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201918
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とある田舎の喫茶店
蓮華草が咲く時―5
「ほ~ら早く席につかないと一番遅い奴のおでこが陥没することになるぞぉ~」
小さい子を脅かすように両手を広げながら教壇に立つと、皆一様に軍隊さながらの素早さで席についた。
必然的に彼らの視線はこのクラスの中心にいる(象徴ではなく物理的に)男子生徒へと集められる。
正確には彼の顔面、未だデコピンの痕が赤く残っている額だ。
「この方法は有効、と……」
出席簿の余白へとそう書き込んでから、教え子へと向いた。
そして口を開こうとしたとき、先にとある女子生徒がはきはきとした声をあげた。
「みっちゃん、まどかがまだ来てないんだけどなんか連絡入ってる? ほら、まどか携帯持ってないから」
「ああ、風邪ひいたって。朝シャワー浴びてる最中にぶっ倒れたらしい」
そう言った瞬間。
さきほどの静寂はどこへやら、窓をビリビリと震えさせるほどの大音量が、教室内に充満した。
「どういうことだよ! みっちゃん詳しく教えてくれ!」
「倒れたって怪我とかしてないよね!?」
「朝にシャワー浴びてたのか!? おお……俺の豊かなる想像力よ! 今こそ発揮される時ぞ!」
「黙れ貴様らぁぁああああ―――っ!!」
最後に叫びをあげた生徒へと出席簿をフリスビーのように投擲、その額へと命中させた。
そいつは頭をはねあげそのまま机に突っ伏し動かなくなる。
それを呆気にとられながら見ていたクラスメイトは、次にあたしへと視線を釘付けにした。
「ちゃんと説明するから静かに聞きやがれ! ……怪我はおでこをちょっとぶつけただけだ。たいしたことないってよ。でも熱が38度あってひどくだるいらしい。今日と、明日からはじまる3連休中ゆっくり休んで治しますからって」
「たいしたことある奴がここにいるっつーの!」
「ん、起きたか花見。ま、そういうわけだから心配するな」
「……最近俺に対して適当すぎやしないかい? みっちゃんよ……」
とりあえずその言葉を軽く聞き流しながら冷静さを取り戻した生徒たちを一度見回してみる。
もう質問してくる者はいないものの、皆近くの者たちとの話を止めようとはしない。
その口から出てくる言葉はどれも鳥居本人が聞いて眉をひそめるものではない。
「38度ってかなりつらいよね……」
「やっぱ風邪だと見舞いとか行っちゃまずいのかな?」
「火曜日には元気になってればいいんだけどなあ」
ここまで当然のように“友達”を気遣うクラスメイトというのは珍しいと思う。
だが鳥居は彼らのことを真の“友達”とは見られないでいる。
烏帽子田(えぼしだ)は今「鳥居は携帯を持っていない」と言った。
その理由は、鳥居がいじめられていたということを考えれば、過去に嫌な思いをしたということは容易に想像がつく。
今時携帯電話を持っていない者などほとんどいない。
それなのにそのことを馬鹿にする素振りすら見せないクラスメイトを、鳥居はなぜ信用できないのだろうか。
そう思い至ったところで、内心でかぶりを振った。
彼女の心を理解しきっていない自分がそんなことを言ってはいけない。
そう思ったからだ。
「とりあえず、鳥居の家に見舞いに行くのはやめておけ。今はゆっくり休ませるのが最善だろう。それにうつってもまずいしな」
それと、鳥居もそれを望まないだろう。
嬉しさの反面、彼らを信用できないでいることによる罪悪感を増加させてしまうからだ。
「りょーかい、みっちゃん。じゃあわたし、火曜日にまどかが来たら今日の授業教えてあげようっと」
「なあに言ってんだ烏帽子田。絶対いつの間にかお前のほうが勉強教えてもらってるってことになるって」
「あははは、バレた? 実は昨日の数学の時間寝ちゃってさ……まどかに教えてもらおうと思ってたんだよね。ほら、まどかの教え方ってうまいじゃん」
