第10話-2



・・今日もようやく目が覚めた。

っていうか・・なんだ、この生暖かい風は・・?

そんでもって、なんだ、この妙に身体にかかってくる重さは・・?

恐る恐る目を開けた俺の目に・・まず、いつも見上げている部屋の天井が見えた

どうやらここはいつも通りの、ユニオンリバー事務所らしい

・・そうか、無事に帰って来たんだっけ・・ガンマのアシストのおかげで・・

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元々遺跡のシステムの一部であり、事前に策を講じていたガンマ

完全に眠ったような状態にされたワケではなく、一時的に機能を停止させられただけで・・

ゼファイラスの攻撃の瞬間、再起動したデストロイが飛び出して・・

相干渉フィールド同士の接触、相殺、消滅

デストロイ自身も右半身を失うという大ダメージを負ったが、エリクシルは確実なダメージを負った

・・そして・・

ガンマはエリクシルの体内に、突入した

手にした二つの剣は、刀身のない剣、光氷(かがやきのひょうが)と闇炎(くらやみのほむら)

攻撃によって開いた傷口から、閉じつつある内部への一直線の道を駆け抜けるガンマ


「疾・風・迅・雷!」


ガンマの狙いは動力とか、内部メカとか、そういういかにも巨大メカの弱点であるポイントではない

・・衛星レベルの巨大さでは、恐らく発見すら難しかった「ナノ・レベル」の目標物

全てのナノマシンのコントロールを司る、 「ブレイン」 の存在だった

彼の目は的確にその位置をとらえ、そしてまた、彼の剣の太刀筋も、ナノ・レベルであるその存在を十字に切り裂くという事をやってのけた

コントロール元が破壊された以上、再生などできようハズもない

・・もっとも、再生ができなくなっただけで、まだ危機が去ったワケではない!

ガンマが再びデストロイのコクピットに戻ろうとした時、エリクシルは粒子砲を乱射し始めた

攻撃を受けて、デストロイがのけぞり、エリクシルから離れてしまう


・・だが、相干渉フィールドは作動できなかった


次の瞬間、瞬きをするようなタイミングの、その一瞬の時間がエリクシルの時を奪っていた


「・・・くぅらぁぁぁぁぇぇぇぇぇぇぇっ!! 一・刀・両・断ッ!!!!


フォトン・サーフィング・ブレード

4・50メートルにはなろうゼファイラスの得物は、確実にその姿を真っ二つにしていた

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思い出し終わった所で、俺は最後に放った一刀両断の格好良さに自分でうっとりしていた

・・そういえば、ガンマはどうなったのだろう?


「ううぅ・・ん・・・」


・・思い出そうとすると、セラの寝ぼけたような声が「耳元」でした


「・・・・耳元・・?」


目を見開いて驚いた

セラが、俺の横ですぅすぅと寝息を立てている・・・・・

そして、俺の上に何かが乗っかるような重さがあったが、その正体もすぐに分かった

・・メイの奴だ、こっちは・・・


どうして二人がここで寝ているのかさっぱりわからず、俺の頭は混乱する

・・そういえば、アイツを倒した後の記憶も随分と曖昧なモンだ

倒してから、どうやって俺たちはここまで戻ってきたんだ?

・・とりあえず、まずは二人を起こそうと・・

・・したら、二人とも同時に目を覚ました


「・・お兄ちゃん?・・・・あれ、なんで私・・お兄ちゃんのベッドに・・って えぇぇぇぇっ!?

ふぇっ!?どうしてロディがボクの部屋にいるのぉ!?

「・・落ち着け、おまえら」


ロディは冷静に、あくまで冷静になだめようとするが・・

不可抗力とはいえ、今の状況は勘違いの対象には大いにうってつけだった


「・・まさか・・まさか私たちが寝てる間に・・・?!」

「・・だから、落ち着け・・・・・・」

「えっちーっ!!ぷらいばしーのしんがいーっ!!」


ずどっ!!


