第4章:限界
「翼がある生き物とね、ない生き物がいてね、それで・・・」
少年は、自分が目の当たりにした光景を100年の木に話していた。
ひとしきり話し終わった後、100年の木が言った。
「翼の無いものが空に飛び立てる理由がわからないのかい?」
「だって・・・」少年は口を閉じた。
「ケケケッ!だからお前は抜け出せないのさ」
クックが吠えてもいないのに黒ハットが現れた。
黒ハットが少年につきまとって離れなかったので、少年はまた歩き出した。
ただし今回は、100年の木にもらった‘生き物図鑑を握り締めていた。
「どうせまたこの場所に戻ってくるんだろ?ケケッ」
「ケッ無駄な事は、やめておけよ」
黒ハットがしつこかったので、少年はクックに言った。
「クック追い払ってくれよ」
それでもクックは吠えずに後ろからついて来るだけだった。
「やめなよ!チチッ」
今度は白いハット帽子をかぶった生き物が現れた。
「えーと、これは白ハットという生き物だな」
少年は生き物図鑑を読んでいる。
「ケケッと話すのが、黒ハットで、チチッが白ハット」
しかし、それ以上詳細な情報は載っていなかった。
黒ハット達の言い争いをよそに少年はヨタヨタと歩いていた。
体の痛みは増すばかり、そして頭の中は考え事でグルグルして
今にも倒れそうだ。
「どうして同じ場所に戻るのだろう」
「どうして空を飛べるのだろう」
「僕はここを抜け出せないのではないか・・・」
「自分に何が起きているのかわからないよ」
そのうち夜が訪れ、少年は足を止め眠る事にした。
しかし、横になると突然急激な痛みが少年を襲う。
あまりの痛さに声もでない、でるのは冷や汗ばかりだった。
明け方になりやっと少年は少しの眠りにつけた。
夜の痛みがなくなると今度は、明け方に少年を襲う様々な苦しみ。
そんな状態が長く長く続き少年の心の中は、恐怖心でいっぱいになっていった。
「夜が来るのが怖いよ、夜なんてこなければいいのに」
「朝が来るのが怖いよ、朝なんてこなければいいのに」
少年は、自分で自分がおかしくなっていく事がわかった。
でもやはり、それを止める術はわからなかった。
「僕、自分の体が操れないよ、うっうっうっ」
とうとう泣き出してしまった。
少年の木から葉っぱや実がポロポロと落ちていった。
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