kaiちゃってもいいですか?

kaiちゃってもいいですか?

贈り物

贈り物

「冷たい!」

少年の顔に何かが当たり、少年は閉じていた目をとっさに開いた。

「クゥーン、クゥーン」

目の前には小さな動物が、少年の顔に鼻を押し付けている。

胴体が長くて手足が短い。

おまけに尻尾らしきものは少し曲がっていた。

「犬?」以前いた世界での犬らしき動物がしきりに少年の洋服を

引っ張っている。

「かわいい」少年の顔に少しだけ笑顔が戻った。

「そんなに引っ張っても、僕、動けないよ」

そう言うと、犬らしき動物は少年のすぐ横に横たわり、

少年の体に温かな体温を感じさせた。

そうして、そこからまた幾日かの時間が過ぎ去って行った。

「いつまでそこで寝ているつもりじゃ?」

少年のすぐそばで声が聞こえた。

「誰?誰か居るの?」少年は少し体を起こし周りを見渡したが

誰も居るようには見えなかった。

「こらこら、ここじゃ、お前さんが寄りかかっているから

体が痛くて仕方が無い」

「あ!」少年が上を見上げると、大きな大きな樹木が

話しているのがわかった。

「大きな大きな樹木さん、あなたは言葉が話せるのですか?」

「もちろん話せるとも、お前さんがここに来てからずっと話しかけておった」

「僕には何も聞こえなかったけど・・・」

「それは、お前さんに聞く力がなかっただけじゃ、なにせ相当の力を

使って歩いて来たみたいじゃったからのう」

「大きな大きな・・・」

少年が話しかけようとしたが、大きな樹木が少年の言葉をさえぎった。

「これこれ、そんな長い名前で呼ぶのはやめておくれ、わしには

‘100年の木’という名前があるのだから」

「100年の木?」

「そうじゃ、周りをよく見渡してごらん、ここにはたくさんの生き物達も

おるのじゃよ」

少年が見渡すとなにかが飛び跳ねているのがわかった。

ビヨ~ンと飛び跳ねては、持っているカゴから何かを落としている。

「あれは’カタピヨンというものだ」

100年の木が静かに口を開いた。

少年は、カタピヨンが落としていった紙切れを拾って読んだ。

「号外、号外、またまたこの世界に迷いし者が!」

「僕のことかな?」少年は少しびっくりした。

「まだまだ、たくさんおるぞ、お前さんの心を読む’ハット帽子というものもな」

「僕の心を読む?」

少年はよく理解できずにいたが、この世界には自分ひとりだけでは

ないという事は分かった。

「クゥーン、クゥーン」

少年の横には相変わらず犬らしき動物がしきりに少年を引っ張っている。

「そろそろ時間ではないのかい?」

100年の木が言った。

「何処に出口があるのかわからない」

少年が言った。

「お前さんの出口はわしにもわからんよ、皆それぞれ違うのだから」

「その生き物と一緒に探せばいい、その生き物はお前が望んで

いたものなのだから」

そういうと、100年の木は、大きないびきをたてて寝てしまった。

「僕、君に名前をつけるよ」

少年が、犬らしき動物に話しかけるとその動物はうれしそうに

尻尾を振って答えた。

「君の名前は・・・クックだ!」

「そうだクックがいい!」

「おいでクック!」

クックは少年の周りをグルグル回って

「クゥーン、クゥーン」と鳴いた。

グリルデガバチョ

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