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1話-後半
・・5 撤退
「よう!」
「よう!じゃありませんよっ!!」
ロディ、シュウはなんだかんだでようやくネス達の元へ戻ってきた
・・ロディは何ともなかったが、シュウが爆発による破片を頭にくらい、気絶
・・シードを途中で一回落とした
なおかつ彼は二人を背負ってここまで無傷だったのだ
「・・そこらの施設といい、警備員を吹き飛ばしたり、挙げ句の果てにお二人のケガ・・
あなたはほんっとぉーに被害を少なくしようと思っているのですか!?」
「ああ。」
あっさりとした返答。
「・・・・・・・・・・・・(泣)」
「おーし!そんなことよりブレードを出港させるぞ!」
「そんなことじゃぁありませんっっっ!!!(泣の二乗)」
・・十分後
「・・衛星港が閉鎖されている・・?」
「そりゃそうでしょう。あれだけの事をしたんですから。」
「起動準備開始
完了と同時にゲート破壊!
外に出たら亜空間航法(別空間を航行し、時間と距離を短縮するワープ航法)
とにもかくにもここから脱出する!」
「・・あのぉ、ロディさん。」
「お、気がついたかシュウ」
後ろのシートからシュウの声がした
「・・あれだけ大騒ぎ起こせば、セキュリティのガードギアぐらいは出てくると思いますよ?」
「だったら潰す。」
「楽に言いますね、マスター・・」
「準備完了まで時間を稼ぐ!いいな、メイ!お前がドーマで・・」
「・・・・むにゃ」
ぷち
ロディが間髪入れずにまたしてもキレた
「起きろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
モニターに向かって怒鳴り散らす
「・・!?
うわっとぉ・・・痛ぁっ!・・」
メイが慌ててコクピット・シートから落ちた
「・・ロディ、何か用~・・・?」
「仕事だ仕事ぉ!
ヒマならさぼってねーで外の連中片づけてこい!!」
「?・・・・わかったぁ」
寝ぼけているのが気になるが、任せておけば何とかなるだろう
「ギア・ドーマ、射出します。」
シュウの淡々とした台詞の後に、緑色のギアが飛び立った
防壁の隙間から宇宙へ飛び出していった
「これでよし、だな」
「あ・・」
「・・なんだ、どーかしたのかシュウ?」
「・・・武器を装備せずに発進したみたいです」
「な・・なんだとぉーっっっっ!!!!」
「ははは~・・後の祭りですよ、もう。」
・・ネスが何だかテンション低い
この際そんなことはどうでもいいが・・
「ふわぁ・・ぁ。」
やっと出番だというのに、メイは眠そうにしている
さっきまでふてくされて寝ていたのだから当たり前だが。
「あ・・来た来た」
彼女の顔が楽しげな表情に変わった
レーダーに五、六機ほどの影が映る
さっき話にあったガードギア・・勢いよくこちらに迫ってくる
「よぉーし、いっくよぉ~っ!!」
彼女の台詞に合わせ、機体が姿勢制御のスラスターを噴射する
・・ギア・ドーマはシュウの発明品「インターフェイスシステム」を積んでいる
パイロットの思考に反応して動くという単純なもの
・・彼女のような普段から何も考えていないパイロットなら、有効的に使えるわけだ。
「え~と・・・・荷電粒子砲・・発射ぁっ!」
ロディ同様、これまた叫ぶ必要性は全くない。
・・背部にジョイントされた巨大な「有線砲」から発射される荷粒子エネルギー弾。
ドーマの主な武装である
「あれぇ・・?
は・・発射ぁ!・・・・・・・・・・・あれぇぇ?」
ドーマは体勢を取るが、荷電粒子砲が発射されない
「・・え・・・・・???」
モニターを確認した彼女は、やっと気がついた
「・・・・ふぇ・・・・置いて来ちゃった!?
・・・ど、どーしよぉーっ!!」
・・有線砲が影も形もない。
固定された内蔵兵器など全く持ってない。
オプションが無ければ作業用のギアと変わらないのである
「・・メイ!」
ロディからの通信
「ロディ!!・・どうしたらいいのぉーっ!!?」
「武器ならあるじゃねーか。」
「へ?」
「ドーマにゃ腕と足がある!殴って蹴ればなんとかなるっ!」
「そんなの無理だよぉ!(泣)」
「やって出来ないことはない!
