once 77 Love is over



朝子は飛行機の中を歩いた。視界がぼやけ、どこに足をつけているのかもまるでわからない。

「『テメェが教えた後輩をナメてんじゃねえよ』ですって・・・?!」

思わず、口をついて言葉が出た。朝子の目からは、止めようのない涙が流れていた。

そっちこそ、自分が教わった先輩をなめないでいただきたいわ・・・! ショックで動けもしなかったでしょう。

嘘つきな先輩の、最後の駄目演技、だったわね・・・

朝子は座席に座ると顔を覆った。頭に有芯のプロポーズが響き、有芯の髪の匂いを想い胸が痛んだ。

ごめんね。ごめんね、有芯。

嬉しかったの。本当に。あのとき頷けたら、どんなによかっただろう。

でも、できない・・・私はいちひとの母親だから。あなたにはきっと、私よりふさわしい人が現れるわ・・・。あなたのプロポーズ、一生の宝物にする・・・。

その時、機内に昔懐かしい歌が流れた。


Love is over 悲しいけれど 終わりにしよう きりがないから

Love is over わけなどないよ ただ一つだけ あなたのため

Love is over 若い過ちと 笑って言える 時が来るから

Love is over 泣くな男だろう 私のことは 早く忘れて

私はあんたを忘れはしない 誰に抱かれても 忘れはしない

きっと最後の恋だと思うから・・・・・・・



“けっ。とんだ人妻お姫様だぜ”


“なんで怒ってないの? 先輩”


“行くな・・・朝子・・・”


“バーカ”


“愛してる”


“結婚しよう”



「外で発砲事件があったらしいよ」

「男性が一人撃たれたんだって」

そんな声が、朝子の耳に入ることはなかった。彼女は嗚咽を堪え震えながら、壊れそうな心を必死で繋ぎとめていた。

きっともう、他のどんな男のことも愛せない・・・

せめて、あなたは私を忘れて・・・お願いだから、幸せに暮らして・・・

涙が朝子の膝を濡らし続ける中、救急車のサイレンがだんだんと空港へ近づいていた。



once第一章 完







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