once 21 秘められた過去(1)



16歳で、高2になった俺達にやってきた春は、熱かった。先輩達は、1年生を自分達の部活に入部させようと必死だ。

「私たち二人で一生懸命頑張ってきましたが、もう来年は卒業です。皆さんが誰一人入部してくれなければ、演劇部は廃部になります。演劇はとても楽しく、どんなスポーツにも負けないほど熱いと私は自負しています。この楽しさを伝えていきたいです。もし、新入部員が一人も集まらなければ、私が留年して来年も部活を続けることをここに誓います。皆さん、演劇部と、私の未来をどうか救ってください」

同い年でいとこのさくらが、壇上でさらりと留年発言をした3年の女を憧れの眼差しで見つめている。それが、朝子だった。

「あの人誰!? カッコイイ!!」

「・・・。どうせ口だけなんじゃない?」

「え~~っ、でもすごく綺麗な人~~!! 有芯君はいいと思わない?!」

「キツそうな女はタイプじゃない」

言いながら、俺は気付くと彼女を目で追っていた。たまには、違うタイプも悪くないかもな。

ふと、同じように彼女を見ている人物に気付いた。数学教師の石田だ。

・・・へぇー。それってヤバくねぇか?

「何か言った? 有芯君」

「いーや、何も」

その時、別のクラスの列からこっちに走ってくる人影が見えた。

「おお~~~~~~~い、ゆ~~~~う~~~~~し~~~~~~~~ん!!!」

「なんだ、智紀、春から暑っ苦しいな」

「言ってろー、おい、俺、演劇部に入るわ」

「何っ?! お前もあの女のファンか?!」

「違うって。実はな、前から真剣に演劇やりたかったんだ! あの先輩、けっこう情熱あるみたいだと思って、決めたんだ! 決めたぞぉ~、俺は、剣道部をやめてくる!!」

「待てよ。」

「? 何だ?」

「俺も剣道部やめるわ」

「はいっ?! 何で?!」

「先輩がウザくなってきた」

「・・・・・なるほど。じゃ、お前も演劇部入れよ」

「・・・別にいいぜ?」

「おーっしゃぁ~~これで、2年は2人だな!!」

こうして俺は演劇部に入り、まもなく朝子と付き合うことになったのだ。


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