こういう映画を作る場合の監督の構想っていうのはどういう風な過程を経て、実際に撮影・編集をして、出来上がった作品となるんでしょう。例えばまずは全部ロケで屋外で無照明の撮影なんてのを考える。カメラと同録機材さえあれば撮影できるわけで、映画の基本で作品を作ることですね。そうすると人工照明を必要とするかも知れない室内のシーンが撮れない。そこで主人公ビュル・オジエを閉所恐怖症にする。主人公が室内に入らないのだから室内のシーンもいらない。車にさえ乗れない彼女だから、じゃあ刑務所を出所してきたビュル・オジエはトラックの荷台に乗った姿で登場させよう。パリのメトロは一部地上の高架線部分があるから、閉所中の閉所空間である地下鉄との対比で、この高架部分で彼女をメトロに乗せてしまおう。それでも夜は何処かに泊まらせなければならない。じゃあウィリアム・ワイラーの「広大な空間」(Les Grandes Espaces=『大いなる西部』)って映画を深夜上映している映画館で彼女を寝かせてしまうのもシャレが効いているじゃないか。朝彼女が映画館から出てきたところで、次の上映作クルーゾーの『囚われの女』にポスターが貼りかえられるのもまたまた面白い。