魂の叫び~響け、届け。~

明日も変わらぬ君でいて


私の34歳の誕生日プレゼントとしていただいたのです(つД`)うれちぃ!!

勝手に持ち帰ったりせず、
『欲しい!!』と思ったら、直接ご本人交渉して下さいネ☆


アスランが抱くのはいつだってキラだけ!!
キラにしか雄化しないのだ!!!
な、そんなのが好き。そんなのがツボ。

……どこまでも萌えツボ相似な私達(笑)



※著作権は執筆者様が持っていますので、無断での持ち帰りはしないで下さい。



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明日も変わらぬ君でいて


「お前も一緒に来い!!」
 幾度君にその科白を投げただろう。でも君が首肯することはなかった。それが俺にとって思いの外心の痛手になったことが、予期せぬ苦しみを呼んだ。
  君が、居ない。


「何を考えている…?」
  静かな口調の問掛けとは裏腹に、熱く硬い楔が俺の中心を貫いた。
「んん……っ」
  くぐもった声が漏れる。聞いている者は居ない。俺の部屋は二人部屋ながらも未だ俺ひとりで過ごしている。ラスティ・マッケンジーがその命を落としてからずっと。
  寂しくないかと云えば嘘になる。だから今も睦みあっているのだ。戦友、イザーク・ジュールと褥を共にして。
「答えろよ。俺に抱かれながら、何を考えていた?  答えられないと云うなら今すぐヤメるぞ」
  展翅された蝶のように彼の楔で俺の躯を縫いとめていたそれが、引き抜かれようとする。俺はイザークの腰に両脚を絡めて拒絶した。この熱をもっと深く感じたかった。空白を埋める様に。
「思い出したんだ。月の幼年学校時代を」
  正しくは幼年学校時代の彼――キラ・ヤマトの事を。立場は逆だったけれど、幾度となく肌を合わせた夜を。
「俺以外の誰かに抱かれた思い出か?」
「否、抱く方だった」
「いずれにせよ、昔の男が忘れられないと云う事か。今お前を抱いているのは俺なんだぞ。俺だけ見てりゃいい!」
  云いながら激しく腰を進めて来る。俺はあられもない声をあげながら、それでも手の甲で口を塞いでそれを抑えようとした。と、イザークはその手を外してベッドへ押さえ付ける。
「鳴けよ。お前の声が聞きたい」
  イザークは俺の首筋をきつく吸った。
「やめ……痕が……」
「軍服ならば見えはしない。そうだろう?」
  云って、キスはやめない。何箇所にも赤い花弁を散らして、その間も腰を揺すられる。
「イザー……ク……ッ!」
  キスの雨と、下肢の痛みにも似た快楽に翻弄されて、俺は果てた。


「オーブにもいるんですね。僕達と同じぐらいの軍事関係者」
  ニコル・アマルフィーがいたたまれないといった口調で云った。
「さっきのロボット鳥の持ち主か?  そりゃいるだろ。中立国とはいえ、今は何処も戦争なんだ」
  ディアッカ・エルスマンは吐き捨てる様に応じる。
「アスラン。お前あの男と何を話してたんだ?」
  不機嫌そうなイザークが問う。……そんな事云える訳がない。
「ただ、大事な物なんだと……それだけだ」
「ふん、そうか」
  それ以上は関心のない様子でイザークは話を切り上げた。クルマは俺達が潜伏している艦のある海に向かっている。この時俺は既に、深夜、艦を抜け出す事ばかりを考えていた。
  あの場所に、キラはいる。それだけが今の俺を支配していた。
  俺に気付いて飛んで来たトリィ。皆に気付かれない様に、『君、の……?』としか云えなかった。ずっと大切にしていてくれたこと。それがどんなに嬉しかったか、君に伝えたかったよ、キラ……。


