再出発日記

再出発日記

PR

フリーページ

お気に入りブログ

『実録アヘン戦争』(… New! Mドングリさん

ベランダだより 202… New! シマクマ君さん

源氏物語〔12帖 須磨… New! USM1さん

映画「ウィキッド ふ… New! はんらさん

11月のおしゃれ手紙… 天地 はるなさん

カレンダー

2006年12月25日
XML
テーマ: 本日の1冊(3698)
今年のベストワンです。テーマは「男の贈り物」。ハードボイルド短編集です。もちろん、男にも読んでもらいたいけど、女性にはもっと読んでもらいたい。私からのクリスマスプレゼントだと思ってもらって「まあ、今頃紹介されても遅いじゃない」と拗ねていただいたら、嬉しい。

「セント・メリーのリボン」稲見一良 光文社文庫
「死を怖れ、怯えてただとり乱すことと、死ぬ覚悟を決めた上で息のある限り生きようと足掻くことは別だ。」
「麦畑のミッション」という短編の中で、B17爆撃機をイギリス田舎の水路に不時着させようとする直前、ジェイムス大尉はいつか見た罠にかかった雄ギツネのことを思い出す。
「信じられないことが時には起こるもんだ。絶対にありえないと言えることなど、世の中には何もない。」
大尉は息子にそんな風に話を聞かせてもいた。そして、この水路の近くにいる息子にいつかこのB17Fジーン・ハロー号を見せてあげるとも約束していた。

稲見一良 のことはまったく知らなかった。今回「この文庫が凄い」で06年度第二位になったことで読んでみた。結果、ずーと手元においておきたい一冊になった。値段は税込み500円。本の厚さからいって100円ほどサービスしているような気がする。稲見一良の文章を広めようとして、遺族・出版社ともに儲け部分を削ったのだろうか。そう、稲見一良はすでに故人だ。活躍期間は89年から94年の5年間のみ。5冊の本が残された。処女長編「ダブルオー・バック」を刊行した時点で、医師から余命半年と宣告されていたと言う。

ガンはいつの間にか特別な病気ではなくなった。ガンを克服する人は多い。ガンで亡くなる人はさらに多い。ガンを告知されて、余命を延ばしながら素晴らしい仕事を成し遂げた人も枚挙にいとまない。例えば、余命は延ばさなかったが、「一年有半」の中江兆民、近くは約一年と少しで五冊の著書と旺盛な講演活動をした考古学者佐原真、今現在闘っている辺見庸。

みんなに共通しているのは、死を見つめていない、ということだ。死は見つめなくとも目の前にある。だとしたら、見つめるのはそこからしか見えない生の世界だ。とくに稲見一良はその人柄か、本当にやさしく見つめている。

中篇「セントメリーのリボン」で少女は犬専門のこわもての探偵、竜門卓に言う。


「とぼけてもだめ。自分でもわかっているはずや‥‥‥」





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006年12月25日 22時44分22秒
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな@ 自然数の本性1・2・3・4次元で計算できる) ≪…三角野郎…≫は、自然数を創る・・・  …
永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ @ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…

バックナンバー

・2024年12月
・2024年11月
・2024年10月
・2024年09月
・2024年08月
・2024年07月
・2024年06月
・2024年05月

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: