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2008.06.01

『エルミタージュ幻想』アレクサンドル・ソクーロフ監督（2002ロシア）

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テーマ：映画館で観た映画(8801)

カテゴリ：ヨーロッパ映画

RUSSKIY KOVCHEG

96min
（桜坂劇場ホールＣにて）

96分の全編を一続きの１カット（ショット）で撮った作品。この監督さんの映画は『太陽』に続いて２本目。このあと『モレク神』と『牡牛座レーニンの肖像』を近々見にいく予定だ。１年半前の『太陽』のレビューも異常に短い。「はいそうですか。」というだけで、思想に深みがないんですね。逆に批判する題材もない。だから書くこともないわけです。まあボクに彼の作品を鑑賞・評価する力がないのかも知れないけれど、「こういうこと映画にすると凄いと思われるぞー」とか「こういう手法使うと凄いと評価されるぞー」と言った製作動機のような気がして、要するに「お底が浅い」と感じてしまうんです。もちろん諸条件が上手く噛み合えばなかなか良い、あるいはなかなかの問題作になるけれど・・・。同じロシアの、モンタージュの巨匠エイゼンシュテインの向こうを張って、ヒッチコックが『ロープ』で不完全にしかできなかったこと、96分１カット（ショット）で撮って自己満足してて下さい、と皮肉も言いたくなってくる。

映画の観客にとっては１カットだろうと、100カットだろうと関係はない。どうせフィルムじゃないのだから、１カットに見せかけた騙しだってよい。問題はそこに必然性があるかどうかだ。ただしここで言う必然性とは、観客にとっての必然性、つまり１カットで表現されたものを見せられることだけではない。製作における必然性だってある。実際の撮影では３回途中で中断してしまい、４回目で成功したらしいけれど、１カットで96分撮るんだぞー、ということが役者やスタッフに与える緊張感、そういうものもある。この緊張感はカット・カットをいくつもつなげる普通のあり方では実現しないだろう。でも結果として出来たこの作品を見ると、いずれの必然性も感じられなかった。もちろんエルミタージュ美術館・冬宮殿を撮影に使える期間の制約もあっただろうが。

そしてロシア史、そこから革命・社会主義体制期は除かれているわけだけれど、それに対するソクーロフの感慨、それもありきたりで大したことはない。１カットで撮っているから凄いんだぞーとか、あのエルミタージュ美術館で実際に撮ってるんだぞーとか、当時の衣装を再現した絢爛豪華さなどの虚仮威しに惑わされることなく見れば何も大したことはないし、内容も希薄だ。