第02話-2




・・ロディの退院はあと5日・・

というワケで彼以外のメンバーが勢揃いして、月の遺跡へ向かう事になった

ドックNO.21、ブレードバッシャーの艦内ではいつも通りの発進準備が整えられていた

ロディの「艦長」シートには、代わりにあの黒髪の少女・・「サクラ」がいた


「楽しみですわね・・未発掘の遺跡なんて久しぶりに素敵な所・・♪」

「・・そーいえば、サクラさんって「遺跡けんきゅーか」だっけ?」

「ご名答ですわ♪」


メイの方ににこにことした微笑みを向けるサクラ

・・シュウの姉ともなれば、やはりこのにこにこ笑いは当たり前なのだろうか?


「とりあえず発進プロセスお願いしますよ、姉さん」

「了解ですわ」


艦全体にあの、受付からの通信が入る


『許可申請受領、ドックNO.21・・ユニオンリバー社所属・高機動戦闘艦「ブレードバッシャー・・聞こえますか?』

「了解ですわ。こちらドックNO.21・・発進準備完了です」

『?・・スタンフォード様は・・どうかなされたのでしょうか?』

「ちょっと事故に巻き込まれまして・・今回は私が代行で行きます。」

『そ、そうですか・・』


オペレーターはちょっととまどったらしい。

とりあえず係留アームが外れて、すぐにブレードバッシャーは発進体勢をとり・・


『ハッチ開放、進路確認完了・・・・NO.21、発進どうぞ』


受付のオペレーターはまた、慣れた口調で言うと通信を切った

ブレードバッシャー艦内から、エンジンの音以外がしばらく消える・・

少しして、サクラが静かにつぶやく


「ブレードバッシャー、発進!・・ですわ」

「・・・・・」


今回は復唱しないが、シュウの頷きと同時に艦の8つのバーニアが噴射される


ブレードバッシャーはそれほど急ぐこともなく、余裕を持って・・・


暗闇へと、飛び出していった

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・・月面、第88号発掘遺跡・・


月面には簡易的なテラフォーミングのおかげで、高山くらいの大気が存在している

(↑まぁ人が普通に住めるようにしてると思って頂ければ・・)


山のように高くなった場所で、大きく口を開けた「遺跡」の入り口が、不気味にそびえている

S.Gの旗を立てたトレーラー数台と、クライアント達の調査用車両、様々な設備の整ったテントが近くに配置されている


一応宇宙服ナシでも活動することはできるのだが、ちょっと空気が薄すぎるために、大体の人間は小型の酸素ボンベを携帯していた

無論、訓練を受けたS.G隊員だろうが、遺跡調査の専門家だろうが、ユニオンの社員だろうがそれは当然の事だった。


「・・それで、調査隊はどこで行方不明に?」

「深度4の・・マッピング通りならばここの「礼拝堂」です。」


シュウと、サクラと、調査員の男・・そして数人のS.G隊員がテントの中で小さなテーブルを囲んでいる

そこに調査員が小さなディスプレイボードを置いて、説明している

地図は3Dで立体的に表示されているが、所々で道が途切れてしまっていた

・・そして・・肝心の深度4では、一番天上が高く、ただ無駄に広い場所・・「礼拝堂」という表現にぴったりのポイントがあった


「・・ここまで来れば何か証拠がつかめそうですね。」

「問題はそこまでさ」

「・・トラップですわね」


サクラはなにやら冷静な分析を始めたようで、マップのいくつかの通路にマーキングをしていく


「こことここと、ここ。」

「・・何が・・でありますか?」


真面目そうな顔の、若いS.G隊員がサクラに聞いた


「それは・・もちろん、トラップの場所ですわ」

「わ、わかるんですか?」


調査員までもが驚きの顔を浮かべ、一同騒然となる


「だって・・月の34号遺跡と、72号遺跡・・あと77号遺跡は私と大学のメンバーで調査しましたもの」


サクラはにこっ・・と笑う

一同は騒ぎを止めたが、今度はきょとんとしている


「つまり・・ここの遺跡のトラップパターンは、大方予測してますの。」

「・・な、なるほど」


一同同時に手を「ぽん」と打つ

シュウはにこにこと笑いながら、地図を自分の背中にしょったコンピューターへダウンロードする

サクラも「作戦会議」のためにセラ、メイ、ネス、シードを呼んだ

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・・「作戦会議」は迅速に済まされた

トラップにはまって彷徨っていると考えれば、調査団が負傷者を抱えたり、最悪死者が出ている可能性もある

トラップというのは、本来そういうものだ。

侵入者を撃退するため、あるいは駆逐するため・・


だが聞いてみると・・S.Gの、それも「特A」クラスのメンバーがいるという調査団が、行方不明になるような事態・・

果たして、深度4に何が待ちかまえているというのか?


とりあえず・・サクラはよっぽど説明がヘタらしく、メイ、セラ、シードはどんよりとした空気を漂わせていた

・・やっぱ不安になってきたらしい。
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遺跡に入るメンバーは4人・・シュウ、メイ、セラ、シード。

サクラが外でナビゲートし、ネスが通信を担当する。


始めはまさに順調そのものだった

サクラのトラップ予測ポイントはそれほどまでに正確で、メイが不用意な事をした以外は全く引っかからずに進む事が出来ていた


現在深度3・・・

遺跡の内部は「遺跡」という単語に相応しくなく、周りの壁、地面は・・金属の、まるで機械の塊のような物質で構成されていた

所々が壊れているのか、ばぢばぢ・・と電流のような流れが見える場所もあった


「疲れたあぁ~・・」

「あんさん、そればっか」


シュウ、セラの二人はメイの大分前を歩いている

シードがやや離れてそれに続き、メイはもうやる気もないような表情でふらふらと続いていた


「ボクもう歩きたくない~」

「・・・・・」


シードももうどうしようもない、という顔をしている


「シュウ~・・セラ~・・待ってよぉ~・・・」

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「・・シュウ、大丈夫?」

「・・・・」


シュウはにこっ・・と笑う

いつもの微笑みだが、頬に一筋の汗が・・

シュウはメイを背負っていた

あまりにも文句ばかり言うので、シードがシュウに無理を言ったのだ


シュウも長い地下生活(笑)のために体力をかなり鍛えていたのだが、さすがにこういう地形を少女一人背負って歩くというのはつらいらしい


「・・ゴメン。」


メイは申し訳なさそうに言ったが、そのワリには楽しそうに笑っていた

・・楽ちん~♪

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同じ頃、地球では・・・


「暇。」


ロディがひたすら、暇な時間に耐えていた。

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