PR
Calendar
Freepage List
人名索引（旧監督リスト）
監督/外国名/ア～コ
監督/外国名/サ～ト
監督/外国名/ナ～モ
監督/外国名/ヤ～ン
監督/日本字/あ～こ
監督/日本字/さ～の
監督/日本字/は～ん
ｽﾀｯﾌ/外国名/ア～コ
ｽﾀｯﾌ/外国名/サ～ト
ｽﾀｯﾌ/外国名/ナ～モ
ｽﾀｯﾌ/外国名/ヤ～ン
ｽﾀｯﾌ/日本字/あ～こ
ｽﾀｯﾌ/日本字/さ～の
ｽﾀｯﾌ/日本字/は～ん
出演/外国名/ア～コ
出演/外国名/サ～ト
出演/外国名/ナ～モ
出演/外国名/ヤ～ン
出演/日本字/あ～こ
出演/日本字/さ～の
出演/日本字/は～ん
ﾃｽﾄ(工事中)
映画雑文リスト
作品名（ア行、カ行）
（サ行～ナ行）
（ハ行～英数字）
Comments
racquo
わたしのブログへようこそ
Keyword Search
▼キーワード検索
2007.03.18
テーマ： おすすめ映画(4099)
カテゴリ： フランス映画
PASSAGE A L'ACTE
Francis Girod
（105min）
寸評：劇場公開タイトルが『見憶えのある他人』でビデオタイトルは『悪魔の囁き』、どちらもイマイチな訳題。物語、演技、演出は見事。高名な精神分析医が患者の仕掛けた罠にはまっていき、彼の人間性の欠陥が明らかになっていく。
映画には原作小説があって、著者はジャン＝ピエール・ガッテーニョ。同じ人の別の小説を映画化したのがジャン＝ジャック・ベネックスの 『青い夢の女』 。だからこの２本の映画（あるいは原作小説は、と言うべきか）は、物語の構成が酷似しており、 『青い夢の女』 がこの『見憶えのある他人』のリメイクとさえ思えてくる。どちらも精神分析医が患者絡みで事件にはめられてゆき、その医師には刑事の親友がいて、患者の異常性は女性に対する暴力だとか。原作本を読んでいないので、原作内容の差か、映画化の仕方の差かはわからないが、この『見憶えのある他人』の方がストレートに原作を映画化しているようで、サスペンスを通して描いているのは主人公の精神分析医アントワーヌ・リヴィエールという一人の人間だ。
物語は葬儀のシーンで始まる。ダニエル・オートゥイユ演じる高名な精神分析医アントワーヌ・リヴィエールの友人であり恩師でもある精神分析医が、自ら運転する車の事故で妻子ともども亡くなった。アントワーヌは同じ精神分析医の妻とは離婚していて、彼女が育てる小学生の息子がいる。彼はパリ１６区の高級住宅街に家を買って居を構え、車はベンツ。診察料は高く揶揄もされてもいるが、研究書等も出版し、テレビにも出演するような高名な医師だ。また出版社の女性編集者や同業の女性医師等との情事も楽しんでいる。ただ家のローン等お金にやや詰まっている状況。そんな彼のもとに診察を受けにくる患者の中にアンヌ・パリロー演ずる金持ちの娘イザベルがいた。彼女は父親との関係の問題を語るが、父を喜ばせるためにアンリという男性と結婚することにしたと言う。彼女の精神は不安定で、アントワーヌを誘惑するような素振りも見せる。結婚の準備で遺言書を作成し、財産の一部はアントワーヌにも行くようにした等とも語る。もう一人の患者は自分に自信がなく、生徒にもバカにされているような高校のギリシア・ラテン語教師の男性で、自殺願望を持っている。アントワーヌは彼がカバンに隠し持っていた拳銃に気付き、それを預かる。３人目の患者は頭の禿げた小太りの無気味な男性エドワール・ベルグ（パトリック・ティムシット）。彼は通っていた精神分析医が死んだので来たということだが、妻を殺したと話し始める。そしてこのベルグの仕掛ける罠にアントワーヌは少しずつはまっていく。
（以下ネタバレ）
アントワーヌはとりあえず現金を作るためにベンツを売りに出した。広告を見てやってきた男に試乗させ車を譲ったが、スピード狂のもの凄い運転だった。古くからの友人の刑事に呼び出されて警察に行くと、その男が事故死したと教えられる。友人刑事は（映画冒頭の葬儀の）恩師の精神分析医もどちらも何者かが車に細工をして事故に至らしめたのではないかという疑惑を語る。そして死んだ精神分析医の患者リストをアントワーヌに渡し、心当たりの人物がいたら知らせるように言う。アントワーヌは帰ってリストに目を通すが知った名前はなかった。
