青き天体研究所

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第十七話  救出:後編



「ケネス大佐、どうやらサンプルが逃げ出したようです。」

「何だと!?鼠でも紛れ込んでいたと言うのか!!」

そう言ってケネス大佐は基地内に指示を出す。

その指示を聞いて、兵の行動は今までより円滑する。

「何事だ?この騒ぎは・・・。」

ケネス大佐の後ろから仮面を被った男が現れ尋ねる。

「これは○○○様。どうやら鼠が入ってきたようで・・・。」

「そうか・・・なら俺が出る必要も無いな。」

そう言ってその男は何処かへ行ってしまう。

「相変わらず何を考えているのか分からない男だ・・・。」

ケネス大佐はそう呟いた後、捜索を開始した。






リュウセイは何かに導かれるように進んでいった。

まるで前から知っていたように進んでいくため、ライはただ驚くことしか出来なかった。

(まさか兄さんはこのことを見こうして・・・・。そんなわけ無いか。)

ライは何故リュウセイを潜入させたのか考え始める。

(確かアヤさんとマイさんの親は念動力の権威。だからと言ってそれが実証されているわけではない。

しかしもし彼がその念動力の使える人間だとしたら・・・。アヤさんとマイさんが捕まっていたのもそれが理由だったら・・・。)

不確定要素を組み上げていくのだが、確証も無いためこれ以上考えるのを止める事にした。

しばらく歩いていると、リュウセイ達は格納庫らしき場所へと辿り着いた。

ライは近くにある電源を付けるとそこには――

「これは・・・ヒュッケバインか?だが形状が・・・。」

「この機体は・・・。」

そこにあったものは量産型ヒュッケバインによく似た機体が2体置いてあった。

その内の1体にはトンファーらしきものが装備しており、もう1体には重火器が装備しあったのだ。

灰色に塗られた機体がその場の空気を重くする。

再び謎の頭痛が起き、リュウセイは頭を抑える。

その様子に気付いたマイはリュウセイの近くによっていく。

「大丈夫?」

「あ、あぁ。・・・ライ、これに乗って脱出するぞ。」

マイの声によって意識を取り戻したリュウセイはライに指示する。

「何を言っている。確かにこれに乗っていけば楽かもしれないが・・・。」

「もう四の五の言っている場合じゃない。それにこれに乗って逃げた方が良い様な気がするんだ。」

そう言ってリュウセイはトンファーを装備した方に向かっていく。

マイはリュウセイの後について行った。

「ああ、何だか調子が狂う。アヤさんあの機体に乗りますけど大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ。それとアヤと呼んでください。良い難いと思いますんで。」