「そうなのか!?……よし、今度俺も教えてもらおうっと。勉強もできて女の子に個人指導してもらえる。うん、我ながらナイスアイデアだ」
「こら、お前はその前に国語の宿題をちゃんとやれっての」
ばこっと花見の頭を出席簿で叩くと、クラス全体からどっと笑いが起こった。
この騒がしさ。
この笑顔の溢れる空間に、彼女はいつも、いるようでいない。
忌まわしい記憶が、彼女をここにいさせない。
彼らを見て改めて思った。
鳥居はここにいるべきだ。
この選択であたしが恨まれようともかまわない。
それが教え子のためならば。
そして、断言できる。
この選択をする方が、彼女は絶対に救われる。
ここにいる彼女の“友達”を見て、確信を持てる。
だから―――。
「なあ、みんな、ちょっと聞いてくれるか?」
あたしはここにいる彼らに、全てを託す。
■
目を覚ますと、昨日とは違って自分の身体は汗でまみれてはいなかった。
風邪で倒れてから3日。
医者でもらった薬を飲みひたすら睡眠をとったおかげで、あれほど身体から水分を奪っていた熱も、体力とともに精神をも削いでいただるさも、今はその残り香だけが身体を包んでいる。
ゆっくりと身体を起こすと、思わず顔をしかめたくなるような頭痛も襲ってはこなかった。
倒れるほどの風邪からたった三日でこれほどまでに回復するとは、意外なほどに強い身体に生んでくれた母に感謝するべきだろう。
視線を部屋の中に向けると、半分開いたカーテンから陽光が存分に注がれていた。
どうやらすでにお昼近くになっているらしい。
「ん~~~~っ」
腕を高々とあげて伸びをすると、身体中がボキボキと悲鳴をあげた。
痛みはないものの、その音を聞くと自身の身体がなまっていることを思い知らされる。
ベッドを降りて立ち上がっても倦怠感はない。
部屋を出てリビングへと向かうと電気が消されていて、母の姿はなかった。
当然だ。この時間ならば仕事に行っているはずだから。
若干乾いていた喉を潤すために牛乳を一杯飲んでから部屋に戻り、ベッドへと座った。
自然と目に入るのは勉強机の上に置いてあるM2D。
今は療養中、今は療養中。
そう心に念じて―――
「ちょっとだけ……」
あっけなく心は落ちた。
The worldの誘惑は決してやすやすとかわせるものではない。
そんな言い訳を自分に言い聞かせて、M2Dを頭にかぶった。
ちょっとだけ。
その程度の軽い気持ちでログインしたこのプレイが、自分の運命を変えることになるとは、このときの自分には予想することすらできなかった。
■
「蓮華!」
私の姿を見つけたミンクは、そう言いながら小走りでこちらへと寄って来た。
彼の姿を見るのは3日ぶりだろうか。
世間一般的にはたった3日間でも、自分にとっては長い長い3日間だった。
そのため彼の笑顔にどことなく懐かしさからくる安心感を得た。
「3日も蓮華がいなかったら寂しかったんだよ? 風邪はもういいの?」
背の低い彼から見上げられながら向けられるその瞳は、私の心をなによりも癒してくれる。
「もう大丈夫だよ」と答えると、彼は太陽のような明るい笑顔をつくりこちらの手を取った。
「ねえ! エリアいこっ!」
「ああ、そうするか」
彼は私の前ではいつでも笑ってくれる。その笑顔が、私にとってはなによりもありがたい。
そんな彼だけが、私の救い。気を許せる唯一の友達。
その理由は、この世界ではリアルは関係ないからだ。
父のことを話さなくても、隠し事をしているという罪悪を感じないですむから、私は彼の笑顔に微笑みを返すことができる。
ミンクの小さな手をしっかりと握り、私はカオスゲートドームへと歩を進めていった。
■
それは、単なる偶然だった。
……いや、もしかしたら、必然なのかもしれない。
もしそうなのだとしたら、ここで素通りするべきではない。
もとより、あたしに見過ごせるはずもないことだった。
「おい、エリアワードはわかったか……?」
「ああ、『Δ最良なる 冠者の 選択』だ」
今あたしがいるのは、マク・アヌのカオスゲートドームだ。
