空 くう

空 くう

太陽の影



太陽の影


ほんの小さな
心のかけらを
どこかに置き忘れて
しまったみたい

日だまりにまどろみ
穏やかな幸福を
大切に大切に
かみしめているのに

ふいに吹いた
冷たい風に
思わず身震いし
目を覚ました

夢の中
思い出の国に
大切なものを
置き忘れて
しまったみたい

こみあげる寂しさに
ぽろぽろと
涙がこぼれる

どうしたの?

隣には優しい瞳の
君がいて
そうっと肩を
抱き寄せてくれるのに

その肩ごしに
わずかに見える
あのひとの残像が

私の心の
小さなかけら
拾いあげたまま
返してくれないの

私のかけら
返して

あなたなんか
いらない
もういらないんだから

けれど
光が満ちるほど
その影は濃く
小さな黒い
染みを残して

お願い
私を離さないで
もう振り返らない
振り返ったりしないから


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