PR
Freepage List
Calendar
Comments
Keyword Search
「宮廷プーアル茶とか最高等級茶葉って、何やねん」と思っている方向けの説明です。
ちょっと専門用語が出てきて長いので、ご覚悟を。
<宮廷プーアル茶とは?>
前の記事にも少し書きましたが「宮廷プーアル茶」は、芽の部分を主に使って作られたプーアル茶のことです。
餅茶で買うと、芽がキンキラキンになっていたりするので、見た目の高級感があります。
おそらく宮廷に献上されたのはこういうお茶ではないか・・・と思われる”タイプ”のプーアル茶ですね。
「宮廷プーアル」は、献上品にふさわしい品質の商品のみに許される称号・・・なんてことはなく。
「芽を使って作ったプーアル茶」という程度の意味しかありません。
民間で勝手に使っている呼び名なので、厳密な定義が無いのです(ゆえに品質にはかなりの開きがあります)。
中には「宮廷」の名に恥じない最高級茶葉を使ったお茶もあるかもしれませんが、そこはやはり値段相応です。
もっとも、芽の部分は軽いので、同じ重さのお茶を作るとなると、たくさんの芽の数が必要です。
その分、原価は少々高いということは言えるかもしれません。
「宮廷プーアル」はキャッチーな名前ですし、緑茶世界の人は「芽=高級」信仰があるので、ありがたがる人もいます。
取っつきやすいまろやかさがありますし、渋みも少ないので。
「宮廷プーアル」という名前を見たら、基本的には、芽を使った口当たりの柔らかいお茶。
ただし、香りの変化や味わいの厚みはあまり深くなく、ライトな感じ、と捉えておけば、まあ大体合っていると思います。
#品質の高い生葉を使うと印象は結構変わります。
<普通のプーアル茶との違い>
一般的なプーアル茶は、「芽」だけでなく「成熟した葉」(三番目とか四番目の葉)もバランス良く使います。
「芽」と「成熟した葉」の違いを成分の面から説明すると、旨み成分とポリフェノールの量にあります。
「芽」は旨み成分が多めで、ポリフェノールは少なめです。さらにカフェインも多くなります。
一方、「成熟した葉」には、旨み成分は少なく、ポリフェノールが多く含まれています。
ポリフェノールは渋み成分ですので、そのまま緑茶に仕立てると渋みや苦みになります。
旨みを味わいたい緑茶などは、渋みを避けるためにも芽を多めで製茶した方が有利でしょう。
さて、雲南省の品種である雲南大葉種は、日本や中国の緑茶産地で作られている品種よりも、ポリフェノールが豊富であるという特徴があります。
渋みや苦みが出やすく、緑茶向きの品種ではありません。
が、発酵させるとなると話は別です。
ポリフェノールは、香りや色素、その他の健康に有益な新しい物質に変化します。
発酵を前提にすると、ポリフェノールが多い方が味わいの豊かさに繋がるのです。
プーアル茶の持つ、ふくよかな香りや厚みのある味わいは、ポリフェノールの多い雲南の品種だからこその芸当なわけです。
ところが、宮廷プーアル茶は、雲南の品種といえども芽で作るので、ポリフェノール由来の香り成分などの絶対量は、オーソドックスなプーアル茶に比べると、少なくなります。
その代わり、旨み成分が多いので、まろやかな口当たりになります。
でも、香りや味わいの厚みに欠けるのは致し方ないところ。
宮廷プーアル茶で、「うーん、口当たりはいいけど、物足りない?」と思うのは、そういう成分が少ないからです。
#もちろん、茶葉そのものの品質の差もありますが。
<プーアル茶の等級とは何か?>
もう1つの疑問。
プーアル茶の等級とは一体なんでしょうか?
中国のメジャーなお茶に関しては、政府が「標準(基準)」を定めています。
お茶ごとに生産地域や製法、お茶の特徴などを明確に記述するとともに、等級なども明確に示しています。
プーアル茶は2008年から、国が制定した「国家標準」というもので定義されています。




こちらは特級含めて10段階になっています。
製品茶の分類の基準も、原料茶と同じく2つです。外観と内質。
見るべき項目は同じですが、発酵しているので、色や味わいなどの基準は、当然異なります。
外観の項目にある、大きさは原料茶の段階でほぼ決まってしまうものです。
色、均一度に関しては、発酵などの製造過程がきちんとしていれば、普通は問題の無いものです。
続いて内質。
香り、味、水色、茶殻とあるのですが、これもそんなに細かい設定ではありません。
特級のところだけを抜き出してみると、
香り:古びた香りが濃く強いこと
味:濃いめで厚みがあり甘くて爽やかさがあること
水色:紅くて艶があり明るさがあること
茶殻:紅褐色で柔らかいこと
となります。
いずれも原料茶の状態がきちんとしていて、正常な管理をすれば作れる内容を規定しているだけです。
プーアル茶の等級ってのは、製茶工程で失敗がなければ、基本的には葉の大きさで大体決まっちゃうんですね。
「特級」なんて言葉を聞くと、品評会で受賞するような特別なお茶・・・を期待しちゃうかもしれませんが、残念ながら、そういうものではありません。
ベースにあるのは、「葉の大きさが小さい」というだけです。
<結論>
今回の「最高等級茶葉」が特級のことを指しているのであれば、「芽を使ったお茶を主体で使っていますよ」という表明をしているだけです。
「それって、宮廷プーアルなら当然では無いですか?」という気がしますね(^^;)
そこを屋上屋を架すように、敢えて書いてきているというのは、マーケティングの常道ではあるのでしょうけど、違和感がありますね。
芽のお茶は、茶摘みのコストがあるので、確かに一般的な茶葉よりは、やや高めです。
といっても、お茶は収穫の時期や産地、作り方によってかなり価格差があるので、ペットボトルのコストに見合うお茶は探せばあるでしょう。
キャッチコピーを翻訳すれば、「一般的な茶葉の中でも、芽を選んで使ってます」というのが結論なんじゃないかと思います。
にほんブログ村
よく特徴は出ているんですけどね。
茶藝師が国家職業資格では無くなった件→復… 2017.01.19
日本での中国茶の歴史を振り返る-(9)… 2016.01.11
日本での中国茶の歴史を振り返る-(8)… 2016.01.09