第02話-L



すでにアークエンジェルの騒ぎからは数日が経ち・・さんざん騒ぎ立てていたマスコミも沈静化していた


「・・人の噂も七十五日」


シュウはそう相応しくない格言を唱え、ゆっくり手にした湯飲みをすすった

事務所は今日も「平和」の一言で済ませられる状況

ネスは掃除をしていて、シードはまたパン屋へ行っていて、ロディは社長机で大いびきをかいている


姿の見えないサクラ、セラ、ガンマはどうやらメインターミナルへ出かけているらしい


「・・メイ様、遅いですね・・」

「いつもみたいに寝てるんじゃないの?」

「にしてもこの時間ですよ?」


ネスが指した時計は12時をとうに回り・・すでに2時前

シュウもようやく時間に気付き、今更相づちをうつ


「起こしてくる?」

「今日は仕事もないですし、まぁいいでしょう・・」

「そうだね、その方がいいと思うよ・・遺跡では大変な目に遭ったんだし」


・・シュウは先日、夜中にメイの部屋に忍び込み(犯罪)彼女の血液サンプルを作って、その異常にいち早く気が付いていた

何を思ってか、誰にも言ってはいないが・・

メイは今最大の危機に立たされている


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「う・・うぅあ・・・ぁ・・」

暗い部屋の中・・

メイは、ベッドの上で呻くような声を上げていた

窓を開ければ明るくなる部屋だが、今はカーテンと雨戸で隙間からの薄明かりしかここには届いていない

頬は赤く、肌は火照りの色を見せ・・全身がびしょ濡れになる程汗をかいている

その表情は、ひたすら苦しみに耐えるだけのものであった


「く・・ぅ・・・」


気持ち悪い・・!!


意識の中を、身体の中を、自分の全てを虫のようなものが這い回る感覚

声を上げて誰かを呼ぼうにも、身体は彼女の意識を受け付けてくれない・・


・・や、やだよぉ・・・・


目からは涙がこぼれる・・・それでも痛みのような、ただひたすらに苦しい時間が続く

・・ふと、ガンマの言葉がよぎる

月での件で、彼が言っていた意味ありげな台詞の数々が・・


・・「あなたはセプターに・・」

・・「・・旧文明の・・」

・・「ようやく・・」


しかし、どれもこれも彼女が理解した言葉ではないはず


・・ダメだ・・ボクおかしくなっちゃうよぉ・・!


メイはシーツを力の限り握りしめ、かろうじて自分を保っていた

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所変わって、メインターミナル・・


今日は客もかなりいて割と混雑している

ガンマとセラはサクラと一時別れ、食品フロアで休憩していた


セラは嬉しそうに、ソフトクリームをなめている

ガンマは将棋の・・なぜか知らないが将棋のポケットゲームをやっていた(・・ここヨーロッパじゃなかったか?)


二人とも今の状況を見る限りは「お子様と子守のIFR」くらいにしか見えないだろう

だが・・かたや最強の格闘術を身につけ、かたや鋭い二本の剣と巨大ギアを持つ者である


「・・セラ様。」

「何・・ガンマちゃん?」


ロボットには誰にでもちゃん付けのセラ


「時にお聞きしたいのですが、飛車落ちで戦っている状態で相手を攻め落とすというのはどのような戦略が得策でしょう?」


セラの眉が下がる


・・な、なんで私にそーゆー事を聞くのかなぁ・・??


「わ、わかんない・・私・・チェスもやったことないんだもん・・」

「ふむ・・左様ですか」


ガンマはまたゲームの操作を進めた


・・それにしても、昨日の夜からずっとやってるのかなぁ・・このゲーム・・


ネスのコレクション(骨董品もののレア銃)を見せてもらっていた時に、一緒にいくらかあった古いゲームのデータ

その中にあった「羽生将棋」をいたく気に入った彼は、ここに来るまでずーっ・・・・・とやっていた。


サクラはどうか知らないが、セラは「よくやるモンだなぁ~・・」と半分感心に似た視線を向けていた

・・セラは少し溶けかかってしまったソフトクリームをなめる

・・横ではガンマが将棋三昧


・・加えて、前の開けた通路の向こうから・・大量の荷物を抱えたサクラ(眼鏡なし)がふらふら歩いてくる


「・・はぁ」


比較的まともなメンバーで来たつもりの彼女だったが、読みが甘かったようだ。

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・・セラ達が帰り仕度を始める頃には、事務所で大変な騒ぎが起きていた

心配になってメイの様子を見に行ったネスが彼女の異変を目の当たりにし・・


あのシュウが手を尽くしても、原因は不明のまま・・


彼女は高熱と幻覚症状・・それも苦痛を伴う幻覚に襲われ続けた


「なんとかならねぇのかよ・・おい!?」

「・・ガンマくんなら何か知っているかも。」


シュウは、そうとだけつぶやき・・地下室へ再びこもってしまった


・・事の解決には、今少し時間を有すことになりそうだ。

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NEXT-EPISORD・・

第03話「首都攻防戦」





(※帰りの電車の中で)

セラ「ところで何買ってきたの、サクラさん?」

サクラ「ちょっと衣料素材を・・そうですね、いい色の布とかラバー材とか・・」

ガンマ「俗に言う「コスプレ素材」という奴ですか」

サクラ「はう・・ま、まぁその通り・・・ですわ(汗)」

セラ「(そういえばサクラさんの趣味ってそういう・・)」

サクラ「・・でも着るときは恥ずかしいのに、一度着てしまうとなりきれるんですよね・・・だから楽しいのかも・・」

セラ「(・・やっぱり、趣味だから・・?)」

サクラ「それで、次の衣装はカードキャプ・・・」

乗客一同全員「ぶっ!!」と吹き出す

セラ「それ以上言っちゃだめぇぇぇ!!ていうよりそれは私の方がサイズ的に・・!!」

サクラ「じゃあやってみませんか?」

セラ「遠慮しますっっ!!」






・・第02話・・・終・・・・・




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