第11話-1



「光の剣を使う白い巨人」・・「白いギア」を駆り、並み居る凶悪な敵を次々にたたんでいく

逃げ出した敵を追い、二丁の重そうな拳銃を振り回して銃撃戦

最後には銃弾の雨の中を駆け抜けて、一気に敵を一網打尽にする!!・・・・



街中で行われたその男と、犯人達の銃撃戦・・

・・騎士のごとく正々堂々と一人で戦いを挑み、勝利する

「白いギア」は彼の声に答えて、咆える


「騎士の男」の言葉に、一つだけ聞き覚えのある単語があった

「ユニオンリバー」と・・


少年は彼の事を「騎士のように見えた」としきりに語ったが、実際の「騎士」は敵との銃撃戦で街へも多大な被害を及ぼした「破壊神」であった

そんな「破壊神」・・・もとい、「騎士」に憧れを抱いてしまった少年・・果たしてこの先、どんな大人になるだろうか?



・・ちなみにこれは、今から10年も前の話である・・

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3020年現在

セルムラント・・「喫茶ユニオンリバー」


・・少年の憧れ「白い騎士」は今日も敵と格闘中だった

接近戦だ、至近距離・・一瞬の隙が死につながる世界!

敵はぎょろりとした丸い目を鈍く光らせている

「騎士」は素早く、手にした短剣を振り下ろした・・・!!


「お兄ちゃ~ん、デミオム3つ追加~!!」


ウェイトレスの服装をした妹の声が、客からの注文を告げる


「おう、了解!」


騎士は気合いたっぷりに承諾すると、「敵」をささっとダシの入った鍋へ片づけてコンロの火をつけた

・・魚は煮込み加減が肝心だ。


彼はそんな事を思いながら、意識せずに右手でタマゴを三つ割った

彼の隣では「サムライ」が野菜を切り刻んでいる


・・今日も「厨房」は戦場だった


「ロディ、ガンマ、そろそろアレやらないとまずいよぉ?」

「アレか」

「アレですな」


騎士とサムライ・・要するに「ロディ」と「ガンマ」の二人は「メイ」の声に答えるように頷いた

おおっ!・・とフロアの客がどよめき、全員の視線が厨房に集まった

メイやセラ、会計のネス達もしばし手を止める


「獅ッ!!!」


ロディが叫んでボウルと鍋を同時に放り投げる

ガンマは跳躍して両者を空中でひっくり返し、背中の二刀「炎皇」「雹星」を引き抜いた


「隼ッ!!!」


そうこうしている間にもロディは次々に調理器具をとばす

ガンマは二刀の力・・炎と氷を使い分けて次々に材料を調理していく


「犀ッ!!!」


回転するようにしてロディは次々と調理器具を投げる・・・

それと同時に、彼の手は材料加工を目に見えない程の速さで行っている


「龍ッ!!」


着地したガンマは降ってくる材料を次々と食器で受け止め、ロディはそれを受け取って鬼神のごとき速さでカウンターに並べる

・・すべての調理が完了するまでわずか1分、調理した料理の数はおよそ90・・・



「奥義:四獣王の陣ッ!!」


・・客から一斉に喝采が起こった

これぞ二人が厳しい修行の末に会得した「コンビネーション」である

わざわざガンマが剣を炎皇、雹星に戻したり、ロディがギアナ高地で特訓を積んだりという結果・・

昼時の忙しい時しかやらないが、もはやここの名物として知られているパフォーマンスの一つである


・・にっ・・と満足そうに笑って、ロディとガンマは拳をあわせた



・・現在のユニオンリバーは料理を運ぶウェイトレスが4人、ウェイターも1人増えていた

コック達に関しては見ての通り

レジ係もネスとシードが交代で受け持っている


・・快調そのものでここまで来た、喫茶店経営

・・もはやレストランとか軽食屋と呼んだ方がいいような気もしないでもない・・

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閉店時間・・


「お疲れさんよ~」


食器洗いをしながら俺はフロアのウェイトレス達に声をかける

セラ、メイ・・そしてバイトで雇ったディータ、アルの子供達であるルナ&レナの兄妹

各々に席につくと、ガンマが夕食をテーブルに置いた

ネスは集計を始め、シードはパンをくわえながらフロアの掃除を始める


・・にぎやかになったモンだ、ここも


しみじみ思うのは客が入っている時ではなく、こういった休憩のひとときだったりする

・・セラはもうすぐ19歳か、大人になったなぁ・・

メイは・・成長しねぇな(汗)


