第11話-2



学園卒でそのままユニオンリバー社に入社した、目立つ特徴のないヒラのルーキーだ

・・そう、僕は目立たない・・派手な技能があるでもなし、ずば抜けて神経が良いわけでもなし・・

それでもアルさんは僕を雇ってくれた・・あの人の事だから何か裏があるのかもしれないけど(汗)


僕は騎士・・ローディス=スタンフォードに憧れてT.Cになろうと昔から決めていた

だから基本的なものは持っているワケだ・・T.Cに必要な心構え、ミスがあろうが何だろうが、とにかく最後までやり遂げるという事(誰かの極論)


・・さて・・

シャトルに乗り、衛星港に到着し・・

僕はようやく、T.Cとして初陣を切る事になった

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・・衛星港内・・UD係留ドック・・


前にユニオンリバー社専用に設けられたナンバー21のドックはもちろんのこと、今では5つもドックが使用できるようになっている

ほとんどのメンバーは自分のドック、自分の住んでいる星の衛星港などにUDを置いているため、たった4隻のUDでも事足りていた

・・そして、最近になってもう一隻増えた所だった


「・・航宙戦艦ブレードバッシャー・・」


オミが見上げるのは・・今ではアルの乗る旗艦として有名なブレードバッシャーである


「・・初めて間近で見た気がするなぁ・・」


それは今まで地上で雑用的な仕事ばかりやらされてきた故だろうか(汗)

・・気を取り直して隣の数字のドックへ歩いていく

ブレードバッシャーの隣、ナンバー22・・すぐそこに設置された新造戦艦

オミが任されたのはこの船だ


「UD-3001・クオリファイドランサー」

「ようこそ、オミ様。」

「うわ・・喋ったっ!?」


オミがブリッジに入った瞬間声が・・しかし誰もいない!?


「私は当艦の管制システムです。・・ま、気安くクオちゃんとでもお呼びください」

「・・・・クオちゃん?」

「はい、結構ですよ(笑)」


突然立体映像で現れたクオリファイド・・「クオちゃん」に唖然とするオミ

誰もサポートにつかないので気になってはいたが・・まさか船にこういう仕掛けがあったとは(汗)

現れたその外見は少年とも、少女ともとれる

・・ま、どっちかなんて意味ないけど・・立体映像なんだし(現実論)


「とりあえずさしあたって言っておくことがあります」

「ン?」

「あんまりガタガタ騒いだり吠えたり私に逆らうようなら、とっとと宇宙に放り出して星クズにでも何でもなってもらいますのでよろしく♪」

「・・・・・・・・」

「返事は?」

「YES。」


クオリファイドは後ろを向いて妙なオーラを出して威圧していたが・・振り向くといきなりにこっと笑った


「それではオミ様♪早速出航とまいりましょう♪」

「・・・・・・・・」


釈然としないものを感じつつ、こうしてオミの第一歩は始まるのだった。


「あ、もう一つ言い忘れてました」

「何?」

「私、出来たて新造戦艦ですので・・・多少 加減圧 とか、 酸素供給 とか間違えてもにっこり笑って許してくださいね♪」

「・・・・・それは非常に困るんだけど・・(汗)」

「さ、注意事項も確認した所で・・あらためて、出航とまいりましょう♪」

「・・・・・いや、確認しただけじゃ意味が・・・(汗)」


・・オミの言葉を聞き流して・・

クオリファイドランサーは、手続きを簡略化して宇宙の暗闇へと飛び出した

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数時間後・・目的地

・・惑星「プライマリー」・・


案の定クオリファイドによって散々振り回された彼は、足下フラフラの状態でこの地に立っていた

依頼人はすぐ近くにいた・・スーツ姿の女性

ボディガードが何人もついている所を見ると、ちょっとした金持ちと言った所か?

