1966年、米国で「世界の権力構造を解明した作品」と大書された『悲劇と希望(Tragedy and Hope)』が刊行された。「現実世界を牛耳っている人々の心を理解したいなら、その心を形づくっている著書を読むといい。金融資本主義権力が抱く遠大な計画は、各国の政治体系と全世界の経済をみずから牛耳ることができる世界的な金融支配体制の構築に他ならない」、そう語ったのは著者、ジョージタウン大学歴史学教授キャロル・キグリーである。だが、1300ページを超えるこの大著は、凡百の歴史書とは異なっていた。なぜならキグリー教授は、自他ともに認める「国際秘密ネットワーク」の一員であり、本書の執筆によってその権力構造の最高機密を暴露することになるのを自覚していたからである。ちなみにキグリー博士はビル・クリントン前大統領の学生時代の指導教授(メンター)であり、1990年代に復刊された新版には「私は、キャロル・キグリーという学者が解き明かしてくれた真実の言葉を聞いた」という推薦の辞を寄せている。