「・・・分かりました。アヤ!付いて来てください!!」

ライはアヤにそう指示すると、重火器を装備している方に向かっていった。

マイがシートの後ろにいることを確認すると、リュウセイは機体を起動し始める。

―――『AR BERAD』機動。システムオールグリーン。

「AR BERAD?なんだそれは?」

「たぶん『アルブレード』と読むんじゃないかなぁ。リュウセイ。」

「『アルブレード』か・・・。武器も俺好みだし。行くぞ、マイ!しっかり捕まっていろよ!!」

「分かったリュウセイ。」

リュウセイはアルブレードのトンファーを使い、壁をぶち破るとすぐに外へ出て行った。

一方ライはもう一つの機体の機動を開始していた。

―――『ERUSYUNAID』機動。システムオールグリーン。

「エルシュナイデか・・・。おそらくあいつが乗っている機体の発展型だな。」

「どうやら向こうの機体は『アルブレード』って言うらしいわ。」

「そうか・・・。行くぞ!しっかり捕まってください!!」

「ええ!分かっているわ、ライ!!」

いつの間にかライと呼ばれるようになってしまっている事には気付かずにエルシュナイデを発進させた。






「ケネス大佐!アルブレードとエルシュナイデが起動しています!!」

「何だと?あの2機が・・・!」

ケネス大佐は驚きを隠せない様子であった。

実はあの2機は造ったがいいが起動することが誰にも出来ず、封印されていた機体なのだ。

「今すぐ量産型とゲシュペンストの発進、砲撃の準備をしろ!絶対に逃がすな!!」

「了解!総員第2戦闘配備。目標、アルブレードおよびエルシュナイデ!」

ケネス大佐の指示の下、彼らは発進準備していた。






「まずいな・・・。このままだとすぐに追いつかれる。」

「だったらこうすれば・・・!」

そう言ってリュウセイはG・レールガンをラングレー基地に向かって撃つ。

その弾丸は見事機体が収容していた場所に当たり、出撃不可能にした。

「よっしゃあ!!行こうぜ、ライ。」

「ああ・・・。」

ライはただ驚くしかなかった。

話によるとリュウセイは3~4ヶ月前まで普通の学生だったそうだ。

それなのに今の精確さ、はっきり言ってありえないことであった。

(3~4ヶ月程度でここまで上手くなるのか?もしこいつの師匠がいるのならそいつは化け物だ!!)

ライがそう考えた時、セインがくしゃみした事はまた別の話。

「リュウ・・・。今から何処に行こうとしているんだ?」

「そういえば言ってなかったっけ。ブラジルに停泊しているクロガネって言う戦艦に行こうとしているんだが・・・。」

そう言ってリュウセイはアルブレードを介してライの方を見る。

そのことにライは気付き話し始める。

「そいつの言うとおりだ。そこには副指令もいるって話だからな。」

「・・・あのさぁライ。いい加減に名前で言ってくれよ~。」

「五月蝿い!今は逃げることのみに・・・。」

ライが言いかけた次の瞬間であった。

突然後ろからビームライフルらしき光線がエルシュナイデの横を過ぎていったのである。

「今のは・・・!」

「ライ、後ろから敵が来るわ。数は5。」

「な!もう出発できるようになったのか!?」

「恐らく別の部隊から出撃されたものだろう。こちらも反撃を開始する。」

「よっしゃあ!そうこなくちゃ!!マイ、今から戦闘を開始する。大丈夫か?」

リュウセイはマイに尋ねる。

マイは首を縦に振り、話し始める

「私の事は気にしないで。リュウの好きな様に戦って。」

「分かった。・・・行くぞ、しっかり捕まっていろ!!」

そう言ってアルブレードは量産型に向かって突っ込んでいった。

「たく、あいつと来たら!アヤ、こちらも追撃します。」

「ええ、分かったわ。」

エルシュナイデは肩に装備していた2門のビームカノンを量産型に向ける。

アヤの誘導にもと照準はセットされ、2門のビームカノンは発射した。

そのビームに2体命中し、撃墜する。

「お、やるねぇ。よし俺も!!」

アルブレードは量産型に近くにより、腕に装備してあったトンファーで攻撃を開始した。

「オラオラオラオラオラオラ!!」

その掛け声と共に1体、また1体と次々と撃墜していく。

そして最後の1体になり、アルブレードはフィニッシュを決めるように強力な突きを出した。

その突きが量産型の動力炉に直撃し爆発を起こした。

当然至近距離にいたアルブレードも爆発に巻き込まれたのだが傷一つ付いていなかった。

アルブレードは戦闘が終了したのを確認するとエルシュナイデの方に近づいた。

「思ったより時間が経過した。急いでクロガネに向かうぞ!!」

「分かった・・・て、オイ。置いていくなよ!!」

リュウセイが話し終わる前にライはエルシュナイデを動かし先に行ってしまった。

リュウセイは不満ながらも後を付いていった。





「量産型ヒュッケバインが全滅だと!!」

「はい。0430時に発進した量産型は僅か5分でやられています。」

ケネス大佐は驚く事しか出来なかった。

アルブレード、エルシュナイデの能力の高さは一番よく知っているつもりだったのだが、これほどまでとは思わなかったのである。

しかもその2機が奪われて見せ付けられたのだ。ショックを受けて当然である。

「今すぐ戦艦の発進準備!私直々にあいつ等を撃ちに行く!!」

その命令を受けてオペレーターは驚くものの命令通りに動いた。

(認めてたまるものか!あの2機がここまで強いなんて・・・。)

