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3話-前編
世の中物騒になってきていた2990年
事故、犯罪一般は中央警察機構(SG)が受け持っていた
それらをカバーするトラブルコンサルタント(TC)
その一つ、地球を拠点とする「ユニオンリバー社」
果たして彼らに明るい明日はあるのであろうか
・・今日も今日とて無謀な日々が続くのであった。
第三話
「首都攻防戦」
1・・ 「発端・・ある日のSG」
2・・ 「異常」
3・・ 「襲撃」
4・・ 「小隊合流」
5・・ 「旧文明の遺産」
6・・ 「理解ならず」
7・・ 「振り返れば奴がいる」
1・・ 発端・・ある日のSG
巨大な一つ目の影・・
月の衛星軌道を巡回していたSG巡洋艦の一隻が、その影を発見したのはいつごろだったろうか
初めは星が瞬いているのかと思ったが、明らかに違う点はその「数」
一つ二つではなく多数の光・・十数機もの大型ギアの群が高速で接近してくる
巡洋艦の艦長は緊急で軌道艦隊を収集、ギア・ガーダーを配備した
戦闘を仕掛けてきたギアと戦闘に入る・・
・・しかし量産型など比ではなく、ものの三十分で艦隊はあっけなく全滅してしまった
その後、月の駐留部隊が駆けつけたときには軌道艦隊の残骸だけが残っていただけ・・
どこにも「それら」の存在を示すものはなかったという
「・・・物騒な話もあったもんね・・」
リィズがその情報を仕入れたのは、その日の・・そう遅くない頃であった
前回の件では月にいたが、彼女たちの本来の居場所は地球、中国大陸の西安である
「いきなり不意打ち・・ってんじゃなくて、真っ正面からぶつかって負けたんですから・・
・・こりゃ相当の強者なんですね」
そう言ったのはギア部隊のエース、ラルフ(エースは自称。・・唯一まともなパイロット)
ガーディアンとの戦いで難を逃れた戦闘隊長である
「確かに大変・・
私達もできればそんな目に遭いたくはないですよね、隊長。」
小隊の副官、レオネがにっこりと笑いながら呟いた
「・・いくら私が運悪いってもね・・・・・そこまでは・・」
言った矢先・・・
彼女の小隊に、収集がかかる
任務は「正体不明の一団の捕獲あるいは撃破」であった
「・・・・いわんこっちゃないですぅ・・」
「・・・どうして俺らなんですか・・」
口々にぼやく二人
「お荷物部隊から順番に行ってるからでしょ?
・・結局前回の作戦、ロディ君に持ってかれたんだし・・」
実際彼女は手柄にとんと疎い
別にユニオンを恨むわけでもなければ責め立てるつもりもない
ただ、そのせいで自分が上司に叱られるというのは気にくわないと思っていた
「そんな物騒なの相手にするなら・・
やっぱりユニオンの方々の方が適任だと・・」
「・・レオネ、それ言ったらSGは要らないでしょ」
「あ・・・そーですねぇ・・」
「それより隊長、俺達でどうやって叩く気なんです?
敵は強力なヤツが十数機もそろってるそうですが?」
「・・ふふふ」
「な・・なんですか・・その笑みは・・?」
レオネとラルフはそろって後ろに退いた
「この部隊の名称、もう忘れたの?」
「え~とぉ・・・・
・・・・
・・・・・・・・
・・忘れちゃいましたぁ。」
ずる
思いっきりコケるリィズ
「・・あのね・・
ウチは第08MS・・じゃなくて
第八機動実験小隊。
通常任務以外に新兵器のテストを行う特殊部隊!
思い出した!?」
「え?え~とぉ・・・・はい・・わかりましたぁ」
・・疑いの眼差しを向けるリィズ
「部隊名はそうですけど・・
・・それが何か?」
「今度のためにテスト兵器が導入されることになったの。
だからラルフ、壊れてるあなたのギアは新型に換装されるからね」
「へ!?」
「今度のは特注だから、期待していいわよ♪」
「待ってくださいよ!俺あいつにすごい愛着あるんスから!」
「・・あのねぇ、あんな量産型に愛着もってどーすんのよ・・」
「量産型だからこそですよ
あのジムにしろザクにしろ改造次第で使えるようになるでしょ?
俺のSGー二型も・・」
「ていうか、もう交換されているんだけどね
そろそろ搬送されてくる頃よ。」
「そ・・そんな・・・・・・・・何も言わずに・・・・・」
「ほらほら、いいじゃない新型よ新型!
