガーを引く・・
彼の放った銃弾(とはいっても麻酔弾であるが)は的確に警備員をしとめた
・・しかし、続いて何人かがが近づいてくる
「ったく!・・・うっとうしいっ!!」
彼は上着の内側に手を突っ込み、何か丸い形状のモノを取り出し、放り投げた
側面には・・「閃光弾」の文字
どぉ・・・ん
爆音とともに光と煙が辺りを包みこんだ
「爆発!?」
「くそっ・・目が・・」
うろたえる警備員達。
「このぉっ!!どきやがれぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」
ロディがものすごい勢いで迫り、警備員の一人を思いっきり蹴り倒した
「ぶわっ!?」
素早くその警備員の胸ぐら掴んで持ち上げると、まだ目の見えない残りの警備員に向かって・・
「でぇいやぁぁぁぁっっ!!!!」
思いっきり投げた
「うわぁぁぁぁっっ!!!???」
どがっ・・
「邪魔なんだよおおおおっ!!!!!!」
ごっ・・・・
・・シュウが呆然と見ている中、警備員はあっという間に片づけられてしまった(一方的に)
「・・・手間かけさせやがって」
ロディがぼやく
「・・・派手にやりましたね・・」
シュウは見回してぼそりと呟いた
そこら中にやられた連中がばたばたと倒れている
「さて、さっさと中に行ってこよーぜ、
次がいつ来るかわかんねーからな」
「それも・・そうですね」
二人はその場を早々に走り去った
一方・・
アルトの警備室では、慌ただしい状況になっていた
侵入者を捕らえに行った警備員が全滅(生きてはいるが)
しかもその二人が監視カメラのない・・「中心部」へと侵入した。
ほとんどの人員が何があるかを知らされていないし、ましてや入ったこともない空間である
どうしたらいいものかと誰もが慌てふためいていた
「何をしている」
「・・主任・・」
急に響いた声に、一人の警備員が声を漏らした
・・アルト警備部門主任、ゲイル。
五百人の警備員を統括するリーダーである
「侵入者は片づいたんだろう?それなら何を慌てる必要がある・・?」
「それが・・」
ゲイルの表情が一変する
「・・・中心部に侵入された・・?」
「す・・すみません!」
「謝って済む問題か・・
・・無能にも程があるぞ」
彼は静かにそう言うと、警備室を後にした
・・4 逃走
衛星アルト中心部
よほどのお偉いさんでもなければ入れないレベルの空間
多分依頼にあった裏取引もここに関係あるんだろう・・
彼らはそこを進んでいき、やがて広く、そしてやたら深い縦穴に突き当たった
「なんだ・・こりゃぁ・・」
その壁という壁には無数の横穴が開き、その中にいくつものコンテナが格納してあった
「多分、裏取引の品でしょう・・麻薬とか密輸兵器とかですよ、多分。
・・・地図ではこの下にアルトのマスコン(マスターコンピューター)があるようです。」
「で、どうやって降りろと?」
「普通なら昇降用のエレベーターくらいあるはずなんですが?」
二人はぐるり周りを見渡す・・
「そんなもんねーぜ?」
「ですよね・・
どうすればいいんだろう・・・」
とりあえず縦穴を横切ってかかっている作業用通路に、二人は歩き出した
「早くしないとまた奴らが追ってくるんじゃねーのか・・?」
「その通りだ。」
二人は一気に後ろを振り返った
二人の来たドアの前に、スーツを着た一人の男が立っている
さっきの警備員達とは、明らかに風格が違う
「・・誰だ、てめー」
「普通自分から名乗るものだろう?・・
不法侵入者がここまで暴れてどうなるか・・わかるな?」
ゲイルは、静かに銃を取り出した
「あっそ。」
彼はロディの反応に少し驚いた
脅しをかけるつもりであったが、相手は予測と正反対の反応をした
「死にたいのか?」
「はぁ?誰がだよ?」
「君の事だ」
「・・そーかい・・だが銃のウデには自信あるんでね。
俺はお前さんが撃つより早く撃ち返してやる余裕がある。」
「ロディさん、相手より早いと撃ち返したのではなく一方的に撃った事になりますが・・?」
「細かいこと気にすんな!いーとこなんだから突っ込むなよ!!!」
・・・こいつら・・新手の漫才師か?・・
そんな間抜けな考えも思わず頭に浮かんだ
「なるほど。
では・・そっちのボーヤはどうかな?」
ぱん
ゲイルの放った弾丸は、ロディと言い合っていたシュウの頭に直撃した
「あ・・・」
自分に飛んできた弾ならともかく、シュウに飛んできた弾丸には反応が遅れた
ばたり、と倒れるシュウ
「シュウ!おい!・・・」
「仲間のことはどうでもいいんだな」
ぷち
「人を自己中みてぇに言いやがって・・!」
ロディは自分の銃「レイノス」を振り上げてトリガーを引いた
「・・・!?」
銃声に続いてゲイルの身体が突然崩れ落ちる
・・なに・・・!?・・
(ちなみにロディのクイックドロースピードは、0,7秒)
「どーでぇ・・思い知ったか!・・・・」
ロディは誇らしげにレイノスをしまった
一応急所を外したが、相手には五発の銃弾(麻酔弾)が撃ち込まれている
意識があっても動けはしないだろう。
「・・シュウ・・いいヤツだったぜ、おめーは・・
ホント話は長いしわかりにくいし、やる気はないしワケわかんなかったけどな・・」
「・・あの・・あいにくですけどまだ生きてます・・」
「は?」
シュウはゆっくりと上体を起こした
「お前・・」
彼の頭のバイザーにヒビが入っている
しかも壊れたわけではなく、ただヒビが入っているだけ
「頑丈に作った甲斐がありました。」
「おまえなぁ・・・脅かすんじゃねーよ・・」
「いえ、僕としては脅かすつもりはありませんが・・
・・しかし・・随分あっけない人でしたね。」
「ああ・・おそらく今までの中で一番味のないヤツだったな・・(笑)
ってそれは置いといて・・下に降りる方法を探さねーと」
そう言ったか言わないか・・
警備員の大群が、さっきの反対側から姿を現した
雪崩のように押し寄せてくる
「面倒だな・・相手にしてらんねぇ!!」
「逃げるんですね?」
「当然だろ!」
・・そう言うと二人はすかさず来た方向へ逆走を開始した
「シード、出口まで行ったら援護頼む!」
「了解やぁっ!!」
ロディ達はとにかく出口を目指していた
・・こうなったら「逃げるが勝ち」だな・・
・・後でギアなりなんなり持ち込んで暴れればいいだろ・・
そういう考えである
「ったく・・!
