静まりし二つの羽根 第一話 「境界」


記者名:ヒロ

   静まりし二つの羽根 第1話 「境界」



 垂れ下がった目がいかにも、人懐こい男が眠たそうに階段を下りてきた。

「おばちゃん一体、昨日の騒ぎはなんだったの。気になったけど勢いに任せ

て寝たからわからなかったんだ。」

「ああそれなら選挙で当選した議員さんがね祝勝会だってもんで、ビールジ

ョッキを思いっきり天に向けてかかげたらね、流れ星が横切ったんだ。

みんなあまりにもタイミングが良かったもんだからね、これは神のお告げだ。

きっと総理大臣にこの人はなるよなんて事で盛り上がったんだよ。」

「そっか、そいえばこの宿舎の一階は酒場だったね。」

「それにしてもあんた、あれだけの騒ぎだってのによく寝れたね。そいえば

あんたまだ名前を聞いてなかったね」

「イエム」

「イエムかいい名前だね。仕事は何をしてるのさ?」

「仕事か、以前は寺院復興の建築作業なんかを手伝ってたけど、取りたて今

はその時に稼いだ金で旅をしてるんだ。」

「寺院の復興。。。そんなに儲かるかねそんな仕事が、わたしもやるかね」

「おばちゃんには無理だよ、何せ危ない仕事さ、柱の一本、傷つけたら大変

なんだ。神経をすり減らす仕事だよ。」

「あらあらそれは大変なことね、でもあんたその服、似合ってるよ。」

「白はあまり好きじゃないんだけど、安かったんだ。」

「set tone]

[なんて意味なんだね、そのロゴなんか気になるね。」

「僕にもよくわからないよ、服の事いちいち言う宿屋のおばさんも珍しい

よ。」

「そうかね、まっいいやさ、今日はどこに行くんだい?」

「決めてないよ、ぶらぶらこの周りを歩いてみる。」

「今、ブライト川の七つの橋、全部、三ヶ月前の大震災で崩れちまったか

ら、この村を出るにはミレウを越えるしかないよ、あの川を泳いで渡ろうな

んて思わない事だね。

私は宿代をまけてくれっていうやつは大嫌いさ、逃げ出したら許さないよ」

「逃げ出したりしないよ、昨日の分と今日の分と明日の分、今、ここに置い

てくね1500ゴールド」



「ちっまた負けた!レクお前は」

「だめだエンペラーステークスがこんなに波乱になるなんて誰も予想しねー

だろ」

「来週のワールドカップまでせいぜい運を養おうギターばっか弾いてるじゃ

ねーぞ!」

「偉そうにいつから俺の親方だよ、俺は生まれつき風来坊さ。たまたまここ

で雇われてるけど、あんたの趣味まで指図はうけねーよ」

「わはははっ、そいつはいい!じゃ風来坊よエンペラーステークスの外れ馬

券を買って来てくれたお礼だ。

明日も土砂運びだが、五時からだ、頼んだぜ!いったいこのダークルーズ川

ってのはこうも氾濫するんかな~~、まっおれたちゃこの川のお陰で仕事に

は困らないってわけだ。

うははははっ」

「来週のワールドカップで一攫千金、それまでどこにもいかね~~よ安心し

な!」


             ーつづくー


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