俺がいつもやってんじゃねーか!」
「いえいえ、マスターの場合ただ無茶なだけです。
例外ですよ、例外。」
「・・・・ネスぅ・・・?なーんか言ったかぁ・・?」
「いーえ、別に。」
なーんて事をやっている間に、敵は眼前に迫っていた
敵の一機の放ったレーザーが、ドーマの横を通り過ぎる
「ひゃぁっ!?」
・・すでに何機かに取り囲まれてさえいた。
コクピットのメイは・・
「・・・あ~んもうっ!!
やればいーんでしょやればぁっ!!!!」
そう叫ぶと同時にバーニアが火を噴く
急制動をかけ、矢のごとく敵の攻撃をかわしていく緑の機体
敵前に迫るとドーマの鋼鉄の腕がガードギアの頭部にめり込んだ
「この・・このこのこのこのぉっっ!!!」
半分ヤケになったメイの攻撃・・
装甲材がひしゃげる音が何回も響き、やがて相手の頭部が砕けて飛び散った
・・そして
機体はまったく動かなくなった
・・操作系が頭部ごと破壊されてしまったためである
・・素早くその場を引くドーマ
「・・・ふぇ・・ほ、ほんとにやっちゃったぁ・・」
なんとなく感動しているメイ
「俺の言ったとおりだろ?」
得意気なロディ
「・・なんて無茶苦茶な・・・」
唖然とするネス
その間にも調子づいたドーマが敵ギアを一機、二機と沈めていく
「よーし・・次ぃっ!!」
要領さえ分かってしまえば簡単なことだった
「発進準備は出来たか?」
「只今99%・・」
シュウは小さく呟くと、モニターのチェックを開始した
「100%・・システム起動、正常」
「リアクター臨界点
・・準備完了。」
「ブレードバッシャー!全面防壁強行突破ぁっ!!!」
・・当然、叫ぶことに意味はない
「・・じゅーきゅう・・
あ~・・疲れたぁ~・・・」
ドーマは重装甲に高出力リアクターを積んだ小型の機体
機体にダメージなど全くないが、パイロットは揺れたり叩きつけられたり結構しんどい。
「メイ様ご苦労様でした・・もうよろしいですよ。」
「え?でもまだいっぱいいるよぉ・・?」
「あいつら全部相手にする気か!?
そんなもんほっといてとっとと撤退だ撤退っ!!!」
「はーい・・。」
ドーマが接近してきた一機を蹴り飛ばし、後方に迫ったブレードバッシャーへ加速をかける
「・・・ドーマの着艦、格納を確認しました。」
「そんじゃー・・」
ロディが素早くコンソール操作を行った
照準機がモニターに現れ、追跡してくるガードをロックする
「追跡型レーザー一斉射!!」
機体前部のカバーが開き、多数のレンズが姿を現す・・
・・後方に向けて赤い光のラインが数本伸びる
直角に曲がったレーザーは敵機のことごとくを貫いていく
辺りは花火が散ったかのように無数の輝きを放った
「うっしゃぁ!」
ロディが勝ち誇って叫ぶ
だが、ネスが無言で彼の前に一つのディスプレイを表示させた
「・・・あ」
花火が輝いている、その後ろには・・
貫通したり、あるいは狙いを外したレーザーがアルトに着弾し、別な色の花火を輝かせていた
「・・・・ははは」
・・まあ、ちょっとした事故だ事故!・・
そう言おうとしたロディだが、ネスに睨まれてあきらめた
「・・よーし!上出来だなっ!」
「どぉこがですかぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
強引なごまかし。
「・・被害請求・・
ガードギアの破損はともかく、工場施設の修理費用が相当かかりますね。」
「うっ・・・」
「まぁ中央警察機構が立件してくれますし、何とかなる・・・でしょう・・(多分)」
「ふぅ、脅かすなっての・・」
「脅かしじゃありません!!
・・まったく・・後先考えないのは直してもらえないんですか・・・?」
「人間そうそう簡単に変われるモンじゃねーだろ。」
「・・・・人間って・・不便ですねぇ・・・・・・(泣)」
ネスはただひたすら涙した。
だがそもそも、ロディに反省をしろという事が無理な話だ。
「ねぇ~・・早く帰ろ・・・
殴ったせいでドーマのウデぼろぼろになっちゃったし、ボクもう疲れたよぉ~・・・」
格納庫から戻ってきたメイは、ブリッジに入るなり呟いた
「ま、殴り方が悪かったなそりゃ」
「そんなぁ・・・やれって言ったのロディじゃない・・」
「ドーマのマニピュレーターの修理費用を追加・・と。」
「んなこたぁどーでもいいんでぇっ!!