ジムからガンダムに乗り換えたと思えばいいのよぅ」
「・・そこまですごいモンなんですか?」
「ジャンプじゃなくて単独飛行が可能なヤツらしいんだけど・・
どうやって飛行するのか聞いたことないのよね」
「・・すんません・・俺、不安になってきた・・」
「大丈夫だと思いますよ、ラルフさん
一応SGの開発課を信用しましょう」
というわけで・・
万全の体勢を整えたリィズ小隊は中国大陸を後に、敵の降下目標「ヨーロッパ」へ移動を開始した
2・・ 異常
「あれ?」
・・セルムラント、メインターミナル
その最上階に位置する気象観測所では、少々異変が起きていた
「所長、これ見てください!」
「・・・・随分まとまった低気圧だな・・」
二人の所員が観測を続けていたその最中・・
「・・こりゃかなりでかい台風が・・」
「・・いや・・これはヤバすぎる
台風だの嵐だのの比じゃない・・!!
すぐ下に連絡入れろ!!」
「は・・はい!!」
予想被害、セルムラントを含む四ヶ国という大津波・・まったく異常気象も極まったものだ。
・・その報告はすぐにTVなどで報じられ、避難勧告が出されることとなった
だが・・・・
中には、それに気づかないでいる呑気な人々もいたのである
3・・ 襲撃
「メシやメシぃっ!!」
時すでに十一時・・
・・だというのにシードは今更のように朝食の時間であった
「・・熱っつい・・・・・・・・・」
「大丈夫ですかメイ様・・?」
「・・全然ダメ・・」
彼女はいまだに高熱を訴えていた
呑気にメシ食っていたシードも、どこかしら浮かない顔である
「おいガンマ、この症状も「セプター」とかってのに関係あるのか?」
「・・・どうでしょうか・・
多分ナノ・マシンの適応進化能力に準ずるものだと・・」
「はぁ?・・ナノ・マシン・・?」
「ええ、遺跡の端末から体内にナノ・マシンを直接送り込み、それがDNA自体に作用して・・
ある種の能力を得ることが出来るわけです」
「・・何なんだそりゃ?」
「無機物を瞬時に分解、さらに本人の身体を分解して組織を組み替え・・
それにより元の状態を超越した形態へと強化されるというものです」
「まぁた小難しい話を・・・要するに変身ヒーローか・・」
「で、元に戻れるのん・・?」
「・・ナノ・マシンには二つのプログラムが入っていて、一つは分解、一つは再生のシステムです
再生の方は元の形を原子レベルで記録していますので、戻ることはたやすいです」
「・・・ほぉ~・・・で、なんでメイは熱だしてんだ?」
「・・元々は旧文明人に適応するためのモノですから
多分御主人の身体に適応するのに時間がかかって・・
・・・その反作用だと思います」
「何故メイ様が?」
「それは偶然ではないかと思います
私のマスコンは当時誤作動とかの問題があった欠陥システムですからね・・」
「・・・・・」
・・・・ボクって一体何なの・・・
聞いていたメイは、なんだかオモチャにされただけのような気がしていた
「ありゃぁ?」
「どーした、シード?」
シードがえらくすっとんきょうな声を上げた
「・・・・津波警報がでとる」
「つ・・・津波ぃぃ!?
この晴れているのに・・!?ど・・どういうことですかシード君っ!!」
「・・いや・・テレビでさっきから・・」
「バカヤロー!メインターミナルみてぇにでけぇあれならともかくウチは水ん中じゃねーか!?」
「・・ご心配なく
こんな事もあろうかと、事務所外壁にも相転移フィールドを・・」
「・・シュウ・・抜け目無いなお前・・(つーかいつの間に・・)」
「いえ、予想範囲内です。」
「とにかく!避難勧告は出ねぇのかよ!?」
「・・昨日から出とるけど、ワイらが気づかなかっただけみたいやな・・」
「・・じゃあこの周辺で残っているのは・・」
「私達だけでしょう。」
ガンマが剣の手入れをしながらつぶやいた
がしゃ・・ん
「ん・・・」
ふと、ギアのサスペンションの音が聞こえた
歩くときにいちいち聞こえる、独特の音だ
「なんでこんな近くで音が・・?」
「SGのパトギアやろ?おかしくも何ともあれへんに・・」
がしゃ・・
「違う・・
SGのポンコツギアじゃない・・もっとでけぇヤツだ!」
「でかい・・?」
ロディは窓から身を乗り出し、外を見た
「・・・・・・・!」
大当たり
ロディが聞いたのはSGではなく、例の正体不明のギア群の足音・・
・・はっとした頃には、それらはターミナルに向け走り去った後であった
「な・・・なんで戦闘用があんなに・・?
ってあの平和主義の首相が用意できるわけはないか・・」
「では他国の侵略!?」
「んなわきゃねーっつーの!!
こんな貧相な国乗っ取ってどーすんだよ」
・・言われてネスははっとした
「狙う理由があるじゃないですか!!
