第三章:冒険の章
体のあちこちが痛かったが、
少年は出口を見つける為にひたすら歩き続けた。
「僕は我慢強いんだぞ」
少年は一人、心の中で思っていた。
クックは色々な場所に興味を示したが
少年から離れる事はなかった。
確かに色々な生き物達がいる。
けれど少年には周りを気にかけている余裕はなかった。
歩いて歩いて、そのうちにまた100年の木があった場所に戻って来てしまった。
「どうして?」「あんなに歩いたのにどうして戻ってきてしまうの?」
100年の木は、まだ寝ているようだった。
突然少年の前に、黒いハット帽子をかぶった生き物が姿をみせた。
「ケケケッ ようこそメビウスの輪に、おれ様は黒ハットだ」
そう言うと、その生き物はすぐに姿を消した。
少年の心の中に、また少しの不安が募っていった。
「クゥーン」クックが弱々しく鳴いた。
「もう一度行こう」少年が声に出して言った。
歩き続ける少年の木から、葉っぱが1枚2枚とハラハラ落ちていく。
それを止める術が少年にはわからなかった。
歩き続けながら、必死に心の中で弱気な自分と強気な自分が
少年に語りかけている。
少年はそれを声に出すことをしなかった。
体の痛みが増してきていることに少年は気がついていた。
その場に座り込んだ少年の耳に、時おり以前いた世界の友達の声が
聞こえているような気がした。
そして、自分もその友達と会話をしているようだった。
「わけがわからない・・・」
苦痛にゆがむ少年の木からしずくのような物が地面に落ちはじめた。