空 くう

空 くう

マリア



《マリア》



アレキサンドライト

石自体は何も変わらないのに、
光の加減でグリーンにもレッドにも見える宝石


あなたと私の石

2人の愛の証に、と
あなたが私の指にはめてくれた石




湖のほとりの小さな家


黒い子猫


子猫と泳ぐあなた・・・




星を渡る船

今度は木星まで行くらしい


悩んでいるの?
私を置いて行くことを



大丈夫
待つことには慣れているわ

あなたと出会った瞬間に
腹を括ったんだもの



気をつけて行ってらっしゃい



叶うなら
私に命があるうちに帰って来てね




ベッドに横たわる私

ベッドの周りに飾られた色とりどりの花に囲まれた私



長い栗色の髪

青白い顔

生気を失った唇



ベッドに腰掛けるあなたに伸ばした私の腕

白く痩せた腕



私の頬にキスをするあなた


あなたの首に手を回し
力無く抱きしめる



ラビットファーみたいにやわらかな
この黒髪が好きだった

あなたの大きくて温かな手が
髪をかき上げてくれるのが好きだった


あなたの温もりが
私の孤独を埋めてくれたの

あなたの存在が
死んだように生きていた私を
本当に生かしてくれたのよ





行かなければならないのは知ってる
止められないのも知ってる

あなたにしか出来ない大切なこと



たくさんの命の未来のために




愛しているわ

愛しているわ・・・





あなたを誇りに思うわ
だから、気をつけて行ってらっしゃい

私はここで待っているから





言葉も無く立ち上がり
振り返らずに部屋を出るあなた

静かに閉まるドアの音・・・




子猫のカインが
小さな鳴き声で見送る


私の代わりに
ニャア・・と鳴く




もう触れられない 
あなたのやわらかな髪

大きな手





さよならあなた




忘れないで

忘れないわ




どうか元気でいてね

またいつかどこかで会える日まで・・・・





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