ついさっきまでは中央広場の一つのギルドショップの横にいて、 そこからここに移動してきたのだ。
きっかけはそのギルドショップを通り過ぎようとしたときだった。
なにげなく、ぼぉーっと通り過ぎようとしただけなのだ。
それでなぜ“それ”を聞くことができたのかは自分でもわからない。
だけどそんなことはどうでもよかった。
気にかけるべきはそんなことではなく、彼らの会話の中から、『蓮華』というワードが出てきたことだった。
蓮華――自分が受け持つ2年C組の生徒、鳥居まどかが操るPC(プレイヤーキャラクター)
その名前が出た瞬間、あたしの身体は反射的に歩みを止めていた。
『……おい、あいつ蓮華じゃねえか。ガキと一緒にいやがる』
『あのアマ……最近やたらと名を売りやがって。気にいらねえ』
『あのファーマイルと火糸須もやられたって話だろ? PKKが偉そうに。これじゃあPKの面目丸つぶれじゃねえか。あいつになんとか一泡吹かせてやれねえのかよ』
彼らがPKであることは火を見るより明らかだった。
お互いに顔をしかめながら、彼らは一人のPC―――カオスゲートへと向かうため階段を上がる蓮華へと、視線を縫い付けていた。
蓮華の横にはもう一人、小柄なPCがいた。
この距離では男か女かわからないが、手を繋いでいるところを見ると普通の友達であるらしかった。
PKたちの会話を聞き漏らさないように静かに耳を立てていると、その耳を疑うようなことを、彼らは言い始めた。
『……なあ、俺らでやっちまわねえか?』
『ファーマイルや火糸須を返り討ちにした奴だぞ? 俺たちじゃ……』
『2人でダメなら3人で。3人がダメなら4人だ』
『……にしたって10人20人半端な奴らを集めたって勝てるとは思えねえ』
『そこでだ。今あいつ、ガキと一緒にいたよな。しかも手ぇ繋いでやがった。……ってことはだ』
『…………なるほどな。そりゃいい考えだ。……クハハッ、これで奴の情けない姿をお目にかかれるぜ』
『そうとくりゃ話は早い。数を集めよう。ショータイムは大勢で楽しんだほうがいいに決まってる』
下卑た笑みを浮かべる二人の見えぬところで、あたしは寒気を感じた。
この二人はとんでもないことを考えている。
それを理解して、あたしは彼らから離れることができなかった。
聞き逃してはいけない。自分しだいで事は大きく変わる。
本能がアラームを鳴らしながらそう訴えていた。
『跡をつけよう』
そう言って蓮華の跡を追う二人に気づかれないように、あたしも彼らを追った。
そしてカオスゲートドームで、彼らはまんまと蓮華たちの行ったエリアワードを知ってしまったのだ。
あたしはセーブ屋の前で、誰かと待ち合わせをしているかのように装いながら聞き耳を立てる。
カオスゲートのすぐ前で立っているPK二人は、どうやら他の知り合いのPKたちも呼び出しているようだった。
その作業には相当の時間を使っており、つまりそれだけ大勢のPKを呼びつけているということに他ならない。
生半可な実力を持ったPKたちをいくら蓮華にぶつけたところで所詮烏合の衆に過ぎない。
しかし彼らが話していたことを実際に実行するとすれば、間違いなく蓮華は血祭りにあげられるだろう。
「やべえな……」
親指の爪を噛みながらしばし思考し、PKたちに気づかれないように、あたしはコマンドからメンバーアドレス帳を開いた。
そこにはずらーっと何十人ものアドレスが登録されている。
これでもR:1時代からのプレイヤーなのだ。人脈はある。
その中でこの場面で呼び出す最良の人間は誰かと考え、それに思い至った。
「なんだ……。あたしは何を悩んでたんだよ。そんなの決まってるじゃねえか」
これは蓮華のピンチだ。
だが同時に、これはチャンスでもあるのだ。
PKたちの知らぬところで、あたしは我ながらあくどい笑みを浮かべ、ある一人のアドレスへとショートメールを送った。
そして胸に思う。
今こそまさに、勝負の時だ。
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