景気の良い音がして、ロディの顔面とボディにセプター化パンチと、セラの右手が打ち込まれた

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・・数分後・・


事務所ではパーティーの準備が整っていた

定番のクラッカーや、派手な万国旗や、とてもパンだけで生活していた日々が嘘のように感じられる装飾が施されている

ロディ達が帰ってきた後、ネスとシードとで準備したのだ


「おはよ、ネス・・・・・って うひゃっ!?

「あや、お目覚めになりましたか?メイ様」


にこにこ笑うネスの背後、窓ガラスの向こうに映るのは・・巨大な、鋭い「目」だった

・・低いうなり声も聞こえている


「びっくりしたやろ?・・「デストロイ」なんや」


シードが窓から身を乗り出して、その「目」の下あたりをぺしぺし、と叩いた

機嫌の悪いようなうなり声を上げるデストロイ

エリクシルとの戦いで半壊した彼は、道路に座り込むような形で事務所の前に置いてあった

・・同時に、その向こうの海には・・ロディ達と共に戦った、ゼファイラスが朝焼けの中に燦然とそびえ立っている

いつの間にか降ってきた雪がキラキラと輝いて、それらの光景を一層美しいものにしていた


「・・・ふぇ・・ボクが合体してないのに、なんでゼファーとドーマとユニバリスは合体したままなの・・?」

「さぁ・・?・・・昨日は大変でしたからねぇ・・そんな事気にもなりませんでしたよ(汗)」


ロディ達から応答のないゼファイラスとデストロイを何とか引っ張るように帰って来たのは、共に戦ったリィズ達のギアである

事務所まで来た所で何とかコクピットが開くと・・ロディに寄り添うようにして、セラもメイも、皆で眠り込んでいた

引きはがそうにもしっかり彼を掴んで離れないため、シードやネスが苦労してロディの部屋まで運んだのだった


「・・そ、そうだったんだ・・・(汗)」

「どうしたんですか、そんなに真っ赤になって?・・・・」

「・・それが・・・・ね」

「・・・・イヤ、言わんでもええわメイはん・・・」


メイの後ろから入ってきたロディの姿を見て、シードは言葉を切った

・・10ラウンドを越えた後のボクサーのように、フラフラと歩いている

鼻血と腫れ上がった頬、そしていかにも痛そうに抱えている腹部のダメージ

それだけで何があったかは容易に想像できた


「・・おう・・・何がなんだかわかんねーけど、おはよう・・・」


ロディはそのまま、ふら~・・とした足取りで部屋の壁に寄りかかった

・・その後ろで、セラが話を聞いていたらしく、顔を真っ赤にしてうろたえていた


「・・俺さぁ・・・」

「はい」

「・・・バカでスケベで変態か?」

「武器マニアとか、熱血バカとかは付くと思いますが」


・・それは先ほど、セラとメイから浴びせられた言葉の一部だった


「ご、ゴメンねロディ・・」

「・・・KO寸前まで追い込んでそういう事言うか?」

「うう(泣)」


・・とりあえず、ロディは本気で怒ってはいない

・・というか、怒ってすらいない


無事に帰ってきていて、そして今日からいつもの日々に戻る

・・それも、母を探すという目的を達成して、新しい生活が始まる・・


・・それが表情には表せないほど、とにかく嬉しかったのだ


「そうだ、ガンマはどうなったんだ!?」

「私ですか?」


後ろから声がして、デストロイを眺めていたロディはくる、と振り返る

・・黒い外装の、モノアイが珍しいIFR・・間違いなくガンマの姿だ


「エリクシルの爆発に巻き込まれましてね・・デストロイと同じ、右腕を取られましたが、この通り問題ありません」

「だ、大丈夫?・・痛くないガンマ?」

「ええご主人・・大丈夫ですよ」


ガンマは穏やかにメイを諭す


「・・母さん達はどうしたんだ?リィズもジジイも詩亜も誰もいないじゃねーか?」

「フィア様達はお買い物ですよ、それからリィズ様達は夕方には戻るそうです、色々仕事があるそうなので・・」

「警察も大変だなぁ・・こんだけ大事になったっていうと・・」

「ゼオ様達は・・」

「いやぁセラちゃん、やっぱり可愛いねぇ♪」

「きゃぁぁぁぁぁっっ!!!!」


ずごんっ・・と事務所全体が揺れる音


「・・あーあ・・こりゃ完全に伸びてるねェ・・」


音を聞いて上がってきたアキナがつぶやいた

ハルナに至っては呆れて声も出ないらしい


「・・ご・・ごめんなさい・・・・」


セラ、本日2回目の謝罪である

・・色ボケジジイは、右手の一撃をモロに食らい・・それからぴくりとも動かなかった(笑)