ベルグは殺害後、妻に容姿の似たヌード・バーのニナに妻の服を着せ、ブラジル人男性と家を去るところを近隣に目撃させと語る。アントワーヌがバーでニナに事情を聞くと、ベルグに大金で頼まれベルグの妻として男とブラジルに去り、その後ニナ本人のパスポートでフランスに戻ったということだった。翌日もっと詳しいことを聞こうとアントワーヌがニナの家にやってくると、その直前に彼女は窓からベルグに突き落とされていた。診察室に戻るとイザベラがいた。彼女には暴行された跡があり、結婚をすると夫のアンリが豹変して暴行を受け、行くところもないのでアントワーヌを訪れたと言う。アントワーヌが夫の名字を尋ねるとフォンテーヌだった。アントワーヌは彼女を息子の部屋に寝かせると、預かっていた今は亡きギリシア・ラテン語教師の拳銃を持つとベルグの家に向かった。
家に行くとベルグが拳銃を向けてアントワーヌを迎え、語り始めた。愛する妻は溺死した。精神バランスを崩してアントワーヌの恩師の精神分析医に受診すると、妻の名を叫び続けるベルグを医師は狂人扱いした。アントワーヌも高額の報酬だけが目的で、精神分析医は皆同じだ。ベルグは２人目の妻を殺して財産だけを奪ったことをも語り、今度はイザベルをアントワーヌが財産目的に殺したように見せかける計画を話す。イザベルには全財産をアントワーヌに遺贈するように遺言を書かせたから、アントワーヌの指紋のついたナイフでイザベラが死ねば彼が財産目的に殺したことになると言うのだ。しかしアントワーヌは拳銃を出してベルグを撃ち殺す。ベルグが彼に向けていた拳銃を確認すると精巧に出来たライターだった。アントワーヌは拳銃を死んだベルグの手に握らせるとその場を去った。帰るとイザベラは息子の部屋で寝入っていた。アントワーヌも寝室で寝入ってしまう。
翌朝警官が訪れ目を覚ますとイザベラは居なかった。警察ではベルグが殺され、その場にイザベラがいたと教えられる。診察していた医師としてイザベラが夫を殺す可能性があるかと刑事に尋ねられ、アントワーヌはお茶を濁すが肯定的な返事をした。廊下には精神のおかしくなったようなイザベラがいた。収監されたその日、彼女は首を吊って自殺した。公証人が彼女の全財産がアントワーヌに贈られることを知らせ、夫婦に何かあったら渡してくれとアンリに頼まれていた封筒をアントワーヌに手渡した。中にはビデオテープがあり、帰ったアントワーヌが見るとベルグのアントワーヌに向けたメッセージで、殺人をイザベラになすりつけて財産を手に入れただろうと、ことのてん末を予告するものだった。殺人の種を蒔いて肥料と水をやったら花が咲いた、とベルグは語っていた。しかしアントワーヌは無感動で、何事もなかったかのようにイザベラの財産を手にし、同業の精神分析医ナタリーと結婚するのだった。
この物語でアントワーヌのとる行動はすべてベルグにお膳立てされ仕掛けられたものだ。ベルグはアントワーヌという人間を読み切っていた。最後の２人の対決もベルグの思い通りだった。ベルグの手にしていた拳銃はライターであり、使う必要はなく自分が殺されることを既に知っていたのだ。直前に死んだ最愛の妻の墓にも参っている。アントワーヌが持っていた拳銃にしてもベルグはギリシア・ラテン語教師にも近付いていたから拳銃を預けたことは知っていただろう。この物語では何人もの人が死ぬが、果たして非業の死と呼べるものはあるだろうか。ニナは金で危ない橋を渡ってしまったのであり、自殺願望のあった教師はたぶんベルグに操られて自殺あるいは多量の睡眠薬を飲んでの事故死だろうが、いずれにせよ利用されただけであってもそこにはまったのは本人の責任だ。車を買った男は無茶苦茶な運転をする男であり、事故死しても当然だろう。イザベラは精神不安定で彼女も上手くベルグに利用されるわけだが、自分に何の罪もないのに自殺したことにかわりはない。アントワーヌのベルグ殺しも一種の嘱託殺人だし、拳銃を向けられているのだから犯行の状況が正しく伝われば正当防衛となるだろう。だとしたらこの悲劇（？）を生んだ原因は何か。それはベルグの思いが正しいかどうかは別として、最愛の妻を失った彼に最初に接した冒頭の葬儀の分析医との出会いではないだろうか。映画冒頭の葬儀のシーンで死んだ精神分析医の業績を賛美し、その死を悼む弔文が語られていたのを思い出すが、それも虚しく響いてくる。そしてある性格の人間に適切な状況を与えてやれば殺人をも犯すということをも示しているように感じる。原題の意味は「衝動的に実際の行為に移る」というような意味だ。きれいごとではない人間心理の探求、またそういう人間への理解というフランス文化だ。