とにかく事務所に帰るぞ!!」
「了解」
「了解しました・・」
「りょーかい・・」
「・・・・(シード)」
返事と同時にロディは手元のレバーを前に倒した
「亜空間航法スタートっ!!」
ブレードバッシャーの前部に空間の歪みが現れた
その歪みに向かって、加速をかけるブレードバッシャー
そして・・
一行はその宙域から姿を消した。
6・・ ユニオン・リバー事務所
それから二日後の地球。
ヨーロッパの南にある国、「セルムラント」
都心の大きな湾沿いに、ロディ達のユニオンリバー社はあった。
(海が見えて見晴らしはとてもいいのだが、いかんせんロディは津波の心配ばかりしている。)
彼らのホームは、二階建てのいまいちパッとしないデザインの事務所である
その日の、四時近くのこと・・
「なぁ、ネス」
「はいはい・・なんでしょう?」
「こう・・・煙草ケースくらいの箱、そこらに置いてなかったか?」
「いえ、見かけませんでしたけど・・?」
「・・そーか」
「なにか大事な物なのですか?」
「ああ、なんてったってレイノスの新型弾倉「長距離爆炎弾」で・・
ちょっと試しに・・と思って三十発ほど買ってきたんでな。」
掃除をしていたネスの手が止まった
「・・・・大量の爆発物をここでなくした?
そう言いたいのですね・・・・・?」
「?・・あ、ああ・・」
「あのですねぇっ!!もし何かのはずみで引火とかしたらどうしますか!?
後悔先に立たず、ですよ!わかってます!?」
「いや、俺は引きずらないタチだから・・」
「そーいうこたぁ関係ないでしょう!!!!
ほらほらいいから探した探したぁ!!!なんとしても見つけだしてもらいますからね!!」
「・・・へいへい」
・・何をそんなに慌ててるんだよ・・変な奴だな・・
ロディはぶつぶつ言いながら自分のデスク周りを探し始めた
ネスはその様子を確認した後、ため息をついて掃除を再開した
・・あの後衛星アルトの不祥事が公になり、実質上EXAF社は営業停止状態に陥っている
シュウの思惑通り、公共機関からの指示ということで被害請求は免除された
(依頼人が中央警察機構の人間であったことが幸いしたとか。)
・・で、今何をしているかというと・・
シュウは地下室にこもり、天職の「発明」に精を出している
メイ、シードは街へ買い出しに行った
ネスは部屋の掃除を行い、そしてロディは・・
「お、こんなトコにあったか・・」
・・一人ヒマ。仕事がなけりゃただの「短気な事なかれ主義者」である。
「ありゃ?バレルが削れてる・・この前新調したばっかなのに・・
・・そろそろ全体をなんとかしなきゃなぁ・・」
ロディは愛銃レイノスのクリーニングをしながら独り言のように呟いている
そして、突然ネスの方を「きっ」と向いた
「なぁネス。こいつの改修費用・・・」
「断固としてダメです。」
ロディの台詞を強制的に断ち切るネス
「経営が苦しい苦しいと言っているのに・・?
やれ、被害請求だ・・
やれ、銃の新調費用だ・・
そんなことしてたら私達はあと一年も持ちません!!