ケネス大佐は発進の準備をし始めた。





先の戦闘から既に1時間が経過した。

さすがに操縦しているリュウセイとライに疲れが見え始めていた。

リュウセイの場合、潜入してから脱出するまで寝ておらず余計に疲れているのだ。

「あと少しでクロガネの停泊位置に着きます。それまで我慢してください。」

「分かったわ・・・。」

捕まっていた彼女達にも疲れが見え始めていた。

緊張の連続だったので当然と言えば当然なのだが・・・・。

あと数キロで着く・・・その時である。

突然2機に衝撃が走った。

「な、何なんだ!!」

「慌てるな!!恐らく艦砲だ。」

遥か後方にいる戦艦はアルブレードとエルシュナイデに向かって発砲し、次々とガーリオンを発進させる。

ガーリオンは戦艦の発砲を利用し段々とアルブレード等に近づく。

「クソ、このままじゃ進めないぞ。」

「・・・なるほど。それが目的か!!」

ライが気付いたときには既に遅かった。

数十体のガーリオンがアルブレード、エルシュナイデを囲み逃がさないようにする。

後ろからは戦艦が近づいていき完全に包囲されるのも時間の問題であった。

「さぁて。どうする、ライ?」

リュウセイは背中越しにいるエルシュナイデに向かって話し始める。

ライはしばらく目をつぶり考え始める。

「聞きたい事がある・・・。」

「何だ?手短に言ってくれよ・・・。」

考えがまとまったのか目を開け、なにやら準備をし始める。

「・・・お前の名は何だ?」

「へ、今頃かよ。リュウセイ、リュウセイ=ダテ!」

「リュウセイか・・・勘違いするな。お前を認めた訳ではない。ただ共に戦う仲間として聞いただけだ。」

「上等ぉ。ライ、背中は任せたぜ!」

「そちらこそ俺を落とすなよ!」

その会話が終了しアルブレードとエルシュナイデは一斉に攻撃を開始した。

アルブレードは正面の敵めがけてG・リボルバーを撃ち、目晦ましをかける。

その隙を突きトンファーで連続攻撃を開始した。

エルシュナイデの方は奪っておいたビームライフル2丁と肩のビームカノンを使い攻撃を始める。

一発一発確実に命中しておりほぼ一撃で撃墜していく。

「オラオラオラオラオラオラオラ!!どかねぇと死ぬぜ!!」

「前に出すぎるな、リュウセイ!」

エルシュナイデはアルブレードのコックピットめがけて撃たれたビームを撃ち弾き、撃った敵を撃墜した。

リュウセイはその事に気付いていなかった為冷や汗をかいている。

「あっぶね~。助かったぜ、ライ。」

「油断するな!まだ敵は大勢いるんだからな!!」

「分かってるよ!!」

そう言って再び攻撃しようとした瞬間、激しい衝撃の襲われた。

機体の損傷もその攻撃によって深くなってしまった。

『今だ!確実に落とすんだ!!』

いつの間にか近くにいた戦艦からミサイルが撃たれ、アルブレード等に攻撃を仕掛ける。

エルシュナイデはミサイルを撃墜するが全てを落とす事が出来ずミサイルが当たってしまう。

「ク、クソ!どうすれば・・・。」

「弱音を吐くんじゃない。こっちも考えているんだ。」

とは言うものの数が少なくなったものの周りにはガーリオンが、その後方には戦艦がいる為切り抜けるのは難しいのである。

(どうすれば切り抜けられる。考えろ、考え抜くんだ!!)

