第10話-3

「かんぱーい」

「・・乾杯」

「完敗。」



どがどがっ!・・と一斉にシードへのツッコミが飛ぶ


「ちょ・・ちょいとキツイであんさんら・・・(がくっ)」


・・さて、ボケ倒しは放っておいて・・


「そんじゃま、ぱーっと飲んだり食ったり歌ったりしてくださいな!」

「張り切って行こ~!!」



司会進行はネスの予定だったが、いつの間にかハルナとアキナがマイクを独占していた

ネスが隅っこの方でいじける中、ユニオンリバー事務所で、近所迷惑な大宴会が幕を開ける

・・「戦勝記念&フィアと再会&クリスマスイブ」大宴会

ユニオンリバー主催の、これまでで最大級の催し物だった


「結局お前ら、寝てただけだな?」

「っさいわね・・あなたみたいに無神経に出来ちゃいないのよ」

「しっかし大将もやるねぇ、あの状況で勝っちまうんだから♪」


ロディはリィズ、ゼオと雑談に興じる

三人とも手にしたグラスには酒が入っているのだが・・ここで一つだけ問題が・・


「っぷはー!!・・やっぱめでたい席にゃ美味い酒だぜェ・・」


ゼオが一気飲みの後でくるり、と振り返る・・

そういえば隣のこの二人は・・


「・・そういやよぉ、大将とお嬢はまだ 19歳 じゃなかったかい?」


ばぶぅっ!!と勢いよく吹き出すリィズ


「・・・・・・や、やぁねぇ?・・これは・・ウーロン茶よ・・(汗)」


いつも基地にいる時は普通に飲んでいる(そして部下達が不祥事隠しに苦労している)

・・だが今は警察の宴会ではなく、一般人もいる(汗)

バレて密告でもされようものなら即日解雇の可能性は高い


「・・ま、今日は無礼講だろう♪あんたも飲め飲め!!」


たった一杯でアルコールが回ったのか、えらい上機嫌にゼオが一升瓶を傾けた


「・・・・」


ロディは黙々と飲み続けている(別に未成年だから・・とかそういう迷いはないらしい)


「お兄ちゃん、お酒は20になってからだよ?」

「無礼講」


セラの言う事も聞かず、ついに一升瓶をそのまま口にするロディ


「ま、マスター・・!?」

「おうおう、やれやれロディはん!いよっ!この「若」社長!!」

「誰が「バカ」社長だとぉッ!?」


ロディの放ったグラスの直撃を受けて、シードは再びダウンした


「ったくぅ・・どいつもこいつも俺ぉバカにしやがってぇ・・」

「・・・・スタンフォード君?」

「マスター、目が据わってます・・よ・・・?」


ネスとリィズ・・他で騒いでいたゲイルやゼオ達もぴた、と止まる


「な、何飲んだんですか!?」

「ふむ・・このラベルには 「激・究極!アルコール度98.3%」 ・・とありますな」

「・・・まんまアルコールじゃないのか?」


ゲイルはそう言って一口なめてみる・・

・・思わず口を押さえて数歩後ずさりしてしまった

ところが、当のロディは普通の酒を飲むように・・グラスをぐびぐびと一気のみしている


「別におかしい所はぁ・・ないですよぉ・・?」


見ればレオネも上機嫌でごくごく飲んでいた

ラルフが急いでグラスをひったくる


「だ・・ダメですよ!!そんなもの身体に悪いッス!」


しかし、レオネは特におかしい所はない

・・いつも通り、きょとんとした顔でとられたグラスを見つめている


「だ・・誰なんだこんな危険な酒買ってきたのはっ!?なんかの罰ゲームにでも使う気だったのかァ!?」

「・・あ・・ごめんね・・それ私が買ってきたヤツ・・」


叫ぶラルフの声に手を挙げたのは・・今にも暴れそうな危険人物の母親、フィアだった

・・唖然としてしまう一同(一部除く)


「さっき買い物に行った時にぇ・・あたしがお勧めしたんだにょん♪」

「サクラ様・・そういう見た目面白そうな物に手出すと十中八九はエライ事になりますから(汗)」

「・・もうそのエライ事が起きそうだがな」


ネスがため息をつくかつかないかで、ロディがレイノスを抜くのが見えた

思わずセラが駆け寄って右手を振りかざす


・・しかしその手は掴まれ、「攻撃」のために取った一歩分の間合いは一瞬で詰められてしまう・・


「セラぁ~?・・あんまり人殴ってばかりはよくねぇぞ~?」

「っ・・!!」


素早く掴まれた右手をひねりほどき、左からの蹴りに移行する

・・お兄ちゃんが暴れ出す前に何とかしないと・・!!