節約です節約!!そんなモノは自力で何とかするものですよ!!」
「・・ダメか・・」
苦笑いを浮かべるロディ
会計担当の言い分とあって、文句も言えない
「まったくもう・・・危機感のない・・!」
同時刻。
シード達は賑やかな街を歩いていた
「え~とB3の記録用紙三つと、切れかかってた胡椒・・
それからシュウに頼まれた電球二つ(用途不明)・・で、今日の夕飯の材料がこれ・・」
「これで終了やな・・
ほな、さっさと帰ろうやメイはん」
「うん。」
二人は事務所の方向へ向かっていた・・・
・・だが
「どわぁっっ!?」
シードの後頭部に勢いよく飛んできたボールが直撃した
「いったぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
・・・何さらすねん!こんボケェが!!」
振り返ると、飛んできた方向には何者かの走り去る影が・・
「逃がすかぃ!しっかり詫びてもらわなワイの気は収まらへんで!!」
「あ・・!どこ行くのシードぉ!!」
短気なシードはメイの呼びかけも無視して飛び出していった
「ま、待ってぇ!おいてかないでよぉ~っ!!」
・・数分後、彼らの前には行き止まりの路地があった
「・・・とかゆーといて見失ってもーた・・
・・あ~・・ワイってすっごい無駄なことしとるなぁ・・・・」
がっくりするシード
「ねぇそんなの・・どうでもいいから・・帰ろうよぉ・・」
メイは息を上げながら言う
「・・なんやめっちゃ悔しいわ!・・
ま・・・割り切って置いとくしかないやろなぁ・・・ははは・・
ほな、いこかメイはん・・」
と・・
「む・・・・なんや、あんたら?」
「・・・」
二人の背後に、いつの間にやら数人の男が立っていた
さしずめ、どこぞのヤクザ系の格好である
・・うわ・・なんやめっちゃやばい気ぃするわぁ・・
シードは冷や汗を流しつつ背中のライオットガンに手を伸ばした
・・なんだろ・・変な人たち。・・
メイの方はきょとんとしている・・危機感すらない。
「!」
相手が動くのとほぼ同時に、シードはライオットガンを構えて撃ち放つ
続けざまにヒットする弾丸・・だが、
・・な・・なんやこいつら!?・・
弾が直撃したにも関わらず、倒れるどころかひるむ気配すらない
驚愕するシード
・・人間型ロボット・・?・・ターミネーターもびっくりやなぁ・・・・・
心の中ではそう考えていたが、とっさに危機感を感じたらしい
「メイはぁぁぁぁぁん!!!走るんや!!逃げるでぇっ!!!」
・・がん
叫んだか否か、頭に強い衝撃が走った
「でっ・・・・・」
倒れ伏すシード
「ふぇ・・シード・・・・!?」
その場に立ちつくすメイ
「・・・・や・・やだやだぁっ!!!」
怯えるメイにゆっくりと近寄ってくるロボット達・・そして・・
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!・・・・・・・・」
7・・ 一対一
「おいおいおいおいおい!?
なんなんだこりゃあ!?」
あれから一時間後のこと
ロディは暇つぶしに見ていたメールのある一文を読んで叫んだ
「・・一体何があったんです?
すっとんきょうな大声出して・・・
・・・どれ・・ちょっと拝借・・」
ネスはロディの横からコンピューターのディスプレイを覗き込んだ
「・・え~・・
ローディス=スタンフォード様。先日の決着をつけたく存ずる次第。
もし下記指定場所に来られない場合は、社員の命はないものとすべし・・
・・・ほぉ、今時手紙の書き方をよく心得た方ですね。」
「そーいうこっちゃねーっつーの!!」
「じょ・・冗談です冗談。」
「・・なぁ・・「先日」っていつのことだ?・・」
「さあ・・。ですけど社員って一体・・?
私達に刺客でも送ってくるつもりなのでしょうか?」
「おい、よく考えて見ろよ・・
メイとシードの帰りがやけに遅くないか・・?」
「まさか・・」
「そのとーり・・大方あの二人がとっ捕まったんだろ・・」
「一大事じゃないですかそれって!?」
「・・じゃ、行って来るか。
ま、あの二人のことだからまず無事でいるだろーし」
「な・・なな何故そのように落ち着き払っていられるのですかっ!?」
「・・んにゃ、なんとなくなぁ・・(笑)」
「笑ってないで早く出発しましょうよ!!
もしやこの間にもお二人は・・!」
「わーってらい・・いいからお前はシュウを連れてこいよ
・・一足先に行ってるからな!」
「ちょ・・ちょっとぉっマスター!?」
なんだかんだあって十分後
ロディは指定された場所・・・・刑事ドラマによく出るような、港の倉庫にいた
「・・はは・・
よくありそーなシチュエーションだな・・」
独り言がよく響く
・・って、誰もいねーのかよ・・おい・・
ちょっと虚しい。
・・しかし・・一体誰だ・・?
・・最近俺・・何かやらかしたかなぁ・・・・?
一切合切そんなこたぁねぇハズなんだが・・
「マスター!!」
急に腕時計のスイッチが入り、ディスプレイにネスが映った
「・・なんだ、ネス?」
「あなたは一体どこにいるんですか!?」
突然の質問
「・・?どこって・・
そりゃ、指定された倉庫にいるんだが?」
「何を言ってるんです!!
あなたの電波発信源、めっちゃくちゃ所定からずれてますよ!!」
「・・・・・・・・・・・な、なにをぅ?」
ロディはもう一度思い起こしてみた
「・・港の・・第三倉庫・・」
「ち・が・い・ま・すぅ!!!!