監督別作品リストはここから
アイウエオ順作品リストはここから
Francis Girod
（105min）
寸評：劇場公開タイトルが『見憶えのある他人』でビデオタイトルは『悪魔の囁き』、どちらもイマイチな訳題。物語、演技、演出は見事。高名な精神分析医が患者の仕掛けた罠にはまっていき、彼の人間性の欠陥が明らかになっていく。
映画には原作小説があって、著者はジャン＝ピエール・ガッテーニョ。同じ人の別の小説を映画化したのがジャン＝ジャック・ベネックスの 『青い夢の女』 。だからこの２本の映画（あるいは原作小説は、と言うべきか）は、物語の構成が酷似しており、 『青い夢の女』 がこの『見憶えのある他人』のリメイクとさえ思えてくる。どちらも精神分析医が患者絡みで事件にはめられてゆき、その医師には刑事の親友がいて、患者の異常性は女性に対する暴力だとか。原作本を読んでいないので、原作内容の差か、映画化の仕方の差かはわからないが、この『見憶えのある他人』の方がストレートに原作を映画化しているようで、サスペンスを通して描いているのは主人公の精神分析医アントワーヌ・リヴィエールという一人の人間だ。
物語は葬儀のシーンで始まる。ダニエル・オートゥイユ演じる高名な精神分析医アントワーヌ・リヴィエールの友人であり恩師でもある精神分析医が、自ら運転する車の事故で妻子ともども亡くなった。アントワーヌは同じ精神分析医の妻とは離婚していて、彼女が育てる小学生の息子がいる。彼はパリ１６区の高級住宅街に家を買って居を構え、車はベンツ。診察料は高く揶揄もされてもいるが、研究書等も出版し、テレビにも出演するような高名な医師だ。また出版社の女性編集者や同業の女性医師等との情事も楽しんでいる。ただ家のローン等お金にやや詰まっている状況。そんな彼のもとに診察を受けにくる患者の中にアンヌ・パリロー演ずる金持ちの娘イザベルがいた。彼女は父親との関係の問題を語るが、父を喜ばせるためにアンリという男性と結婚することにしたと言う。彼女の精神は不安定で、アントワーヌを誘惑するような素振りも見せる。結婚の準備で遺言書を作成し、財産の一部はアントワーヌにも行くようにした等とも語る。もう一人の患者は自分に自信がなく、生徒にもバカにされているような高校のギリシア・ラテン語教師の男性で、自殺願望を持っている。アントワーヌは彼がカバンに隠し持っていた拳銃に気付き、それを預かる。３人目の患者は頭の禿げた小太りの無気味な男性エドワール・ベルグ（パトリック・ティムシット）。彼は通っていた精神分析医が死んだので来たということだが、妻を殺したと話し始める。そしてこのベルグの仕掛ける罠にアントワーヌは少しずつはまっていく。
（以下ネタバレ）
アントワーヌはとりあえず現金を作るためにベンツを売りに出した。広告を見てやってきた男に試乗させ車を譲ったが、スピード狂のもの凄い運転だった。古くからの友人の刑事に呼び出されて警察に行くと、その男が事故死したと教えられる。友人刑事は（映画冒頭の葬儀の）恩師の精神分析医もどちらも何者かが車に細工をして事故に至らしめたのではないかという疑惑を語る。そして死んだ精神分析医の患者リストをアントワーヌに渡し、心当たりの人物がいたら知らせるように言う。アントワーヌは帰ってリストに目を通すが知った名前はなかった。
ベルグは殺害後、妻に容姿の似たヌード・バーのニナに妻の服を着せ、ブラジル人男性と家を去るところを近隣に目撃させと語る。アントワーヌがバーでニナに事情を聞くと、ベルグに大金で頼まれベルグの妻として男とブラジルに去り、その後ニナ本人のパスポートでフランスに戻ったということだった。翌日もっと詳しいことを聞こうとアントワーヌがニナの家にやってくると、その直前に彼女は窓からベルグに突き落とされていた。診察室に戻るとイザベラがいた。彼女には暴行された跡があり、結婚をすると夫のアンリが豹変して暴行を受け、行くところもないのでアントワーヌを訪れたと言う。アントワーヌが夫の名字を尋ねるとフォンテーヌだった。アントワーヌは彼女を息子の部屋に寝かせると、預かっていた今は亡きギリシア・ラテン語教師の拳銃を持つとベルグの家に向かった。
