魂の叫び~響け、届け。~

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「今頃気付いたのかい?まったく・・・、そんな可愛い事言ってるとオレみたいな男に攫われたって文句は言えないよ。」



じり、じり、とヒノエくんが近付いて来る度、足は勝手に後退りする。

少しずつせり上がって来る危機感めいた焦燥が身を焼くようだ。



「オレの言葉は、信じられない?」


「そう・・じゃ、ない・・・けど。」


気付けばいつの間にか部屋の隅へと追いつめられ、

ヒノエくんの両腕に閉じ込められるようにして壁際に縫い留められてしまった。



「いつだってオレは、お前に対しては本気で口説いてるつもりなんだけどな。



 ・・・これでもかなり我慢してるんだぜ?」



熱を帯びたその声は耳を掠め、吐息が首筋に触れる。

皮膚の薄い部分をきつく吸い上げられ、チリリと焼かれるような痛みに身を捩った。


「ヒノエ・・・くんっ!!」


「悪い・・・。オレらしくないよな、こんなやり方。

 美しい蝶を力任せに捕まえたって、壊してしまうだけだってのに・・・。」




自嘲気味な笑みが刻まれていた口元がふっと緩めば、

…いつものあの、ヒノエくんの笑顔があった。


首筋に咲いているであろう緋色の花に落とされている彼の視線に気付き、

何ともいたたまれない気持ちになる。




「“有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし”


 ・・・どんなにオレがお前に触れたいと思っているか、


 どんなにその肌に触れて熱く溶かしたいと思っているか、お前は知らない。



 知る気も――――無いんだろ?」




「―――ヒノエくん・・・。」


紡がれるヒノエくんの言葉が、

そのひとつひとつが、まるで見えない棘のように胸に刺さっては痛んだ。



「無理強いして美しい花を手折る事はしたくは無い。・・・今日のところは見逃してあげるよ。


 けど、いつか必ず手に入れてみせるよ。お前という花をさ。



 ・・・・おやすみ、オレの神子姫。」









◆湛増ED2◆
もっ…と甘い夜をお求めの場合は、ヒノエの言葉を受け入れてみて下さい。




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