十三ですよ!「じゅうさん」!!!」
「・・・・・・・しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
大急ぎで走り出すロディ
「何をやってるんでしょうね・・ホントに・・」
ネスが呟いたのは、ロディのことだけではない
さっきから地下室にこもりっきりで返事のない、シュウに対してでもあった。
「随分と遅かったな、ローディス=スタンフォード君?」
「・・わりぃが、こっちにも都合ってモノがあるんだよ!!」
そういうロディの前には・・
アルトで会ったあの男、ゲイルの姿があった
「誰かと思えばてめーかよ・・
何でぇ、人質なんて姑息で古い手段使いやがって!!」
「EXAF社がどうなったかは知っているだろう?」
「・・・そりゃぁな。」
「あの時は油断したが、今度はそうはいかない・・勝負だ!」
そう言ってゲイルは銃を抜き、撃ってきた
「うわっ!?て、てめぇ!不意打ちは卑怯じゃねぇか!!」
ロディは素早くレイノスを引き抜き、応戦する
しかし相手は避ける様子もなく、こちらの弾道を堂々と歩いてくる
「な・・・!?」
弾が着弾する寸前、電気が走る、「ぱしっ」という音が響いて銃弾が床に転がった
・・電磁バリアである。
「卑怯で結構、俺は君に仕返しがしたいだけなのでな。
手段はどうであれ、君にさえ勝てればそれでいいと思っている。」
「じゃかぁしいっ!!俺にとっちゃどうでもいいこった!!
てめぇら悪ぃコトしてたんだから、中央警察機構にとっ捕まって当然じゃねーのかよ!!」
「会社を潰した要因は君にある!!」
「るせーっ!!俺はTCだ!!引き受けたらやり遂げなきゃメシの食い上げなんだ!!」
「俺はもう食い上げだよっ!!」
「そーかそりゃぁよかったなぁっ!!!」
銃撃戦がいつのまにやら変な口ゲンカに発展している
「・・それより!メイとシードはどこだ!!」
やっとのことで本題に移った
「・・あの二人か?
近くにいるが、俺の一言ですぐ部下に殺らせることができる」
「ちっ・・・」
物陰に身を潜め、ロディは状況の打開策を探した
・・あの二人をなんとかしねぇと・・
・・対人バリアごとき、破るのはたやすいっつーのによぅ・・
そのころ、シードとメイの二人は・・
「・・・なんや、めっちゃヒマやなぁ」
「ねぇ~そんなことより・・このロープ何とかしてよ・・
・・手ぇ痛いよぉ・・・」
「・・さっきの話からして、ロディはんにめっちゃ恨みがあるようやなぁ・・
だったら保険にワイらを人質に取ったのも頷けるわ。」
「あ痛たたたたたたっっっ!!!し、シードぉ・・助けてぇ・・・・・」
無理に手首のロープをほどこうとしたメイの腕がつった
泣いて訴えるメイ
「・・・・・あんなぁ、メイはん。
状況解りにくいのに、そんなにこんがらがってもうたらもう手の付けようがないで?」
「だ・・・だってぇっ!!・・・・・」
「・・・・・・はぁ・・ホンマにどないしょ・・・・・」
・・もう一度状況を整理せんと・・ん・・?そういや、な~んか忘れとるよーな・・
「・・・・ワイ、まだ武器持っとるやんか」
そう言うとシードは爪を伸ばし、左手装甲のスイッチを操作した
低く唸る音とともに、小型のレーザー・カッターが現れる
ロープなんてものは、いともたやすく切れた。
「いやはや・・シュウにイタズラ同然で改造されたモンが、こないなとこで役に立つとは・・」
「その前にボクのロープなんとかしてよぉ・・」
「わーっとるわ、ちょっと待ってえな・・」
で、再び戻って・・
「どうするどうするどうする・・!」
ロディは今だ考えが全くまとまっていなかった
・・ちくしょー・・俺ってこんな優柔不断だったか・・・!?・・
ゲイルからの銃撃は相変わらず続いている
万が一相手を倒したにしても、ヘタすればあの二人が・・
「・・こーなったら!」
と、何かを決意したときだった
倉庫の壁を思いっきり破って、一台のトレーラーが突っ込んできた
「うわぁぁぁぁっ!?」
「マスター、遅れてすみません!」
トレーラーからはネスの声がした
「お・・お前人質取られてる状況わかってんのかっ!!」
「そんなら心配せんでえーで、ロディはん。」
「・・・・・・もう、救出完了・・?」
「ええ。」
「・・・そーかそーか・・なら、もうてめぇに遠慮する必要はねーよな!!」
カッコつけて振り返りながら、レイノスを構えるロディ
・・だが
ゲイルの姿がどこにもない
「・・・逃げたんですかね・・・?」
「・・・・・・・・・」
・・お、俺の立場はぁ!?・・
・・はははははは・・・カッコ悪ぃな、俺よぉ・・・(涙)・・
急にテンションが下がるロディ
が、そうそうやっているヒマもない。すぐ元に戻して続けた
「ったく・・勝手に人様のせいにしやがってよぉ・・
嫌なヤツだったぜ・・」
「それは悪いことをしたなっ!!」
「・・・は・・?」
その声はスピーカーのように反響して聞こえた
「てめぇっ!隠れてねーで出てこいよ!!」
「隠れるつもりなど無い!!」
今度は屋根が抜けた
「ま・・またかっ!?
