魂の叫び~響け、届け。~

パピヨン PHASE-1(イザキラSS)


突発です!!!(笑)


そしたら、時を同じくして公式でイザキラ推奨が始まったじゃないですか!
(DESTINYリマスターVOL.1イザークの憂鬱)


まさにデスティニー(爆)


・・・・って事で、さらに盛り上がるのでありましたヾ(≧▽≦)ノ 




では、どうぞ!



*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  






いつから、だっただろうか?




ざわついた艦内の中に、

昏く静かな宇宙(そら)の海に、

風そよぐ湖面の小波に、

木々の葉ずれの囁きの中に、


“彼”の姿を、捜すようになったのは。










パピヨン -Butterfly kisses- ■PHASE-1■









――プラント――





首都アプリリウス市に聳える国立中央図書館、
柔らかな日差しが入り込むサンルームの左奥窓際。


クライン邸の庭によく似た居心地の良い空間は、
キラのお気に入りの休息場所だった。



机に広げた本に添えられた己の腕を、
見るともなしにぼんやりと眺める。





南の島オーブの強い日差しに照らされて健康的に焼けてはいたが、
逞しい、とは、お世辞にも・・・言い難い。



口の端に自嘲の笑みを浮かべると、
キラは目を伏せ小さく溜息をついた。




「・・・あ」



形のよい淡い色の唇が薄く開く。






―――――また、だ。




感覚ギリギリに触れるか触れないかの「何か」。





少し前から度々襲われるこの不思議な「何か」が、
“視線”である事に気付いたのは、ほんの数日前。




いつもはこちらが気付くタイミングで、ふ、と外されてしまう視線。



だが、今日は常と違う・・・?





刺すような棘々としたそれではない。



侮蔑を込めたものでも、
淫靡な艶をはらんだものでもなく、



ただただ真っ直ぐに向けられるそれ。





伏せた面はそのままにチラリと目だけを動かしてみるが、
視線の主の姿を見つける事は出来ない。


ならば・・・と、
気付いていないふうを装った動作でひとつ伸びをすると、
キラは身体ごとゆっくりと振り返った。





視界の端を掠める、




―――銀色の残像。








・・・まさか、ね・・・?






毎日忙しくプラントと地球とを行き来しているであろう“彼”が、
こんな所へ来るはずもない。

ましてや自分に興味を持って視線を向けることなど・・・




今頃どうしているかと考える事が多いせいで、
きっと幻覚を見てしまったのだろう。







「もう・・・一度・・・・」





あいたい。






最後の言葉は声に出せないまま、
キラは身じろぎもせず長い時間そこへ佇んでいた。









*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  








C.E.71年11月


第二次ヤキン・ドゥーエ宙域の停戦から1ヶ月が経過していた。








――――オーブ連合首長国 アカツキ島―――





「よっ!キラ、ラクス、久し振りだな!」


勢い良く開いたドアから金の髪を揺らして飛び込んで来たのは、
ここ、オーブ連合首長国代表のカガリ・ユラ・アスハ。


「・・・2人とも元気そうだな」

ゆったりとした足取りでカガリに寄り添うように入室して来たのは、
今はカガリの補佐官となり表向きの名前をアレックスと改めたアスラン・ザラである。


「そちらも、お忙しいでしょうがお元気そうで何よりですわ。ね、キラ」

「うん・・・」




大戦の英雄と担ぎ出されるのを由としなかったキラとラクスは、
マルキオ導師の孤児院に身を寄せていた。


一方、停戦から終戦、
和平締結条約に向けての要望書作成や国防軍の立て直しで、
カガリとアスランは日々国内外を奔走している。


「で・・・?
 今日は2人から私達に話があるって事だが、あらたまって一体どうしたんだ?」




重く横たわる沈黙を破ったのは、桜色の歌姫。




「カガリさん、アスラン、

 ―――私達はプラントへ向かおうと思います」


「えぇっ?!」


カガリは隣に座るアスランに助けを求めようと視線を動かした。


「・・・何故、今なんです?」


「今だから、ですわ、アスラン。
 オーブはカガリさんを筆頭に復興の道を歩き始めました。
 しかし・・・プラントはまだ迷走を続けております。
 過激派のテロもいまだ収まらないようですわ」

「そんな危険な中に戻るのを俺に黙ってみていろと?」

「そうしていただかなくては困ります。私も力ずくは好みではありません。
 ―――今、生まれ変わらねばプラントに未来はないのです」


押し黙ってしまった味方を援護すべく、
カガリは椅子から腰を浮かすようにして弟に詰め寄った。


「キラ、お前はそれで本当にいいのか?
 あれだぞ?妙な遠慮ならナシだぞ?
 ここにいるのが気まずいなら、本島にある屋敷に移ったって構わないんだし・・・」

一回り小さな両手が、少し陽に焼けたキラの手を包み込んだ。
左手薬指の宝石が角度を変えて輝く度、チクリと突き刺しては胸を痛ませる。


「カガリ、ありがとう・・・。でも僕は行かなくちゃ。
 ここは確かに居心地が良くて平和だけど、僕に誰かを救う事が出来るなら
 ・・・今、そうしたいって思うんだ」

「キラの事なら大丈夫ですわ。
 プラントでいちばん安全な住まいをご用意するとお約束しますから」





「・・・いつ、発つんだ?」

藍色の柔らかそうな髪をかきあげると、
アスランは波立つ感情を抑えながら声を絞り出した。


「明日にでも」

「そんな、急に!?」




「キラ・・・どうしても行くのか?」


琥珀色の瞳から泉が湧き上がっては雫となって流れ落ちる。



やっぱり君を泣かせてしまった。

でも、これ以上ここにいる事は・・・僕には・・・



もう僕は決めてしまったから。

心から祝福出来るようになるまで、ほんの少しだけ。





・・・キミ達から逃げる僕を許して・・・?






「カガリごめんね・・・

 アスラン、カガリの事を頼むよ?
 キミが、必ず幸せにしてあげて」




「・・・わかった。何かあったら必ず連絡しろ」









*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  


■PHASE-2■へ続く






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