  深夜。警備兵以外の皆が眠ってしまった時刻。俺はベッドを抜け出すと、インナーシャツの上に軍服を着込んだ。
「ん……」
  隣のベッドから漏れる声にギクリとさせられたが、ニコルが寝返りをうっただけだった。俺は狭い寝室を、音を立てない様に気を遣いながら滑り出た。艦の扉の前には二人組の警備兵がライフルを手に立っている。
「ご苦労様」
「はっ!  ザラ隊長。どうかなされましたか?」
「外に出たい。通して貰えるか?」
「は!  ですが……?」
  怪訝そうにする警備兵に、俺は絶対無敵の科白で応じる。
「任務だ。通してくれ」
「了解しました。どうぞ」
「ありがとう。引き続き警備を怠らないでくれ」
「はっ!」
  よく云う。自分でもそう思う。しかし顔に出さずに艦を出た。夜気が頭をクリアにする。
  俺がしようとしている事は無意味かもしれない。否多分無駄足だ。けれど動かずにはいられなかった。イグニッションキーを回してクルマを出す。
  あの場所へ向かうために。

  オーブの軍事工場地付近でクルマを停める。夕刻、キラに会った場所。  未練だな。会える筈ないのに、ここに来ないでいられなかったなんて。でも確かにここに君がいた事を思わずにいられなかったなんて、誰にも云えない。
  暫く、夕刻の場所を歩いて、トリィを思う。こまめにメンテナンスされているようだった。マイクロユニットが苦手だった君が。
「……ふ……っ」
  自嘲的に笑って、俺はクルマに戻ろうとした。
  その時。
「アスラン……?」
  呼び掛けるそれは、求めていた声。……キラだ。
「キラ……ッ!!」
  フェンスの向こう、君がいた。ずっと求めていた君。
「アスラン……何故こんな処に?」
「それは俺の科白だ。こんな時刻に何を……」
  キラは少し照れた様に笑った。俺の好きな笑み。
「ここで君に会えたのが嬉しかったから……もう一度ここに来たくて脱け出して来ちゃったんだ。呆れていいよ。でも、またこうして会えて嬉しいよ、アスラン」
「キラ……」
  ぐっ、と拳を握る。こうして会えて嬉しいのは俺も同じだ。会いたくて艦を抜け出してここまで来たのだから。
  けれど。
「だったら……」
  俺は口調が荒くなるのを抑えきれずに云った。
「だったら何故お前はフェンスの向こうにいる!?」
「アスラン……」
  俺を見るのは、憂いをおびた紫玉の瞳。愛しい眼差し。
「ごめん……僕にはフェンスを越えられない」
「『友達』の為か?」
 俺を拒絶しても?
「君と比較なんて出来ないよ。大切な人達なんだ。どちらも同じぐらい大切だけど、今は僕が守らなくちゃならない人達なんだ」
「そうか、それなら……」
  俺の声は震えていたかも知れない。
「お前達の艦がオーブ領海を出た処で攻撃する」
「……判った」
  悲愴感漂う面持ちで応じるキラ。俺の胸が、ジリ、と焼けついた。
「否、お前は何も判っちゃいない!」
  判って無い。俺が、どれ程の思いでいるかなんて、少しも。どんな思いでここまで来たのかなんて。
 俺は夕刻トリィを渡したフェンスの間からキラの腕を掴んで引き寄せた。
「アスラ……ッ」
  抗議の言葉なんて聞かない。フェンス越しに抱き寄せて、強引に口づけた。キラは一瞬身体をこわばらせ、それからゆっくり力を抜いて、なされるままに俺に身を任せた。
  深く長い口づけ。むさぼるように。空白の時間を埋めるように。
「……ふ……ッ」
  苦しげな吐息が漏れる。それでもまだ解放しようとは思わない。まだ足りない。キスだけじゃ足りない。 唾液が糸を引くほど舌を絡めあって、漸く唇を解放してやる。それだけでもう、息が上がって頬を上気させるキラを心底いとおしく思った。
「キラ……」
  その名を呼ぶだけで愛しさがこみあげる。
「キラ……愛してる」
  抱きすくめたままで耳元に囁きかける。
「お前を抱きたいよ……」
  これじゃ、互いの衣服が邪魔だ。それだけの距離さえも邪魔だ。もっと近くで君を確かめたい。
「キラ……ザフトに……」
「今それを云うなんて、反則だよ」
  キラは泣いていた。くっきりした紫玉の瞳を潤ませて。
「それだけは出来ない。君がザフトを抜けられない様に。……大切なものがあるから、こちらの陣営には来られないんでしょう?」
  俺の脳裏をイザークの顔が寄切った。仏頂面の癖にひどく情熱的なセックスを好む彼。足りないものを、キラのいない空白を、熱いもので埋めてくれる彼の、愛に似た行為を。
  ……けれどあの行為は愛じゃない。戦場で擦りきれた心の隙間を埋める行為なんだ。彼の心は渇いている。それに愛しさを感じない訳ではないけれど。
  俺は頭を振った。俺が欲しいのはキラ……君だ。
「僕だって……」
  キラは云った。
「アスランのこと欲しいよ?  だけど今君はフェンス越しに身を置いてる。こちらには来られない。……僕もそっちには行けない」
  キラは小さく笑みを浮かべた。絶望の笑みだった。
「全てを棄てて、二人きりで逃げられたなら良かったかも知れないね。でも僕達はそんな無責任にはなれないよね。大勢の命背負ってるから」
「…………」
「今君に逢えて、君の気持ちを聞けただけでも嬉しいよ。これで……明日も闘える」
「キラ……」
  戦うと云うのか、君は? この俺と刃を交えて。
「僕を殺すのは……アスラン、君しかいないよ。僕は他の誰にも殺されない」
  毅然として云い放つ。それが今の君の毅さなのか。守るべきものがある毅さ。
「キラ……君を殺すのは俺が死ぬ時だ。その日が訪れないうちにこの戦争が終わるといいな。俺はお前を殺したくない」
  これは俺の本心だ。君を殺す日など訪れて欲しくない。願わくばこの戦争の早期終結を祈る。
「僕も、こんな戦争早く終わって欲しいよ。君となんて闘いたくない。剣の要らない世界へ、君と行きたい」
  二人で、闘いのない世界へ……。そう出来るなら、こんなに苦しくないのに。
「……キラ……さようならだ」
 俺はキラに背を向けた。そのままクルマを停めた場所に足を運びかけた時。
「アスラン!」
 キラの声に、足を縫いとめられる。振り向いた俺に、キラは泣き出しそうな眼差しで云った。
「アスラン……僕も君のこと他の誰よりも好きだよ」
「……お前は狡いよ」
  このままじゃ離れられないじゃないか。愛を確かめて別れるなんて。
  俺はフェンスに再び歩みより、キラに軽いキスをした。
「覚えておく。ずっと、絶対忘れない。……次は、戦場だ」
「うん。でも僕はさよならは云わないよ。また、会えるよね?」
「会いたいよ、キラ……」
  俺はキラの手を握りしめた。この温もり、忘れない。二度と。絶対。
「またいつか、戦場以外で会いたいよ、キラ……」
「うん。きっと。またね、アスラン」
  名残惜しく握る手を離して、俺はクルマに戻った。最後まで見送ろうとするキラの視線を背中に感じながら。
  いつか俺達は殺し合うのかも知れない。その、最後の瞬間まで、俺は君を愛してる。そう誓って。