証拠探しどころじゃねぇよ・・・・!」
「いえ。
実を言うとデータはもう回収しました。」
「・・おいおいおいおい!?いつの間にやったんだ!?」
「ええ、さっきのどさくさに紛れて壁の通信ケーブルに仲介機を設置しておいたんです。
これでこの工場の隠しファイルから給料明細まで全部筒抜けです。」
「相変わらずやることが神業的だなぁ・・お前」
シュウは忙しく携帯端末を操作している
「・・・なぁ、ちなみにここの所員・・給料ってどのくらいだ?」
「一人あたりざっと・・」
シュウの言った金額は、それこそユニオンの数倍であった
「・・・あ~・・聞くんじゃなかったぜ・・(泣)」
・・俺らって稼いでねぇなぁ・・
「とと・・とにかく任務完了なんだ!
だったら逃げに専念すりゃいーんだな!!」
そんなこんなで二人は先を目指していった
「右だな!?」
「いえ、左に・・」
「いーや確か右だったハズだ!!」
「ちょっと・・!?」
シュウの静止も聞かず突っ走るロディ
「大丈夫だ、俺の勘に間違いは・・・」
軽口はそこまで。
曲がり角を曲がった瞬間・・警備員とばったりはち合わせした
それも、洒落にならない数の・・
「だから間違ってるって言ったのに!!」
「んなこたぁかまわねぇ!強行突破だぁっ!!」
拳銃「レイノス」にまたも上着から取り出した大型のユニットを取り付けるロディ
・・「ロケットランチャー・ユニット」
・・・この上着って、一体どうやってこれだけの装備が入ってるんだろう・・・・
シュウの頭にそんな言葉がよぎった
・・素早くそれをレイノスに取り付けるロディ
「てめぇら邪魔なんだよ!!」
彼はロケットランチャーと化したレイノスを担ぎ、トリガーを引いた。
一方・・
「・・はぁ・・
・・もう・・・あれから三十分経ったんかぁ~・・
おっそいなぁ、ロディはん・・」
シードはちょっと不安を感じていた
もしかして・・まさかと思うけんども・・・どっかでやられてもーたんやないやろなぁ・・
なんて考えた時だった
どぉ・・・・っ
どこからか爆発音が響いてきた
「・・な・・なんやのぉ?」
ごぅ・・・ん
今度はさらに大きな音
「・・もしや・・」
どごぉぉぉ・・
背筋が寒くなった
音も近づいてくる
「え・・えらいこっちゃぁぁっ!!」
シードは置いてあった自分の武器、ライオットガン二丁をかついで一目散に走り出した・・
が、走り出したかその刹那・・
ずどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん・・
「どぇぇぇぇぇぇっっ!?」
彼は後ろからの爆風に思いっきりあおられた
・・・ん、んなアホなぁ~!!!!・・・
跳ねられるようにシードは煙の中に消えていった
・・その直後、爆発の後から声が聞こえてきた
「ショートカット大成功ってな!」
「カットって言うよりボンバーしちゃってますけども・・」
「どーでもいいんだよ!
とにかくさっさと逃げるぞ!」
・・被害を出さないって話はやっぱり無理があるな。・・
シュウは心密かに思った
「あれ?そういえばシードは・・?」
「・・・勢い余って吹っ飛ばしちまったみてーだ・・」
ロディは一点を指さした
散らばったライオットガンと、のびているシードの姿
完璧に目を回している
「一体何をやってるんですか!?
あれほど被害を出さないようにって・・!」
腕時計に怒鳴るネスが映った
「しょーがねーだろーがっ!うっとーしいのと細かいのは嫌いなんだよ!!」
走りながら答える
「後ろから追ってきますよ」
「気にするな!」
「したほうがいいと思うんですが・・?」
「・・・」
ロディは立ち止まってまたしてもランチャーを構えた
無言のまま四、五発の弾丸を放つ
・・着弾と同時に爆発が連続して巻き起こる
・・・・辺りは一瞬にして凄まじい惨状となった
「・・これでいーんだろ?」
「・・でしょう。」
「・・ま・・結果オーライだな・・」
「いいわけないですよ!」
「いいんだよっ!!!!(怒)」
「・・・・・あああ・・もう・・・(泣)
・・・・・わかりましたよ・・・・わかりましたから早く戻ってきてください・・(泣の二乗)」
ネスのそう言った声が、二人に聞こえたかどうかは定かではない。
だが後ではっきりした事が一つ・・
ロディは逃走の間、合計二十三回もロケット弾をブッ放したということだ。
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