家に行くとベルグが拳銃を向けてアントワーヌを迎え、語り始めた。愛する妻は溺死した。精神バランスを崩してアントワーヌの恩師の精神分析医に受診すると、妻の名を叫び続けるベルグを医師は狂人扱いした。アントワーヌも高額の報酬だけが目的で、精神分析医は皆同じだ。ベルグは２人目の妻を殺して財産だけを奪ったことをも語り、今度はイザベルをアントワーヌが財産目的に殺したように見せかける計画を話す。イザベルには全財産をアントワーヌに遺贈するように遺言を書かせたから、アントワーヌの指紋のついたナイフでイザベラが死ねば彼が財産目的に殺したことになると言うのだ。しかしアントワーヌは拳銃を出してベルグを撃ち殺す。ベルグが彼に向けていた拳銃を確認すると精巧に出来たライターだった。アントワーヌは拳銃を死んだベルグの手に握らせるとその場を去った。帰るとイザベラは息子の部屋で寝入っていた。アントワーヌも寝室で寝入ってしまう。
翌朝警官が訪れ目を覚ますとイザベラは居なかった。警察ではベルグが殺され、その場にイザベラがいたと教えられる。診察していた医師としてイザベラが夫を殺す可能性があるかと刑事に尋ねられ、アントワーヌはお茶を濁すが肯定的な返事をした。廊下には精神のおかしくなったようなイザベラがいた。収監されたその日、彼女は首を吊って自殺した。公証人が彼女の全財産がアントワーヌに贈られることを知らせ、夫婦に何かあったら渡してくれとアンリに頼まれていた封筒をアントワーヌに手渡した。中にはビデオテープがあり、帰ったアントワーヌが見るとベルグのアントワーヌに向けたメッセージで、殺人をイザベラになすりつけて財産を手に入れただろうと、ことのてん末を予告するものだった。殺人の種を蒔いて肥料と水をやったら花が咲いた、とベルグは語っていた。しかしアントワーヌは無感動で、何事もなかったかのようにイザベラの財産を手にし、同業の精神分析医ナタリーと結婚するのだった。
この物語でアントワーヌのとる行動はすべてベルグにお膳立てされ仕掛けられたものだ。ベルグはアントワーヌという人間を読み切っていた。最後の２人の対決もベルグの思い通りだった。ベルグの手にしていた拳銃はライターであり、使う必要はなく自分が殺されることを既に知っていたのだ。直前に死んだ最愛の妻の墓にも参っている。アントワーヌが持っていた拳銃にしてもベルグはギリシア・ラテン語教師にも近付いていたから拳銃を預けたことは知っていただろう。この物語では何人もの人が死ぬが、果たして非業の死と呼べるものはあるだろうか。ニナは金で危ない橋を渡ってしまったのであり、自殺願望のあった教師はたぶんベルグに操られて自殺あるいは多量の睡眠薬を飲んでの事故死だろうが、いずれにせよ利用されただけであってもそこにはまったのは本人の責任だ。車を買った男は無茶苦茶な運転をする男であり、事故死しても当然だろう。イザベラは精神不安定で彼女も上手くベルグに利用されるわけだが、自分に何の罪もないのに自殺したことにかわりはない。アントワーヌのベルグ殺しも一種の嘱託殺人だし、拳銃を向けられているのだから犯行の状況が正しく伝われば正当防衛となるだろう。だとしたらこの悲劇（？）を生んだ原因は何か。それはベルグの思いが正しいかどうかは別として、最愛の妻を失った彼に最初に接した冒頭の葬儀の分析医との出会いではないだろうか。映画冒頭の葬儀のシーンで死んだ精神分析医の業績を賛美し、その死を悼む弔文が語られていたのを思い出すが、それも虚しく響いてくる。そしてある性格の人間に適切な状況を与えてやれば殺人をも犯すということをも示しているように感じる。原題の意味は「衝動的に実際の行為に移る」というような意味だ。きれいごとではない人間心理の探求、またそういう人間への理解というフランス文化だ。
お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
[フランス映画] カテゴリの最新記事
-
『ランジェ公爵夫人』ジャック・リヴェッ… 2008.10.16
-
『白い馬』『赤い風船』アルベール・ラモ… 2008.09.21 コメント(4)
-
『レディ・チャタレー』パスカル・フェラ… 2008.09.11 コメント(6)
【毎日開催】
15記事にいいね！で1ポイント
© Rakuten Group, Inc.