いつも出している被害に比べて、酔っぱらっているこの状況では何が起きる事か・・!

しゅっ・・と風を切る音、そしてセラの蹴りは兄の腹部にヒット・・・


「う・・うそぉっ!?」


ロディはレイノスを使い、銃身だけでこの攻撃を受け止めていた

酒をもう一杯胃に流し込んでから、上着を適当に放った

ずん、という重い音がして地面に・・いや、倒れているシードの上に落着する上着(重量不明)


「熱っちぃなぁ~・・ほら、お前も脱げよ」

「や・・やめっ・・・」


お兄ちゃんなんて・・・・いつもなら簡単に振りほどけるハズなのに!?(少しヒドイ)

ネスやガンマが止めに入るが・・


「ほら、おめーらも熱いだろ?氷とか水とか持ってこいよ~!」

「そりゃマスター!!あなたが自分で危ないお酒なんか飲んだから・・!!」

「なんだ、お前も飲みたいのか?」


頭からグラスの中身を引っかけられるネス

・・途端に・・彼の頭部から「白煙」が吹き出した!


「・・・・・な゛・・」


なんてことをするんですか!?・・と言いかけてショートしてしまうネス

防水くらいしてあるハズなのにどうしてっ!?・・と皆がツッコミそうになる


「今!」


ガンマが隙をついて、彼が抱えていたグラスと一升瓶を奪い取った


「ナイス、ガンマ君!」


リィズが言うや否や、酔っていない一同は次の問題に目を移す

アルコールで自制の効かないロディはセラをひん剥こうとしている

彼女が抵抗できない程に凶暴化していると言うことは・・


「ロディ!!セラをいじめちゃダメだよッ!!」


ちょっと観点がズレているような気もするが、テーブルを吸収し両腕をセプター化したメイが強力な拳を放つ!

・・今のロディを押さえるには強力な一撃しかあるまい!


「あう・・・」


しかし、地面にうずくまりダメージ部を抱えて苦しんでいたのは、メイの方だった

ロディが間合いを詰めて彼女の額に「デコピン」をかましていたのだ

思わぬ攻撃+額を焼かれたようにじんじんと響く痛みにメイは額をおさえて涙をボロボロこぼしていた


「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~・・・・・・(泣)」

「あーうるせぇ・・・・・うん、そうだな・・お前らも飲め飲め♪」


行動・言動が意味不明になりつつあったロディだが・・ついにセラの口に無理矢理酒のグラスを突っ込んでいた


「ってなんで今没収したハズの瓶とグラスがッ!?」

「・・ゴメン、あたしもウチから持って来ちゃって(汗)」



酒が自宅にあるような家・・つまり、ゼオの屋敷にあった物をアキナが無断で持ってきていたのだ(面白そうだから)

・・同じ酒があったというのも問題だが、それがあの男の手に渡ったという事はこの世の終わりを意味していた

・・酔えば酔うほど「ヤバく」なる


「・・・・・えへへへ・・・・」

「・・目がヤバイぞ、スタンフォード妹・・」


ゲイルが「敵に間違われて攻撃された時」以上の恐怖を感じるのと同時に・・


事務所は、大戦乱の舞台と化した(笑)


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・・・・・

・・・・

・・・

・・


・・・・あり・・?

目を覚ました俺は、何故か地べたに這いつくばっている事に気が付く

・・しっかし・・なんか、清々しい朝だな・・


「・・・・・」


顔を少し上げると事務所の壁の所々に穴が開いているのがよく見える

・・銃撃戦でもあったのか?・・昨日は宴会しかなかったハズだが・・

周囲を見回すと、皆がばたばた倒れているのが見えた

・・酔いつぶれたにしては、皆目を回して気絶しているようにも見える(若干名を除き)


「・・おにーちゃん・・・・」


ぎゅー・・・と首が絞まって、ようやく背中にセラがくっついている事に気が付いた

・・窒息寸前の所で首に回されていた手をほどく・・

妹は俺の名を呼びながらもぞもぞと呻いていたが・・起きる気配はない


「・・イヤ、ホントに・・・・何があったんだ・・?」


俺はしばし呆然としているしかなかった


・・自分がこの混乱の元凶である事など、一切知らず・・・・(汗)


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