・・その足下に隠れるように、一人の少女がじっとこちらを見ている

青い髪に白い花の髪飾り・・長い髪は三つ編みにして、二つに分けている

余裕のあるふわっとした服装がいかにもこの年の少女らしい。


「それではオミさん、この娘の護衛・・しっかりとお願いします」

「ええ、それはもちろん仕事ですから!・・ユニオンリバー社の名にかけて!」

「瀬奈ちゃん、それじゃ・・大人しくしてるんですよ?」

「はい、おばさま♪」


瀬奈がオミの方へ移動する時・・女性の眉がぴく・・と微妙に動いた

気のせいか顔も引きつっているような・・


「どうかしましたか?」

「い、いえいえ・・なんでもないですよ♪それじゃ~・・」


逃げるようにいなくなってしまう女性+ガードの一団

・・なんだか、ヘンな感じの人たちだなぁ・・・


不安を感じていると、少女がオミのズボンを引っ張って何かを訴えている


「え~と、皇李瀬奈(おうり らいな)ちゃんだっけ?・・どうしたの?」

「・・どうしたの?じゃありませんわ」


・・突然むっとした顔になる「瀬奈」

オミはいきなりの事でさっぱり、といった様子


「・・ぼ、僕・・・何か機嫌を損ねるような事したのかな?」

「あ~あ~全く!その態度が気に入らないのですわ!・・・てっきりもう少ししっかりした殿方がいらすかと思っておりましたのに・・」

「・・・・・」

「こんな若僧丸出しのいかにも優柔不断坊やがいらっしゃるとは思いもしませんでした・・正直アルおじさまの目を疑いますわ」

「・・・・・」

「・・さっきから何をじろじろ見てますの?・・・いやらしい・・・・」

「イヤ、あのねぇ・・・(汗)」

「坊やはおうちに帰って寝ていらしたらいかがですか?・・私もお子様のお世話してるほど暇はありませんの」

「・・・・・・・」


な・・なんつー娘だ・・・・

オミの第一印象はやはり、例に漏れず「それ」だった


そう・・オミが護衛を依頼された少女、それは・・今までに何人もの「護衛」を請け負った人間達を言葉で潰してきた、とんでもない少女だったのである(汗)

ある者は胃に穴があき、ある者はすっかり自信喪失し・・ある者は自殺寸前まで行ったという(汗)


「・・・だから、いつまで見てるんですの?・・・まさか・・」

「?」


いきなり少女が泣き始めた


「・・うわぁぁ~ん!!」


近くを通りかかったガードマンの所へ駆けていく

オミはきょとんとして見守る


「どうしたんだい、お嬢ちゃん?」

「ぐすっ・・・ 「ろりこん」 のお兄ちゃんがはぁはぁ言いながら私に襲いかかってきたの。」

「な゛っ!?」

「お前か!こんな小さな女の子に手を出すとは・・社会道徳がなっとらんッ!!」



ガードマンはスタンスティック・・どころか、拳銃まで抜いている!


「誤解ですって・・ちょっと!?僕はT.Cユニオンリバーの・・・」

「怖いよぉ~!!(泣)」

「逃げるな!止まらんと撃つぞ!?」



・・しばし大混乱に陥る衛星港ロビーだった。(一部で・・)

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・・十数分後・・

瀬奈を抱えて逃げ出したオミは、何とかシャトルに乗り込んで惑星表面までやってきていた


「・・ふぅ・・全く・・何であんな事を?」

「気に入らないからですわ。・・・・それ以上の理由がございまして?」


・・この娘が幼い少女であるという認識はすっかり吹っ飛んだ

さらっと不満を述べつつも、涼しい顔でどこかよそを向いている

・・・護衛・お守り・・・いや、この仕事は思った以上につらい!


「・・瀬奈ちゃん、もう少し淑やかにできないの?」

「フ・・どの口が私をお呼びに?・・・軽々しく私の名を使わないで頂きたいですわ」


・・オミの両肩ががっくりと下がる

・・初仕事がこんなんか・・・お子様相手の子守りと思いきや、戦艦のコンピューターに脅されるわ、こんな子供に遊ばれるわ・・


「大体なんですの?あなたは私に一言も名乗ってはいないじゃないですか。それで一方的に話を進めようなどとは・・」

「・・・・・」

「低俗、低俗きわまりないですわ。自己紹介もまともに出来ない方に、私の護衛など務まるワケが・・」

「・・っ・・!」


オミは右手を握り込んだ

額には青筋が浮き上がり、怒りは頂点に達しようとしている!


