2-13 元カノと煙草



有芯が歩き出した時、今度はメールが来た。

『連絡ください。』

このアドレスはエミ。・・・俺を振ったくせに、何で今更?

有芯はメールを返した。『どうした?』

すると、エミから電話が掛かってきた。

「ゆう! どうしてずっと連絡くれないの?!」

エミの自己中心的な態度に、有芯は心底うんざりして言った。「はぁ?! 別にいいだろ、もう付き合ってないんだし。それにもうゆうって呼ばないでもらえる? うざいんだよはっきり言って」

「そんな言い方・・・ひどいよ」

しばらく二人は沈黙した。その後、エミが口を開いた。

「あたしさぁ」

エミの声が泣き声のように聞こえたが、有芯は気のせいと決め付けた。

「やっぱりゆうがいないとダメ・・・」

有芯の中に、至極冷静で残酷な人格が見る間に出来上がっていった。有芯は、自分でもぞっとするくらい冷たい声でエミに言った。

「あ、そう」

「・・・ゆう?」

「で?」

「・・・・・。もう一度、私たち、付き合えないかなぁ?」

「付き合うって何?」

「・・・何って。私、ゆうのこと、好きだから・・・」

「へーえ。で、何がしたい? セックスしたいだけか?! だろうな、二股掛けるような女だもんなぁ」

「二股って・・・?! 誰から聞いたの?!」

「雄二」

「・・・。ごめんなさい。でもあれはお酒が入ってて、二人とも酔っ払ってて・・・怒ってるの?」

有芯はエミを嘲笑った。「怒ってるかって?! 怒ってねぇよ、好きでもねぇ女のために誰が怒るんだよ」

「そんなこと言わないで・・・謝るから! どれだけでも謝るから!!」

エミはいよいよ本格的に泣き出した。有芯はだんだん面倒くさくなってきて、優しい声で言った。

「・・・わかったよ。考えてやるから。今どこだ?」

「・・・自分の部屋」

有芯は電話を切ると、煙草をくわえエミの部屋へ向かった。エミの部屋は、ここから歩いて行ける距離だ。

彼は歩きながらふと、朝子と並んで歩いたことや、彼女の泣き顔を思い出した。

有芯は立ち止まると、気付かないうちに煙草を指から落とし、後ろ頭をぐしゃぐしゃとかき回していた。




14へ



© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: