クロノグラフ

クロノグラフについて


<基本構造>
●クロノグラフ各部名称
クロノ外観解説
インダイヤルの並びなどは必ずしもこのようにはなっていません。一般的な一例です。また、30分積算計が秒針と同軸のものや、12時間積算計のないもの、ボタンが1つしかないものなど、様々な種類があります。

●手巻きクロノグラフムーブメント
手巻きクロノ
代表的な古典的な手巻きクロノグラフムーブメントです。古典的というのは、典型的な初期のクロノグラフの機構である「コラムホイール」「キャリングアーム」「スライディングギヤ」を採用しているためです。現代これらの機構は主にコストダウンの目的で他の機構に変わったり、省略されたりしていることから、これらを持ったクロノグラフは高級機として扱われることが多いです。


<解説>

●カム式
 コラムホイール式に対して、コストやメンテナンス性を改善した機構として開発された方式です。コラムホイールの代わりに板状のカムを使ったもので、耐久性や操作感(個人差はあるでしょうが)はやや劣ると言われますが、修理や調整が比較的容易なため量産向きで現行の多くのクロノグラフがこのカム式を採用しています。ETA/Valjoux7750が有名です。

●キャリングアーム
 クロノグラフ秒針を運針させるための動力を伝達するクラッチ部分の方式のことで、永久秒針の歯車とクロノグラフ秒針の歯車、その間にある伝達用の歯車全てが水平に並んだ構造で、伝達用の歯車とレバーの構造のことを指します。最も古くからある構造で、現在はより構造が簡単なスイングピニオン方式や、針飛び・歯車の磨耗を改善した垂直クラッチ方式などが開発されていますが、見た目の分りやすさや古い高級ムーブメントのイメージから、人気のある機構と言えます。
クロノ キャリングアーム解説

●コラムホイール
 ピラーホイールとも呼ばれる、クロノグラフの動作全般をつかさどる特殊な構造の歯車です。2階建て構造で、1階部分はスタート&ストップボタンの操作で1方向にだけ回転するように、ラチェット状の歯車になっています。2階部分は数本(1階の歯の半数で5~9本くらい)の柱(ピラー)が円形に並んだような形状で、ここにクラッチレバーやリセットレバー、ブレーキレバーが接触しています。
 各レバーはピラー部分に押し付けられるようにバネで押さえられており、スタート&ストップボタンを操作してホイールを一歯分進めると、レバーの接触部がピラーからピラーとピラーの谷間へ、またはその逆へ移動することになりレバーが動くことになります。
 カム式に比して製造や調整がデリケートで、修理も難しいという難点がありますが、耐久性や操作感が良いとされるため、高級機にはこのコラムホイール式が採用されることが多いです。

●垂直クラッチ
 キャリングアーム式やスイングピニオン式に代わり、近年高級機の主流になりつつあるクラッチ方式で、歯車同士のかみ合わせによるクラッチではく、面タッチによるクラッチのため、それまでどうしても無くせなかった「針飛び」を回避でき、また駆動側と従動側が一体となって動く(接触面が擦れたりしない)ので、クロノグラフを作動させることによる歯車の磨耗がないなどの利点があります。
 パテックフィリップのCal.CH 28-52やフレデリックピゲのCal.1185系、ロレックスのCal.4130(現行デイトナ)等はこの垂直クラッチを採用しています。

●スイングピニオン
 キャリングアーム式に代わるクラッチ方式として開発された機構で、キャリングアーム式を少々簡略化したような構造です。永久秒針を動かす歯車(4番車)から直接動力を得る形で、細長いピニオンギアを使っています。キャリングアーム式に比して構成部品点数が少なくなり、また省スペース化が計られることから、キャリングアーム式に代わって主流となった機構です。しかし20世紀末からの機械式時計復興において、新たに開発されるクロノグラフはキャリングアーム式か垂直クラッチ式が殆どになっており、特に後者の採用率が高まっています。
クロノ スイングピニオン解説

●スライディングギア
 クロノグラフランナーが1周(1分)した時に、それを30分積算計用歯車に伝えるための歯車のうち、可動式のものをスライディングギアと言います。これは、クロノグラフをリセットする際、クロノグラフランナーと30分積算計用歯車が同時に0位置に戻されるために、歯車が噛み合っていると歯車に無理な力がかかってしまうため、この伝達用の歯車をリセット時にスライドさせて噛み合わせを外すための機構です。
 通常、クロノグラフランナーに付いている積算用歯車は、歯1枚だけの単なる突起のようなもので、これが1周すると伝達用歯車を1歯分進めます。ストップした位置によってはリセット時に、1枚だけの積算用歯車が伝達用歯車を叩く可能性があり、これを回避するために伝達用歯車をスライドさせます。スライドさせない場合は、1枚だけの積算用歯車をバネ固定式にするなどすることで衝撃を緩和させることが必要です。



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