ロスト・システムですよ!!」
「・・この国にそんなもんあるのか?」
「地球上に残っているシステムの七割はウチの首相が管理しているんです!!
少しは政治経済の番組くらい見て学習してください!!」
「小難しいのはキライだ!!」
「・・ま、それはともかくですねぇ・・
もしもそれらのシステムが軍事転用されたらどうなると思います・・?」
「・・最悪だな
・・ようし・・SGだけじゃ心もとない!ここは俺とゼファーで・・!」
「ゼファーは前回の件でオーバーホールの真っ最中です
装甲が滅茶苦茶へこんでてなおかつフレームしか完成していませんが・・?」
「シュウ・・なんでこんな時にやるんだよぉぉぉぉぉ・・・(泣)」
「いえ、戦えないこともないですよ、
フレームとはいえ装甲がない分機動力がありますし、
第一ロディさんなら根性で・・」
「モノには限度がある!!!」
はっきり言う。
「ではでは・・私が行きましょう」
手入れしていた剣をしまい立ち上がるガンマ
「待て!
・・おいガンマ、お前また「あれ」呼ぶ気か?」
「・・・あれというと「デストロイ」の事で?
ええ、そのつもりですが」
「あいつに加速粒子砲撃たれたらセルムラント自体が吹っ飛ぶに決まってンだろ!!」
「確かに・・彼ならやりかねません。」
デストロイはガンマがコントロールしているワケではない
あくまで自分の意志で行動しているのである(ある程度は言うことを聞く)
「あれじゃぁわざわざゴジラ呼ぶようなもんだ・・」
「破壊神降臨・・・」
・・本気でヤバイ。
「ところでロディさん、ゼファー出す方法がありますよ」
「どうやってだ?」
「・・現在修理中の装甲を完成させるか、テスト中の新型装備を使うか・・です」
「すぐ出来るほうでいい、やってくれ!!
・・攻撃開始しやがったみてぇだ!!」
マシンガンの火線が飛び交うのが確認できた
ターミナルを守っていたSGのギアが応戦を開始したのである
「そのうち津波が来るんだろ!?
・・それまでにとっとと奴らぶっ飛ばしてくらぁ!」
「では・・まだ「問題」が残っていますが、S型装備を試しますか」
「も・・問題・・?」
不安は残るが、仕方ないと割り切るロディであった
4・・ 小隊合流
ゼファーに装甲を装備する間、ロディはネスとともにラディオンで街中を突っ走っていた
「マスター!前・・前に!!」
大きく目標を外れたバズーカ弾頭が、不格好なトランスポーターの正面に迫る
「ハズレ弾ごとき当たるかよっ!!」
・・路地を曲がって難を逃れる
「SGが圧倒的に劣勢ですね・・(相手はSGと同じたかだか十数機のギアだというのに)
これは時間の問題でしょう・・」
通信を盗聴しながらネスが言う(当然ながら犯罪行為)
「ポンコツギアとヘボパイロットの集まりだからな
ヘタに期待なんざしねぇほうがいいと思うぜ」
「悪かったわねぇ!・・ヘボパイロットの集まりで・・・!!」
そう言う声は上から聞こえた
外部スピーカーのエコー音が響いてくる
「SGの輸送機・・?
リィズか!?」
「あなた達避難していないの!?
津波が来るのよ津波!第一あの連中は一般の手に負える相手じゃ・・」
どぉ・・ん
リィズの警告は、爆発音にかき消された
輸送機が地上から攻撃を受け、火を上げたのである
「バカ野郎!!いきなり落とされてどーすんだっ!!」
火を噴きながら墜ちていく輸送機
「・・いいから!コンテナだけでも射出して!!
こんな所で新型壊したら署長に大目玉なんだからねっ!!」
「了解!・・ところで隊長殿、我々はどうするのでしょうか・・?」
パイロットからのもっともな質問
リィズは、ふふふ・・と笑い自信たっぷりに言った
「不時着するに決まってるでしょう!!」
「隊長ぉ・・それでは街の被害問題が残りますよぅ・・」
「いい、レオネ?・・勤務が最優先!謝罪はお偉いさんのお仕事よ!!
私達はマニュアル通りの事をやっているだけでしょーが!!」
強引な理屈をつける
「・・し、しかし隊長殿・・それは権力の暴挙というもの・・」
「ええい!なんで射出しないのよっ!!!」
リィズはパイロットを強引に押しのけシートへ割り込み、キーを叩いた
ばしゅっ・・と空気が吐き出される音がして、輸送機の後部ブロックが落下した
「ラルフ!!後の作戦よろしく!!」
「了解です!・・
で、まだ操作マニュアル半分しか覚えていないんですけど・・」
「実戦で覚える!!
