空 くう

空 くう

春の雨



春の雨



幸せを全部
束ねたような
淡い紅の桜の花を

冷たく散らす
春の雨

水溜りの花びらは
怯えた顔で
肩寄せ合えど

道行く人に
踏みしだかれて
ただ土塊に
還るだけ

幸せ慣れした
私を笑う
忘れたはずの
苦い記憶

どんなものも
美しいのは
ほんの一瞬で

心躍らせた分だけ
無くした時の
傷は深いと

耳元に
語り掛けるように
強くなる雨音


出来るなら
最後の花開くまで

濡らさないで
流さないで
ほんの僅かな
輝きの時


また巡るだろう
その日まで
日々を耐える
勇気を持てるように



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