  艦に戻った俺を迎えたのは、警備兵を従えたイザークだった。
「何処に行っていた?」
「ああ、眠れないから、夜風にあたりに」
  そう応じた俺の軍服の襟元をきつく掴んで、イザークは俺を抱き寄せると、いつになく激しく口づけた。
「戻らないんじゃないかと思ったぞ!!  勝手な行動をするんじゃない!!」
「あ……ああ、すまない」
「すまんで済んだら軍法会議はない!  しっかりしろよ、『ザラ隊長』」
  憤りを隠さず、イザークは巻くし立てる。
「ディアッカはニコルの部屋に追い出した。お前は今夜俺の部屋だ。存分に可愛がってやる」
「イザーク……?」
「抱いてやるって云ってるんだ。脱走した分、高くつくぞ」
  ……イザークのそれは、キラとの別離を忘れさせてくれる気がした。俺はイザークの肩口に額を押し当てた。
「な……!? アスラン!?」
「イザーク……君に任せるよ。きつく抱いてくれ。全て忘れるぐらいに」
「ふん。泣いてもやめないからな」
  そっけなく云って、イザークは軽く俺の軍服の袖口を引いた。
「来いよ。この夜が終わる前に」
「ああ。イザークは優しいな」
「誰がだ!?  気色の悪い事を云うな!!」
  渇いた心の優しさだと知っているから、安心してこの身を預けられる。そのことは俺の秘密。


  キラ。他の誰にこの身を預けたとしても、心は君の側を離れない。
  だから君は、どうか変わらずにいて欲しい。遠くからずっと君を愛してる。

  このあとの惨劇を、俺達は互いに知らないままで……。




<了>






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