あなたならどーとでも出来るでしょう!!」
「・・自信は半々ってトコですね・・」
・・ロディはその間にもターミナルに接近しつつあった
「S型装備、完了しました」
淡々としたシュウの声
「いよぉうしっ!・・転送!!」
ゲートがいつものように、現れた
そして・・中から出てきたギアの姿は・・・
「なんでぇ・・変わってねーじゃんか・・・」
いつもの頭部がゲートから出てきた
しかし、問題はその後
「変わって・・・・」
・・「重い」と表現すればわかるだろうか
全身各所に巨大な装甲を着込んだ、まさに「重武装」のゼファーが地面に降り立った
「うわぁぁぁぁぁぁっ!?なんだこりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
絶叫するロディ
元々スマートな騎士型がGーH/77「ゼファー」の姿である
それを本人は気に入っていたし、当然のように大事にしていた
・・が、シュウの言うS型装備はそれをぶちこわしたモノだったのである
「シュウ・・・・こんなんしかねーのかよ・・・」
「ご心配なく。
理論上は通常の三倍の性能が引き出せるハズです」
「・・スピードは三分の一なんだろ?」
「ええ。よくわかりますね」
かっくりと肩を落とすロディ
「まぁ・・文句は言ってられねぇ!
いくぜぃっ!ゼファー!!」
うぃぃぃ・・・がちゃ・・
「・・・」
うぃぃぃぃぃ・・・・がちゃこん・・・
「・・・走れねぇのか・・こいつぁ・・」
どこかの怪獣のように、とてつもなく遅い速度で前進するゼファー
歩くたびに意味不明のモーター駆動音が響く
「間に合うのかよ・・俺ってば・・」
少々どころか死ぬほど不安なロディであった
・・激戦区まで、あと十キロ・・
5・・ 旧文明の遺産
「シュウ!!何か海からくるで!?」
事務所に備え付けのレーダー・センサーが、海からの来客を数機捉えていた
緊急時に・・とシュウが取り付けたモノである(ムダの一つ)
「・・あの連中の増援だと思うよ・・
やっぱりターミナルを破壊しに・・」
ところが
水中から現れた八機の水中型ギア「ブリュヴェード」は道路際に立つと、一斉に攻撃を開始した
腕部にしつらえられた圧力砲が軽い空気振動を起こすたび、周囲の建造物がひしゃげて宙を舞った
「おい!?こいつら街ぶっ壊す気やで!?」
「まずい・・連中はセルムラント自体を亡きものにする気なのか・・!!」
やがて・・
一機のブリュヴェードが、腕部を事務所へ向けた
圧力砲が振動を響き渡らせる
もちろん、パイロットには人がいることなど知る由もない
・・いたとわかった所で攻撃をやめたワケでもないが
「・・ありゃ?・・出力があがらない・・?」
事務所を完璧に守るはずのフィールドは作動しない
・・ものの数秒で、空気圧がユニオン事務所を正面から襲った
「うぉぉぉぉぅりゃぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
大振りな動きで殴りかかるゼファー
・・しかし到底当たるわけもない
敵はさらりとかわし、マシンガンを至近距離で撃ちはなった
どががががが・・・
連続で表面装甲を削る音が響き、ゼファーの機体が後方に大きくのけぞる
「っとっとと!!持ち直せ!ド根性だっゼファー!!」
ばたばたと手をばたつかせ、何とか体勢を戻す
「・・ふぅ・・
くそぉっ!!もう一度だ!!」
・・悪戦苦闘とはまさにこのこと
装甲が分厚いおかげでダメージはほぼゼロ
・・しかし、機動力の問題は全く解決していなかった
「シュウ!通常装甲は修理できたのか!?
・・・・シュウ・・・!?」
モニターの端に爆発を起こす海岸地区の映像が映る
「・・・・まさか・・事務所が!?」
・・って・・んなわけねーよな・・第一あの発明バカがそうそう死ぬわけが・・
と、考える熱血バカ。
・・空では何か、戦闘機のようなギアがくるくると旋回していた
「変形パターン・・変形パターンの項目・・・・・・!!」
地上からの火線を避けつつ、変形する方法を探るが見つからない
ラルフの新型「グラス・バード」は出撃してから一度も地に立っていなかった
「いい加減に変形してくれ!戦闘機じゃギアに勝てないんだよ!!」
だん・・とコンソールを叩く
すると・・
・・がしゅ・・・がこん・・
「そ・・そうか思い出した!こっちのヤツでよかったんだ!」
激戦区めがけ落下していく機体
がっしゃ・・・・ん・・・
柔らかいサスペンションの音ともに降り立った
「・・結果オーライ・・・だよなぁ・・
ええい!こちらファースト!これより戦線に参加する!」
・・かなり遅まきの参戦であった
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