今度はなんだよ・・・!?」
崩れ落ちてくる瓦礫を避けるようにして、ロディは外へ突っ走った
その攻撃の方向へ向き直ると・・
・・ギアだ
大型のギアが倉庫の屋根を破壊している
「・・!?戦闘用じゃねーか・・ひ・・卑怯にも程があるぞ!!」
「そこかっ!」
頭部のバルカン砲が火を噴く
薬莢が飛ぶ音が響きわたった
「うわっと・・・・どわぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」
数発は回避したが・・
さすがに回避しきれず、残りの弾丸は全て彼を直撃した
「バカが・・」
ゲイルは笑いながら呟いた
・・ま、今更何を後悔しても遅いがな・・
「後は・・そっちのトレーラーだけだな・・」
幻魔の目が赤く光る
「・・おい・・」
「さぁ覚悟して・・」
「・・おい!!(怒)」
「何だ・・!?」
下を覗き込むゲイル
すると・・ロディが立っていた
「てめぇ・・・痛ぇじゃねーかこのっ!!」
血を吐きながら叫ぶロディ
「なぜその程度で済む!?」
彼はにやり、と笑って続けた
「防弾装備は基本だ基本!!」
・・ただの防弾でなぜバルカンを防げるんだ!?・・
・・しかも防弾といいつつロディの装備は、いつもの黒シャツとジャンパーだけ。
この男には、改めて驚かされる
「はっ・・」
ふと、我に返るとロディの姿がない
トレーラーもいつ逃げたのか、いなくなっていた
「おのれ・・・ま、まてぇい!!」
この男、間抜けなんだか鋭いんだか・・
シュウの運転でおもいっきり加速するトレーラー、「ラディオン」
後部のデッキにはロディが立っている
「・・座標軸固定!射出っ!!」
その声が響く
・・後ろからゲイルが追いかけてくるのがわかった
「さすが戦闘用ギアだな・・いてて・・
・・しっかし・・思いっきり殴られたのと変わらねーな・・ちくしょー・・」
相当ダメージはあるようだ。
「止まれ!逃げ切れると思うなよ!!」
「誰が止まるかってんだ!」
と、ロディは視線を落とした
「そろそろだな・・・・」
腕時計にカウントが表示される
3・・
「逃がすかぁ!!」
2・・
「よし!」
1・・
突然ラディオンの前に現れた「ゲート」から、巨大な影が飛び出した
「な・・何だ!?」
「転送、完了です」
「よっしゃ!」
ネスの声とともに、その影へ飛び移るロディ
影は地面に降り立ち、衝撃で地面を削る
ラディオンはそのまま走り去り、残されたその影がゲイルの進路を塞いだ
影の正体は・・「白いギア」だった
「・・・ギアにはギア!
システム起動っ!!