ライは必死に考えながらガーリオンを撃墜する。

リュウセイはG・リボルバーを使ってライの乗るエルシュナイデを援護する。

再びミサイルが発射された次の瞬間―――

突然ミサイルとガーリオンが全て撃墜され、戦艦には何かで斬られた跡があった。

「ふぅ、どうやら間に合ったようだな。」

「大丈夫か!?リュウセイ、ライディース!!」

声のする方向を見るとそこには斬艦刀を持つ2体の機体が現れた。

その2体は参式とスレイヤーであった。

『グルンガストにANX-01だと!?何故こんな所に!!』

「その声はケネスか?久しぶりだな・・・。」

参式とスレイヤーはアルブレード、エルシュナイデの前に立ち塞がり臨戦状態になった。

リュウセイはスレイヤーに通信を開く。

「セインか?助かったぞ!!」

「あのな~リュウセイ。戦闘中にプライベート通信するなよ・・・。」

「誰だ、リュウ。この人は・・・。」

マイは通信内にいるセインに向かって尋ねる。

しかしセインはその言葉を聞かずに戦艦に向かって攻撃を開始した。

「ケネス大佐、お久振りです。今すぐ引いてください。さもなくば殺します!!」

『その声は・・・ブルースウェアか!だが、引くわけには行かないのだよ!!』

そう言ってケネス大佐はスレイヤー、参式に向かってミサイルを発射した。

参式は参式斬艦刀を大きくしてミサイルを全て斬り落とした。

それを見計らってスレイヤーは弐式斬艦刀を使い戦艦の攻撃機関を全て斬り落とした。

「今は生かしておきます。しかし!もし俺たちの前に現れた場合・・・」

『チッ!!引き上げるぞ!このまま死んだら部下に申し訳がたたん。』

そう言ってケネス大佐が乗った戦艦は引き上げた。

その様子を見てたライ、アヤ、マイはただ呆然とするだけだった。





参式とスレイヤーの誘導の下、アルブレードとエルシュナイデはクロガネに収容された。

今までリュウセイが救出任務に就いていた事を知らなかったブリット達はただ驚く事しか出来なかった。

「生きてたのか、お前。」

「当たり前だろ!!ガ○ガ○ガーを全巻見るまで死ねるかよ!!」

「・・・・・・確かにお前はリュウセイだよ。」

その会話を聞いていたマサキは溜息をつく。

一方その頃、リュウセイとライに救出されたアヤとマイはレーツェルとテツヤに会っていた。

「アヤ=コバヤシにマイ=コバヤシだな。ようこそクロガネに。」

「助けていただいて有難う御座います。失礼ですがそちらの方は・・・。」

そう言ってアヤはセインの方を見る。

セインは何故かマイと話しており気付いていない様子であった。

「彼か。彼はディパインクルセイダーズの副指令、セイン=ブルースウェアだよ。」

「えっ!!本当ですか!?」

「信じないと思うんだが本当なんだ。」

レーツェルは苦笑しながら答える。アヤが驚くのも無理はないのだが・・・。

セインとマイは既に何処かに行ってしまったようだ。

「で、アヤさん。これから如何するんですか?」

「アヤで結構です。これからの事ですが・・・・・・・。」

アヤはしばらく悩んで話し始めた。

その頃ライは一人でエルシュナイデを見ていた。

『何故このようなのもがあるのか。』『何故アルブレードはR-1に似ているのか。』などを考えていた。

「如何したんだ?ライディース。」

「キョウスケ大尉。色々と考えていたんですよ・・・。」

ライはキョウスケの方を振り向き、そう答える。

「大尉は余計だ。・・・今でも許せないのか?」

「はい。・・・あの男なら絶対に義姉さんを助けられたはずだ!!なのにあの男は・・・!!」

「奴にも考えがあってだろう。そこの所を理解してやれ。」

「しかし俺は・・・!!」

ライは左手を強く掴んで何処かに行ってしまった。

「・・・・・・・。」

その場に残されたキョウスケはアルブレードを見上げ自室へと向かった。







「これでいいののね。」

『ああ、良くやってくれた。済まないがこちらに戻ってきてくれるか?』

「ええ、分かったわ。」

リュウセイの仕業によって大騒ぎとなっているラングレー基地内で女性が一人、何処かに通信をしていた。

『これでSRX計画は実行できる。そして・・・。』

「分かっているわ。本当に勝てるのかしら、『運命』に・・・。」

『それは分からん。だがあいつらなら・・・。俺達の未来を変えたあいつ等なら出来るかもしれない。』

そう言って通信が切れた。女性は通信が切れたのを確認すると次の目的地に向かって歩き始めた。

(急がなければ・・・。月に、マオ=インダストリー社に。)


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