何かを察知したのか、じっと俺の方をにらんでくるメイ


「今・・何か考えたでしょ~?」

「・・・い、いや?」


・・感は鋭くなったようだ・・


「レナ、お前もうちょっと愛想よくしないか?」

「・・・昔シュウさんにもそう言ったんですか?・・・・俺は十分に愛想よくしてるつもりなんですけど」


・・うっわぁ・・可愛くねぇ~・・


「レナぁ、顔より先に口の聞き方なんとかした方がいいよぉ?」

「・・ルナ、そーいうお前はコケる癖なんとかした方がいいよ。」

「だってぇ~・・転びたくて転んでるんじゃないよぉ~・・・・・(泣)」

「・・こらこら、泣かすな(汗)」


アルとルインの子供達は正反対の双子・・容姿は似てるが、中身はてんでバラバラだ

レナはアルとルインの「特技」とマイナス面を受け継いだのか、色々な事はできるが生意気で可愛げというものがない

一方でルナは平々凡々としているが・・ドジ踏む回数が「異様に多く」しょっちゅう泣いている


・・一人黙々とメシ食ってるのは料理人志望のバイト、ディータ

セラの大学の友人で、どうも俺とガンマに弟子入りするつもりで来たらしい

一見すると軽いノリの少女だが・・確かに、俺達の味を研究する目は真剣だ


「ディータちゃん、ノート買い換えたら・・?」

「ン?・・ああ、コレっスか?・・・・何冊も持ってると面倒だから、コレに書き足してきゃいいかなって(笑)」


・・料理以外はかなりテキトーなヤツだが(汗)

セラが眉を下げて見ているノートは、かなりゴチャゴチャしているらしい


「師匠~、ところでいつになったら「四獣王の陣」とか「風林火山の舞」とか教えてもらえるんスか~?」

「あのなぁ、あれは俺とガンマが二人で編み出した合体奥義だぞ?・・一人でやろうなんて無謀だ」


・・というか、アレはガンマと炎皇、雹星の能力が半分あるからな・・強力な急冷装置と加熱器でもあれば一人でできるかもしれんが(笑)


「ていうかいい加減「師匠」って呼ぶな、俺は店長orマスターと呼べ」

「じゃぁ「お兄ちゃん」って呼・・・」


すっかーん・・

ディータの頭を俺の投げた小鍋がはねた


「・・・いいからとっととメシ食って帰れ」

「ふふ・・これも愛の鞭・・修行の一環というワケっスね?「この痛みに耐えろ」と!!」


・・ヤベ、打ち所が悪かったか?・・・

違う、こいつはこーいうヤツなんだよな(汗)


「さて・・それじゃガンマ、後は頼むぜ」

「了解しました」



ガンマに厨房の片づけを任せ、俺は2階へあがった

・・以前は悪党やら何やらトラブルと戦っていたが、俺はココで客と戦う事にも楽しみを感じていた

そうだな、暴れるだけが人生の楽しみじゃねぇよな・・♪


セラを助けて以後は、俺はT.Cに対して何の未練も持っていなかった

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・・セルムラント「メインターミナル」


この国の中枢である巨大なタワー・・

その目の前という位置に、まるでヒーロー物の秘密基地のような物々しい建物があった


・・ 「トラブルコンサルタント・ユニオンリバー社」


そう・・この南○コネクションとビッグ○ァルコンとマックス○グマを足したような80年代ノリの建造物は「今のユニオンリバー事務所」なのだ

開業した社長・ロディは喫茶店のコックに戻ったため、会社経営はアルが社長代理として請け負っている

アルはロディに負けず劣らずの熱血バカで、思い切った采配と意外な戦略を用いて数々のトラブルを解決してきた

2代目社長ではなくあくまで「代理」なのは、ロディに対する彼なりの敬意とか、そーいうものである

・・彼は「いつかあの人が気まぐれで戻る時があるかもしれないから」とも言っていたが・・(汗)