・・いくぜぃ!ゼファー!!」
コクピットに入ったロディは起動キーを回した
白いギアの目に光が灯り、黄色く淡い輝きを放つ
「きぃぃぃぃぃぃぃ・・・!」
かん高い鳥のような「声」を上げるゼファー
肩口のバーニアから煙をふかした後両腕を前にし、構える
・・型式番号GーH/77「ゼファー」とGーH/102「幻魔」・・
夜の静まりかえった港に、二体の巨兵が対峙した
8・・ 一対一(その2)
「なぁ、始める前に一つ言っておく・・」
「・・何かな?」
「俺の「必殺技」についてだ・・
そりゃぁなぁ・・っ!!」
突然幻魔の真っ向から突っ込むゼファー
「な!?・・まだ台詞の途中じゃないのか!?」
「くらえ!!先手必勝やったモン勝ちアタァァァァァック!!!!!」
そんなコトは全く無視。
ムダな叫び声とともにゼファーの腕が振り下ろされ、幻魔の肩装甲が吹き飛んだ
・・これぞ彼の十八番、究極の不意打ち攻撃
強引にこちらが戦闘の主導権を握る、はっきりいって反則技である
「しゅ・・手刀でこの破壊力・・!?」
「ほらほらボケっとしてんじゃねーよ!!!」
ゼファーはその場で反転し、こちらの動いた軌道を正確に追ってきた
・・さっきまで卑怯卑怯と言っていたのは気のせいだろうか・・
「なめるな!」
幻魔からバルカンの斉射が見舞われる
確かに相手に着弾するが、装甲を微妙に削る程度。
ほとんどどころか全くダメージを与えていない
「これならどうだっ!?」
アームを変形させ「爪」を装備する
今度は逆に突撃し、そのまま格闘戦へ持ち込もうとする
しかしゼファーは並の機動力ではない、凄まじい速度でかわして見せた
「どうしたどうした!さっきまでの余裕はよぉ!?」
「くっ・・・・!」
さらに今度は全身が開き、無数のレーザー砲が放たれた
網のように張り巡らされたレーザーをも、ゼファーは曲芸師のようにかわした
「今度はこれだ!!」
お次は多弾頭ミサイルの雨が降り注いだ
だが、今度は避けずに立ったままでやり過ごす
「なめてんのぁ、てめーの方だぜぇ・・・・!
77型を旧式とバカにすんなよ!!対ショック、対圧、対爆撃!!
あらゆる攻撃に簡単に耐える装甲を持ち合わせた最高のギアでぃ!!」
「なんだと・・・・・・・!」
「そっちの攻撃は終わりか?
なら・・・・・・」
ゼファーが右腕を強く振った
空気が振動し、右手首付近から緑色を帯びた光が伸びる
「てぇぇりゃぁぁぁぁっ!!!」
レーザー・ブレード。
超高周波でまとめ上げられた粒子が、幻魔の右腕、左腕を簡単に切り落とした
「バカめ!」
「何・・・・・?」
意味ありげに呟くと同時に後方へ加速する幻魔
と・・宙に舞った腕から、いくつものレンズが姿を現した
「遠隔操作ぁっ!?」
無数のビーム・ラインがゼファーに降り注ぐ
「・・・!」
着弾点が煙に包まれ、一時的にレーダーが狂う
「・・至近距離でのビーム砲直撃・・
いかに装甲が特殊とはいえ、これなら・・」
ゲイルはそう言って笑った
・・いや、そう笑おうとしたその時・・
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!!!!!」
煙の中からレーザー・ブレードを高々と振りかざしたゼファーが飛び上がった
「一ぃぃぃっ刀ぉぅ両ぉぉぉぉぉぉ断ぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
ロディはそのままブレードを振り下ろした
落下の加速も加わり、実に勢いよく光が輝く
そして、ブレードは幻魔の右半身を奪った
「・・・・また・・・なのか・・・・」
リアクター部は外したため、爆発はしていない
・・だが、機体のあちこちから火花が飛び散りすでに機体管制が失われている
「バーカ!俺が負けるわけねーだろ!!!」
ゼファーにブレードを構える「決めポーズ」をさせながらロディは呟いた
「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・」
夜空に、ゼファーの勝利の一声が響き渡った。
・・・・その一騒動が終わった後・・・・
ゲイルが中央警察機構に逮捕されて一件は解決した。
さらに後日EXAF社は倒産し、ロディ達ユニオンリバー社の仕事は完全に終了したのであった。
9・・ 2990年、7月4日
朝も早くのユニオンリバー社。
・・まだ初夏だというのに、この国はめちゃくちゃ暑かった
「お早うございます、メイ様。」
「おはよぉぉ・・・」
ネスは日課の部屋掃除に精を出していた
メイは事務所に入ってすぐの所にあるポットに、目線を落とした
「はれ?・・ロディはぁ・・・?」
「衛星港に行ってますよ・・
シュウ様とギアの改造をするそうです」
「へぇ・・・」
メイがポットに手をかけようとしたときだった
「おっはようさぁぁぁぁぁぁんっっっっ!!!」
ばん
大きな音を立ててドアが開き、シードが飛び込んできた
「いやぁ~最近朝っぱらからあっついなぁ・・」
「し・・・シード君っっっっ!!!!!!!」
「あ・・・?なんや、どないしたん・・?」
きょとん、と立ち止まるシード
「ふにゃぁ・・・ぁ・・」
真後ろから重いドアの直撃を食らったメイはその場に倒れ込んでいた。
「うわっちゃぁっ!?なんでこないなことになっとんのやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「君がやったんですよ君がぁっ!!!」
「へ・・!?もしや「さっきの」・・なんかぁ・・!?」
「・・あう・・」
完全に目を回してしまっているメイ
「か・・かんにんやメイはん!!!」
「お気を確かに!!」
「・・・・ねぇ」
「・・・・なんでしょうか?」
メイはすぐに目を覚ました
が、・・大騒ぎしたネスによって、頭に何重もの包帯を巻かれていた
「・・・さっき何があったの・・?