「・・・手をあげられますの?・・・私のような幼子に?・・」

「い、いや・・・」

「助けて~!このお兄ちゃんが私をぶつの~!(泣)」

「だぁ~かぁ~らぁ~!!(泣)」



オミは再び瀬奈を抱えて走り回るのだった

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「・・それで?・・・僕は一体どこの誰から、彼女を守ればいいんですか?」


露店でジュースを買って瀬奈に渡す・・

その間にオミは手元のナビで本社と通信をしている

アルが画面に映る・・疲れきったオミの顔に一瞬ひいたようだが


「正確にはわからないが・・ここの所彼女は何度となく狙われているんだ」

「何故です?」

「さぁ・・詳しい事は「言えない」んだがな」

「・・・・・」

「とにかく、護衛が何度となく守ってきたんだが・・毎度何らかの理由で辞退したり、ダウンしてしまって困っていたらしい」

「・・・・わかります。」

「?・・・君も疲れているようだが・・大丈夫か?」

「ええ、ご心配なく・・・」

「それじゃ頼んだぞ、初仕事が大任で大変だろうが・・イザという時はクオリファイドを頼ってくれ」


・・あの人を人とも思っていないようなコンピューターをですか?


「ではまた、何かあったら連絡をくれ」


アルとの通信を終えて・・オミは大きな大きな、それこそ大きなため息をついた

すたすたと歩いて瀬奈の座っているベンチの隣に腰掛ける・・

彼女はにこにこしながらジュースを飲んでいる


「・・どう、美味しい?」

「・・・・・(にこっ)」


・・初めて子供らしい笑顔を見せたなぁ・・・

無言だったけれど、その屈託のない笑顔には無邪気な子供のそれが現れていた


「この程度の味で私の味覚が満足すると思いまして?・・・安上がりに飲み物で釣ろうなんて・・程度がしれています事(笑)」


・・この台詞回しさえなければ(泣)

オミは肩を落とし、重い空気に包まれた


「・・さて・・これからどうしようか?」

「どうするって?・・そりゃ、お家に帰ってミルクでも飲んで寝ていらしたら良いのですわ。」

「・・・・・・・」

「私は一人で行きますからご心配なく♪心おきなくお母様に甘えていらすのが良いですわ♪」

「だからさぁ・・僕は仮にも護衛で派遣されてるんだし・・」

「・・・ぶっちゃけた話、あなた頼りになりそうもないですもの」


ががんっ!!


・・クリティカルヒット

オミの心は完全に粉砕された


「・・・・・・・頼りない・・?」

「ええ、それはもう・・「もやし」がそこにいる、くらいにしか感じられませんわ。」


くすっ・・と笑う瀬奈

オミはさらにどんよりした空気に包まれていく


「そりゃ~・・・確かに僕は射撃が得意でもなければ、接近戦もさほどじゃないし・・でも、基本的な事は全部マスターして・・!?」


オミは話を途中で切って、いきなり瀬奈の手を掴んだ


「きゃっ!?・・何をしますの!このロリコン~!!」


わめく瀬奈をベンチから引っ張り、跳躍するようにして離れる


・・・瞬間


ががががががっ!!

マシンガンの銃撃が、彼らの座っていたベンチを「蜂の巣」にしていた


「あら?・・・」

「来ちゃったようだね!」


オミは拳銃を取り出し、数発銃撃の方向へ放った

反撃が来るであろうと予想して、素早くこの場より撤収!



瀬奈と共に逃げる・・一番安全な所は?


「クオリファイド、聞こえる!?」

「はいはい~♪なんでしょうか・・・・」


ナビに映ったクオリファイドの目がジト目になる


『・・ロリコン?』

「ちっがぁぁぁぁうっ!!!」

『じょーだんです知ってますよ、その方が護衛対象でしょう?・・とりあえず私の所まで戻ってきてください、援護くらいはしますから。』

「援護?・・・ちょっ・・衛星港からどうやってココに援護・・を・・」


いきなり空にゲートが開いた

様々なモノを転送するために作られた空間移動装置・・その中から、巨大な物体が降ってきた!


ずん、と落着する「機体」・・それは、一機のギアだった


「ゼファー・・!?」

『違いますよ、アレはゼファーの量産タイプ「ゼンガー」です』


ギアは白く、青いラインがそこかしこに走っている

アンテナがウサギの耳のように2本生えていて、全体的にシンプルなデザイン・・

・・間違いなくロディの乗っていた、ゼファーの姿に酷似している


「アレに乗って戦うのか?」

『ド素人さんが乗ったって貴重な次期量産機を壊すだけですよ。私が動かしますからさっさとここまで戻ってきてください』

「・・・・・」

「くすっ・・」


瀬奈が笑ったのでよけいに惨めになるオミだった


『ゼンガー遠隔コントロール開始、それじゃ一仕事と行きましょうか♪』


楽しそうに笑うクオリファイドに呼応して、ゼンガーはその目を輝かせた


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