秋乱-АΚΙЯА-

◆01-02◆


[connexoin]
◆01-02◆


青年:「…あ、もしもし。僕です、吉海です。今時間ありますか?…………あっそうですか。…いえ、大丈夫です…………はい。…では後日……失礼します」

 受話器を置くと、青年は深くため息をついた。

青年:「……吉海君、先生駄目だって?」

 もう一人の青年が彼に言った。背が彼よりも高い真面目そうな青年だ。

吉海:「最悪だよなぁ。何で無理なんだよ、藤本のヤツ…せっかく熱弁聞いてやろうってのに……」

青年:「まぁまぁ…。先生も忙しいんだよ。…て言うか相変わらず、電話の声と話してる時の声が違うね」

吉海:「おいおい、ソレを言うなら『声』じゃなくて『性格』だろ、セ・イ・カ・ク」

青年:「はは、まぁそうなのかな………。そう言えば、バイト始めたって本当?」

吉海:「えっ?何で知ってんだよ!」

青年:「いや………弓原君に聞いたんだ。…駄目だった?」

吉海:「べ、別に良いけどさぁ…つうか、アイツ口軽すぎだろ…!」

青年:「まぁまぁ、そんな事言わない、言わない」

 チャイムが鳴る。白く小さなその建物は周りを高く鬱蒼と茂る木々に囲まれていた。

吉海:「やべっ!授業が始まっちまう!」

青年:「本当だ。またいつものかなぁ?」

吉海:「だろうな。まぁ何でも来いってんだ!この吉海冰悟、何であっても〈情報〉を掴み取っちゃる!」

青年:「ははは。相変わらず…」

吉海:「っておい。お前もだろ、朝山!気合入れろよな!」

朝山:「はいはい…。じゃいつもの所で待ってるから、直ぐ来てよ?」

吉海:「了解!」

 ここは知る人ぞ知る、情報学園子校。世の〈情報〉を管理する所だ。
 現在2099年は世を支配する〈情報〉で満ちた、《無情時代》。人はこれを《アストラデリー》と呼んでいる。〈感情〉より〈情報〉が優先されるようになっていた。12年前の冬に起きた《情報戦争》以降、人々は【〈情報〉の塊】になり続けている。そんな世を管理するのが情報学園子校である。

放送(男):「これより『情報捕獲』を開始する。各自手元のリスト表に従い、速やかに『捕獲』せよ」

 一斉に機械音がし始める。すると直ぐに女の悲鳴が聞こえた。

青年a:「J-78捕獲!」

青年b:「D-15捕獲」

 様々な悲鳴と共に、青年達の声がエンドレスする。

青年c:「A-02捕獲しました!」

 ここの学生達は《情報戦争》当時、親に捨てられ〈無情〉の環境で育った者がほとんどだ。だから〈愛情〉など全く必要ない。恋愛もせず、毎日同じ事を繰り返す。

青年d:「Q-70捕獲」

 《情報捕獲》即ち《人身捕獲》。不適切な〈情報〉を持った者を捕獲する。必要に応じては《情報削除》が行われる事になっている。



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