ボク、よくわかんなかったんだけどぉ・・・
それにさぁ・・この包帯って・・なに?」
「いえいえいえいえいえいえいえ!!全く何もございませんよぉ!!
ちょっと風が強かったものですから偶然ドアが当たっただけのコトでして・・!!」
「・・?なに慌ててるの・・?」
「あ~気にせんといてやぁっ!!何でもないない!!」
「・・・・・変なの」
しばし首を傾げていたメイだったが、よく分からないうちに納得したようだ
「それよりもさぁ、お腹空いたよぉ~・・・」
「・・・あ・・そういや朝メシまだ・・やったっけ・・?」
シードの言葉に、ネスは時計を見た
かれこれ八時半になろうとしている
「・・・すみません、忘れていましたぁ・・・・(苦笑)
・・急ぎますのでお待ちください!!」
そう言うとネスは一つとなりのキッチンへ慌ただしく走っていった
こうしてみると家事、会計担当は結構忙しいものである。
「あ・・?・・・・・あああああああっ!?」
「なんや!?どうかしたんかっ!?」
「・・・・・ポットのコンセント抜けてる・・・」
ずる・・
・・思いっきり気の抜けたシードであった。
所変わって地球の衛星港
ブレードバッシャーの艦内では、シュウとロディが色々とやっていた
「やっぱり肩にもう一本レーザー・ブレードを・・」
「いーや!俺のゼファーはシンプル路線!
やっぱギアは技が一番だ一番!!」
「そうですか・・・・・?」
シュウは一瞬残念そうな表情を浮かべると、今度は別なアイデアをはじき出した
「じゃあバリアをこの船と同じモノに・・」
「リアクターの容量が足りねーよ!
重くなったら動きが制限されっちまうだろーが!!」
またも残念な顔をするシュウ
「・・・では、改造のしようがないですよ・・」
「・・・やっぱ、ダメか。」
ロディが自分の趣味・ポリシーを曲げない限り、ゼファーに改造をするなど不可能だった
「ま、いいか・・
今のままで十分つえぇからなっ!!」
気合いを入れた台詞。
「・・ですよね。
・・じゃぁ今度はドーマの改造を・・」
「俺にいー考えがある!」
挙手するロディ。
「なんですか?」
「全身にミサイル仕込んどく!
いざとなったらこうバァーっと・・!」
「骨格が保ちませんよ、そんなの・・・」
「・・・それも、ダメか。」
・・じゃぁ、わざわざここにきた意味無いんじゃねーか・・
・・しんとした空気が流れる
「・・・・帰るか」
「・・・・ですね」
そんなこんなでムダに時間は過ぎていった
ユニオンリバー社、そしてセルムラントに本格的な夏が訪れようとしている
・・とにもかくにも現在の状況から言って、ロディ達は少々厳しい夏になりそうな気がしていた。
・・次回予告
程々に仕事をこなし、かろうじて続いているユニオンリバー社。
しかし、依然として・・
「はい・・・今月も赤字ですねぇ・・」
「・・・なんか、むしょーに笑いたい気分だな」
「・・・笑ってる場合なんか?・・・」
はたして経営は大丈夫なのか・・?
仕事は来るのか・・?
そんでもってこんどこそ被害を押さえることは出来るのか・・!?
「一抹の不安を抱えつつ、次回に続くっ!!」
「・・・・ロディはん、そりゃ落語や。」
「ははははは・・・・・おあとがよろしいようで・・」
最終執筆 二千年 7月12日
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