ところでこの場所は「メインターミナル前」、つまりセルムラントでの「一等地」・・当時の貧乏会社からは考えられない事だ

この建物の上層部に、それこそ秘密基地のような趣味のだだっ広い部屋があった

映画館より大きく、コンサートホールより小さい、そーいうスペースに巨大なスクリーンと「それっぽい」イスとかデスクとかが設置されている

二段ほど高い位置のデスクに、水色の髪の男・・とても40代とは思えない、アルフレッド=マイトナーの姿があった


「あの、社長代理」

「・・だからさ、アルでいいってば(汗)」


思わず普通にしゃべっていたアルだが、咳払いを一つすると急いで体裁を取り繕う

・・社員の一人が何かのディスクを差し出していた


「ン・・な、何だコレ?」

「シークレットレベルの依頼だそうです」

「シークレット・・・??・・・そんな重要な仕事、久しぶりじゃないか♪」


こういう時楽しそうにするのは彼の悪い癖だろうか?・・難しい仕事ほど燃える男らしい


「モニターに出してくれ」


・・微妙に「雰囲気」を出して指示するアル

・・この事務所がそーいう形なのも、実は彼の趣味とかお遊びが反映されているが故なのかもしれない・・


にわかに、ざわ・・というどよめき

その場にいた十数名の社員達は、モニターの情報に騒然となった


「コレは本気なのか!?」


・・「護衛」「暗殺」「首相」「パレード」・・

情報をつなぐと、恐ろしい計画が明らかになる


セルムラント首相暗殺計画・・

狙われる理由は恐らく、首相自らが管理・封印しているロストテクノロジィ(昔一度狙われた事もあるし)だろう

・・場所はいつかロディ達がS.P.Fの裏取引調査で潜入したコロニー「アルト」

そのアルトが新装され、観光コロニーとしてオープンするため、パレードが催される

・・「コロニーを使用した、スケールとしては最大級の観光地」のイベント・・各国各界著名人が集められるのは当然・・

・・問題なのは、この情報が「犯行予告」だという事だ


「よっぽど自信があるようだな・・全く・・」


アルはニヤ・・と笑って、席を立った


「よっしゃ!行くぞみんな!今回は報酬もデカイ!」

「あの、社長代理・・」

「だからアルでいいってば・・・じゃなくて、なんだ?」

「こちらがもう一つの依頼なのですが」

「・・・・は?まだあったの?」

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第11話「2人目の少女」


もう一つの依頼・・アルに呼ばれたのは新入社員のオミ・・・今年16になる若手のT.Cだった


「宗谷臣、君に重要な仕事を任せる」

「本当ですか!?・・よかったぁ・・このまま猫探しや犬探しや白ワニ探しで一生を終えるのかと思って心配しちゃいましたよ~」

「・・そ、そうか・・(汗)」

「して、仕事というのは?」

「・・・・この少女の護衛だ」


少女、と聞いて思わずオミの脳裏を色んな想像が駆けめぐる

・・可愛い女の子と密着24時?みたいな(笑)

容姿はそう悪くないオミだが、学生時代からいまいち恋という物に縁はなかった

・・・こーいう依頼で、なぜかそーいう方ばかり期待してしまうらしい


だが、モニターの画像を見せられてオミは真っ白に燃え尽きた


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・お守り?ですか?」

護衛 、だよ」

「・・・わかりました・・」


しゅん、とうなだれるオミ・・・

無理もない、写真に写っていたのは当人の期待した 同年代、あるいは少し下くらいの少女 ではなく

どう見ても 6~7歳くらいの年端もいかない少女 だったのだ


・・・さらば、僕の初恋よ・・・・


気の早い妄想恋物語に別れを告げ、彼は早速現地へと飛ぶのだった



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