第01話-6



途中で警備員に会うことは十分想定しているのだが・・運がいいのか悪いのかまったく見かけない


・・もしかして俺ってツイてる?


にやにやするロディにシュウがあきれたようなため息をついたときだった


「止まれ!」


通路が大きく開けたと思った時には、ロディとシュウの前方は2~30人の警備員に塞がれていた

さしものロディもちょっとだけ驚く

・・が、すぐに余裕の笑みを浮かべて・・


「その程度で止まると思うなよ」


意味ありげにつぶやくと、上着に手をいれた


・・出る・・


シュウが直感した直後、ロディの懐からは洒落にならない物が飛び出していた

某一個師団が使うという強行突撃用装備、「アサルト・ロケットランチャー」

重さも長さもとても上着に収まるものでない事は明白な代物・・


「な・・・なにぃー!?」


ロディが構えた得物を見て、警備員一同はわらわらと散開を始めてしまう


・・が、遅い


「じゃぁ・・な!」


ロディはロケットランチャーに自分の銃「レイノス」の弾倉をはずしてくっつけた

ロディの装備の多くはレイノスのトリガーをコアにして操作するのである


シュウは彼の動作を見て、ささっと耳をふさいだ

その直後・・大きな・・とっ・・ても大きな爆発音が、アルト全域に響き渡った

どっごぉぉぉぉ・・・・・・・ん・・


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それから・・爆発の大音からもう一時間経っただろうか・・

S.P.F社の工場には多数のS.G隊員がやってきて大騒ぎになっていた

見るも無残に吹き飛ばされた工場の一角は今も黒い煙を上げていて、まだまだ事件の収拾には時間がかかりそうだ


・・そんな騒ぎの中、ロディは再び・・今度はシュウをつれてクライアントに会っていた

・・クライアント・・S.Gのおっさんは確かにシュウのとってきた証拠を喜んでくれた

が。

・・が、しかし・・だ。

「結局・・壊した分報酬から引かれっちまったなぁ・・」

「当然でしょう、だってあそこであんなランチャー撃ったらコロニーだって損害受けますよ。」


もっともな現実論にロディはぎりぎりと歯を鳴らした

彼にとってはまっぴらな部類の理論・・というより彼は理論とかそういう事が理解できないだけなのかもしれない


「・・帰ろうか」

「いいじゃないですか、これなら一週間くらい保ちますよ?」


相変わらずにこにこしながら、シュウはロディに先ほど頂いた報酬を手渡す


「・・だな。これでしばらくパン生活とはおさらばできそーだ・・・」

「人生前向き、ですよ♪」


ロディも苦笑いながら、仕方のないように笑った


・・笑いながら少しだけ泣いた。


「お帰りなさいませ、マスター」

「おかえり、お兄ちゃん」


ブレードバッシャーに戻ると、ネスとセラが入り口ハッチのところで出迎えた

二人は「まぁこうなると思ったけど」とあからさまに苦笑いを浮かべている


「・・しゃーないよな。」

「しゃーないでしょう、あなたの事ですから・・」


ネスはくるり、とブリッジ方面へ振り返りながら・・

ばつが悪そうに笑うロディに向かい、一言だけ言った


「生き長らえるだけマシとしましょうか・・次はちゃんと自制してくださいよ・・?」

「ああ、悪ィな」

かくしてS.P.F社は事件処理と同時にS.Gの強制捜査を受ける事となり、これ以上悪どい事はできなくなった

・・というより違法な取引で稼いでいた分、表向きのお仕事は業績不振。

これじゃ、先はもう見えているようなものか・・


・・ロディ達は、そんな事も考えながら、ちょっとだけ楽しげに地球への帰路についた。

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一方・・・


ロディ達の去ったアルトではS.P.Fの主要な人物が取り調べを受けていた。

S.Gの隊員達がお仕事に励む・・・


しかし、ある事に、一人の隊員が気付いた


「警備部門の主任が行方不明だそうですが」

「警備部門・・?・・ああ、そいつもリストに載ってるぞ・・確か中央区画の管理をしてた野郎だな・・?」

「ええ、ゲイル=プライズマン・・違法な品のさばき役ですね」


若い隊員は上官に向かい報告を続ける


「そのプライズマンと配下の数人が・・先ほどの爆発の後から、姿をくらましているんです。」

「?・・・爆発で吹っ飛んだんじゃないだろうな?」

「まさか。怪我人一人出てないんですよ・・?」

「・・・・何か・・ありそうだな・・」


上官の男はそう言って考えをまとめはじめた

しかし・・ゲイルが消えた理由はそう浮かぶわけもないだろう。


なぜなら彼はあの後数人の部下に連れられ、アルトを脱出していたのだから。

ロディに対する恨み、妙なプライドから来る復讐心・・・


ゲイルは静かに、地球への連絡船に乗り込んでいた


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「麻酔弾??」


ブレードバッシャー艦内・・

ロディはシュウに、彼が倒れていた間の話をしていた


「おう、さすがに効くな、お前が作った弾丸はよ♪」

「青い弾ですよね?・・あれって確か・・「簡易停止弾頭」だと思いましたけど?」


シュウは手振りも交えて説明する


「目標に当たると睡眠を促す成分を即効性のあるナノマシンが運んで、ナノマシンが機能停止するまでの間睡眠を誘う・・」

「・・で?その後は?」

「保って2分もないでしょうね・・後はしばらく動きにくくなるくらいです。」

「・・なんでぇ、そんなもんだったのかよ・・」

「一緒に渡しましたよ、赤いのがその麻酔弾だと・・」


呑気なものだった。

思えばあのとき、撃った弾が本当の麻酔弾だったら・・


この後でロディ自身が後悔することはなかっただろう。

・・あの男は確実に、彼らを狙ってくる・・


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