「・・・楽しそうでいいねぇ・・・(苦笑)」


・・ロディは皮肉のつもりでつぶやいてみた

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セルムラントを離れ、海の向こう、「S.G西安支部」では・・


「・・よかったのか?私はあと一週間近く・・」

「刑期なんていーでしょ、私の権限で撤廃してあげるわ」


リィズとゲイル・・何故か、S.Gの制服を着た彼が格納庫にいた

ラルフや整備班のメンバーが、戦闘で汚れたGスパイラルと、Gバードとを洗浄している

その様子を見上げながら・・二人はある会話をしていた


「だから、代わりに私の部下としてキリキリ働きなさい」

「・・・・・」

「さもなきゃ、難クセつけて刑務所に逆戻り、しかも数十年くらいオマケくっつけるわよ♪」


・・何か言いたげだったゲイルの顔が、さ~・・っと青ざめていく

リィズは彼の戦闘センスを見込んでの事だったのだが、いきなり脅しから始まるというのもどうだろう(汗)

・・こんな事になるなら、リベリオンに乗ったり、ユニオンの連中に協力したり、人類を救おうとしたりしなければよかった

良いことをしようとしたら、こーいう事になる・・・

ゲイルが悪事に荷担するようになったその理由とは・・「善意が必ず裏目に出る」という事のせいであった


・・だが、今の彼はそういう事をふっきれたらしい


「・・まぁ、そういうのも悪くないな」

「会社はもうないし、仕事ないんだから選択する余地ないでしょうに」

「確かに(汗)」


高笑いするリィズの隣で、彼は今までにない笑顔で、笑った

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「ちょっと出かけてくる・・」


そう言って、ロディはメインターミナル前にやってきていた

・・街は破壊がなかったためか、戻ってくる人々が忙しくしているのが目立つくらいで混乱はない

セルムラントの市街地・・地球自体は全宇宙において、一番安定した場所だった

海のど真ん中に巨大なガーディアンの残骸が佇んでいるため、それの撤去は一苦労、だろう


ロディは最後のつもりで母と来た展望台に、立っていた

・・まさか生きて帰ってこれるとはな・・っていうか、あんなあっさり片づくとは思いもしなかったし(汗)

ふっ・・と顔がゆるむ


ここから眺める景色も、悪くはない

夕暮れ時になって日が陰る・・・斜陽とかそういうモノに興味のないハズの彼は、それに感動していた

海岸線沿いに視線を動かせば、ぽつんとした通り・・ユニオンリバー事務所もかろうじて見える。

・・近くの道路にはまだデストロイの足跡がいくつか残っているし・・


ロディは母と、もう一度皆の事を考えて・・懐から出したレイノスを構えた

反対側からもう一丁のレイノスが現れる・・こちらは師・マテリアのもの。


「最後はあんたのおかげだったよ・・ありがとう、お師匠。」


ロディはレイノスの弾丸を師のレイノスに詰めて・・大きく振りかぶって、空に向かって一発、撃ち込んだ

ぱん、と乾いた音が響き・・師の遺品は、持ち主の手を離れても日々しっかり整備されている事を証明する


・・さぁて、これでユニオンリバー社は・・


ロディは一瞬だけ含みのある笑いを浮かべたが・・すぐに、間の抜けた大あわての表情になった


「手をあげろ!いきなり発砲とはどういう事だッ!」


すっかり忘れていた事だが、ここは展望台の中である・・。

ロディは今しがたまでの真面目な表情もすっぽかして、拳銃2丁を持って大逃走劇を繰り広げる事になった


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